店舗外観に「ドンキイエロー」が使えない、それでも目立ちたい…ドン・キホーテが景観に厳しい京都で見せた“奇手”

2025年5月9日(金)7時10分 文春オンライン

〈 巨大な顔が「ウーッ」とうなりながら、鼻から煙が…世にも奇妙な“海底神殿ドンキ”が生まれた意外なきっかけ 〉から続く


「ドンキ」の愛称で親しまれ、今や「国民的ディスカウントストア」とも呼べるドン・キホーテ。街中で目を引くド派手な外観が特徴だが、エリアによっては色味などに制限があることも。例えば景観に厳しい京都はその一つだ。それでもインパクトを残すため、試行錯誤した結果どんな店舗になったのか。『 ドンキ式デザイン思考 セオリー「ド」外視の人を引き寄せる仕掛け 』(二宮仁美著、イースト・プレス)から一部抜粋し、お届けする。(全3回の3回目/ 1回目を読む / 2回目を読む )



外観も内装もド派手なドンキだが、時にはその派手さに制限がかかる場合もある(『ドンキ式デザイン思考 セオリー「ド」外視の人を引き寄せる仕掛け』より転載)


◆◆◆


「景観を害してはダメ」というお題に、ドンキはどう応えたのか


 店舗をデザインするたびに、さまざまな制約・ハードルに直面します。その一つが「看板のサイズ・数」です。看板などの屋外広告物を建物に設置する場合には、自治体に「屋外広告物許可申請」の手続きをする必要があるのですが、その際に、看板の大きさや数に規制が設けられています。「景観を害するから、看板はこのサイズを超えたらダメ」「二つ以上の看板は設置できない」といった具合です。


 さらに、観光地や住宅街などの場合には、景観を維持するために「看板の明度や彩度」が限定されていることがしばしばあります。例えば「この色は使わないでください」「彩度は4以下に抑えてください」などと要求されるケースがあるのです。


 看板のサイズにせよ、色にせよ、外観デザインで存在感を発揮したいドンキにとっては、なかなか高いハードルです。こんな時、私は、デザイナーならではの発想とアイデアで、このハードルを越えてきました。


定番の「黄色×黒色」を使えなかった京都のドンキ


 2020年6月、京都を代表する繁華街である四条河原町に新規オープンした「ドン・キホーテ四条河原町店」。この店舗では、京都という土地柄ゆえに、黄色を使える面積が非常に限られていました。


 ドンキのロゴの定番色で、「ドンキイエロー」と社内で呼んでいる黄色の使用が許可されたのは、メインのファサード看板のみだったのです。ビルの上方には数カ所、「驚安の殿堂 ドン・キホーテ」のロゴを配置していますが、やむを得ず、彩度を抑えた淡いクリーム色にとどめることになりました。


 このように「色の制約」がある以上、いつものように「黄色×黒でド派手に!」というわけにはいきません。そこで私は、建物に、ほかの店舗では見られない独自の造形を加えることで、目立たせることができないか? と設計チームとアイデア出しをしていました。そこで、一人の設計士が一枚の写真を見せてくれました。それは竹かごが暗闇の中で内側からボウっと光っている美しい写真でした。


 京都には、竹細工や竹工芸の伝統があることを知り、竹かごのような、昼は網目がきれいに見えて、夜は間接的に光る、そんな京都ならではのファサードを作ろう!  ということになったのです。


 京都の伝統文化が感じられる意匠を取り入れることで、京都の街並みに溶け込みつつ、周囲の建物にはない存在感を出すことに成功しました。


 この店舗の場合には、建物がアーケード(屋根がある商店街)に面しているのも、乗り越えなければならないハードルでした。アーケードの下の通路では、先述のファサードもドンキの看板もまったく見えません。そのため、お店がドンキだとわかってもらえない可能性があったのです。


 アーケードの下はどうしても暗くなってしまうため、買い物をするお客さまのテンションを下げてしまう懸念もありました。そのため、私はアーケード下の入り口に、白い行灯を並べて明るくし、ドンキらしいお祭り気分を演出することにしました。このアイデアの結果、薄暗いアーケードの中でも、この店舗だけは夜も煌々と光っていたので、お客さまがたくさん来てくださるようになりました。


「ドンキのロゴ」を使えなかった山科店


「MEGAドン・キホーテ山科店」も、試行錯誤の結果、制約突破を果たした店舗です。四条河原町店と同じく、自治体の条例がとても厳しいため、ドンキのロゴをそのまま設置することができませんでした。


 そこで私は「京都に振り切ったデザインで勝負しよう!」と頭を切り替えました。「歌舞伎座」をテーマにした外観デザインにすることにしたのです。


“ミニドンペン”と“隠しドンペン”を配置


 壁は思い切って白色にし、目立たせました。「歌舞伎座」ということで和の佇まいにしたかったのですが、彩度の高い赤は使用できず、落ち着いたえんじ色を取り入れました。


 最後に、条件ギリギリのサイズの“ミニドンペン”を正面に配置。「歌舞伎座」というインパクトで勝負しつつ、京都の街並みにも調和させる——このバランスを取りながら、ドンキとしての存在感も出した事例です。 ちなみに今回はミニドンペンしか設置できなかったため、外装に“隠しドンペン”を仕込みました。どこにいるか、あなたはわかりますか?


 ちょっとした工夫や遊び心で「目の前の課題をどう越えるか」を考えるのは、とてもエキサイティングな瞬間です。


(二宮 仁美/Webオリジナル(外部転載))

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