「ストーカー被害」を訴えたのに、事情聴取は行方不明になった後…浮かび上がる捜査の問題点

2025年5月5日(月)11時0分 読売新聞

白井秀征容疑者

 川崎市川崎区の自宅に元交際相手の岡崎彩咲陽あさひさん(20)の遺体を遺棄したとして、職業不詳の白井秀征ひでゆき容疑者(27)が死体遺棄容疑で逮捕された事件で、岡崎さんは行方不明になる直前の昨年12月、ストーカー被害を神奈川県警川崎臨港署に訴えていた。しかし、同署が白井容疑者から事情を聞いたのは、行方不明になった後だった。岡崎さんの安全確保や捜査の問題点が浮かび上がってきた。

白井容疑者、逮捕直後は「間違いありません」

 発表では、白井容疑者は昨年12月20日頃〜今年4月30日、川崎区大師駅前の自宅に岡崎さんの遺体を放置した疑い。逮捕直後は「間違いありません」と容疑を認めていたが、その後は事件について話さなくなっているという。

 県警によると、岡崎さんは昨年6月以降、白井容疑者による待ち伏せなどを同署に相談。県警は白井容疑者に口頭で注意していた。昨年11月、復縁を確認し、対応を終了した。

 しかし、交際関係解消後の昨年12月9〜20日、岡崎さんは同署に計9回通報していた。「家の周りをうろつかれた」「パトロールしてほしい」。緊急性の高さをうかがわせる内容もあったが、同署は白井容疑者から事情を聞かなかった。県警は「岡崎さんに事実確認のため来署を促したが、断られた。警察に対応を望んでいないと判断した」などと説明する。

相次いだ通報にも危機感薄く

 ストーカー被害者を支援するNPO法人「ヒューマニティ」(東京)の小早川明子理事は「警察官が被害者の元に出向くなど、積極的なコミュニケーションが取れたはず」と指摘。「11月まで対応していたのに、12月の短期間に相次いだ通報をストーカー事案と認識していなかったのなら、危機感の有無を評価する以前の問題だ」と非難する。

 12月10日の通報は、「(白井容疑者が)自転車を返してくれない」という内容だった。同16日には自転車盗難の被害届を受理。1月24日、白井容疑者宅近くで自転車が見つかり、同署は周辺の防犯カメラを確認するなどしたが、白井容疑者に話を聞くことはなかった。

割られていた窓ガラス「元交際相手かも」

 岡崎さんは昨年12月20日朝、身を寄せていた祖母宅からいなくなり、祖母は同22日、「孫が帰ってこない。窓ガラスが割られていて、元交際相手が連れ去るために割ったのかも」と110番した。同署はガラス片が室内よりも屋外に多く散乱していたことから、室内から割った可能性があると祖母に説明。写真を撮影したが、指紋は取らなかった。

 この対応について県警は「祖母が『帰ってこないことが心配。元交際相手の家かも』と話したため、安全確認を優先し、白井容疑者の元に向かった」と説明する。同署が祖母の要望を受けて被害届を受理し指紋を採取したのは1月7日だった。

行方不明後に7回事情聞く

 岡崎さんが行方不明になった後、同署は7回、白井容疑者から事情を聞いた。捜査関係者によると、「知らない」との趣旨の話をしていた白井容疑者は3月、「12月20日午前6時頃、(岡崎さんの)勤務場所の近くに行ったが会えなかった」と話した。捜査は進展せず、4月に入って白井容疑者の渡米が判明する。

 昨年12月から4月下旬まで、捜査の主体は防犯対策や家出人などに対応する生活安全部門だった。犯罪捜査を行う県警捜査1課に事件の連絡が入ったのは、民家から遺体の入ったバッグが見つかった4月30日。警察幹部は「危険性を過小評価したと批判されても仕方がない」と話している。

「最期は痛くなかったかな」

 岡崎さんの遺体が見つかった白井容疑者の自宅周辺では4日、朝から多くの親族や友人らが花や菓子などを手に訪れた。親族の男性(51)は「(岡崎さんは)着物を準備して、二十歳を祝うつどいに出るのを楽しみにしていた。最期は痛くなかったかなと思うと、つらくて怒りしかない」と語った。

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