「勉強だけの高校生活でいいのか」“島留学”で廃校寸前の離島の高校が人気校に 半数の生徒が県外出身 卒業生も島に戻り貢献「島の人の力になりたい」【news23】
2025年5月2日(金)14時41分 TBS NEWS DIG
日本海に浮かぶ島根県・隠岐諸島の一つ、中ノ島。2300人ほどが暮らしていて、島にある県立隠岐島前高校は、生徒の減少によって、一時、廃校寸前でした。ただ、今は県外からの志願者が増え、人気の高校になっているのです。そのわけは…。
高校生の“島留学”「島親」をマッチング?
ここは日本海に浮かぶ島根県・隠岐諸島の1つ、中ノ島。2300人ほどが暮らしていて、島にある県立隠岐島前高校は、生徒の減少によって一時廃校寸前でした。
ただ、今は県外からの志願者が増え、人気の高校になっているのです。その理由は…
生徒
「おはようございます!」
「島留学」という制度です。
高校生が親元を離れ、寮に住みながら離島の学校に通う制度で、これまでに400人ほどの生徒を受け入れてきました。
東京出身の高校3年生、岩間亮さん。授業の特徴について、こう話します。
岩間亮さん(17)
「毎週木曜日、1限から6限ぜんぶ使って、自分のやりたいプロジェクトが出来るのが大きい」
この日は、学校の外で、島に住む人からボートづくりを教わっています。
岩間さん
「すごく自然豊かなんですけど、実は小学生たちがあんまり外で遊ぶことがなくて。授業で外遊びのイベントみたいなものを開催すれば、少しでも問題・課題が解決されるかなと」
島の課題を自ら探し、島の人と協力しながら解決していく。島留学の魅力の1つです。
岩間さん
「元々ぼくの住んでいた地域は、東京の中でも学力や偏差値を重視するような地域だったけど、ずっと疑問に感じていて。もし東京の学校に進学していたら、こういった経験、一緒に作るという経験は得られなかったと思う」
「勉強だけの高校生活でいいのか?」「海や自然あふれる環境で学びたい」。こうした動機の子どもたちが集まっているといいます。
授業が終わり、近くの島と島を結ぶ巡回船に乗る生徒たち。その1人、尾野円珂さん。この春に入学したばかりで、松江市から島に来ました。
尾野円珂さん(15)
「こんにちは」
訪れたのは「島親」と呼ばれる人のもとです。島の住民が親に代わって生徒の生活をサポートする制度。
尾野さん
「鳥居くぐるんですか?」
島親
「うん、そう」
尾野さんの島親は神社の宮司です。会うのはこの日が2回目。
島親
「ここうちの土地なんだよ」
尾野さん
「ええ!すごい!」
島親
「子供たちが夏になったらこの辺で泳ぐんだよ」
尾野さん
「いいな、泳ぎたい」
Q.現時点の印象って
島親
「うーん…なんか賢そうな気がする」
尾野さん
「あははは」
誰が島親になるかは、生徒が入学前に学校と面談して決まります。
尾野さん
「(来る前に)マッチングの面談をZoomでやって。私は伝統文化に興味があるので、隠岐独自の隠岐島前神楽とか、神社のことに興味がありますと言ったらマッチングしました。島のことをたくさん教えてほしいです」
「島留学」について、島の人たちはどう感じているのでしょうか。
島民の男性
「若い人たちが1人でも2人でも増えれば嬉しい。自分が若くなるじゃない」
島民の女性
「高校のときに家に招いてご飯食べていたりとか、仲良くしてくれた子が大人になって帰ってきて、成長しているの見るとすごく嬉しい」
卒業生が島に…「お世話になった人たちが困っているなら」
16年前から始まった「島留学」ですが、最近は再び島に戻る卒業生も。
島のホテルで料理人をしている坂下鼓太朗(24)さんもその1人です。去年、島に戻ってきましたが、その理由は…
坂下鼓太朗さん(24)
「農家さんは、もう高齢化と担い手不足で結構な数の人が辞めてしまって。生産者も消費者も自分自身も、誰もが幸せになれるような環境づくりがこの地域だったらできるので、それを理由に戻ってきました」
「島の生産者の力になりたい」。島の食材を使った料理を提供するだけでなく、食材の生産者とお客さんをつなげる取り組みもしています。
坂下さん
「(食材は)この人がこうやって作ってるんだよというストーリーを伝えながら料理にしていけるので、新たな生産者とお客様の繋がりが生まれたり。僕らがお世話になった人たちが困っているなら、その人たちにとって新たなアイデアとか、僕が出来るようなことを見つけていきたい」
高校生の「サポート体制」に課題も
小川彩佳キャスター:
こうして戻ってくる卒業生の存在というのは島にとって計り知れない活力になりますよね。
藤森祥平キャスター:
そうですね。地域の繋がりだけじゃなくて時間の繋がりもありますね。
小川キャスター:
この“島留学”は現在「地域みらい留学」という制度で、全国およそ170の高校に広がっています。
藤森キャスター:
ただ、一方で学校以外での生活について教職員と親だけで面倒を見るのは負担があるということで、今後サポート体制を拡充しなければ、という課題も担当者の方がお話されていました。