立川の小学校に男2人侵入、教員殴る...浮き彫りとなった防犯の難しさ 不審者対策や訓練を重ねていても
2025年5月12日(月)15時23分 J-CASTニュース
東京都の立川市立第三小学校で2025年5月8日午前11時ごろ、男性2人が教員ら5人を殴ったとして、現行犯逮捕された。男性2人は、児童32人と教員2人がいた教室に侵入。教員は児童を避難させつつ男性を取り押さえようとしたが、暴行を受けたという。
過去には、小学校への不審者の侵入による重大な事件が起きている。
てるくはのる、池田小事件を受けてのマニュアル
小学校への侵入者が殺傷に及んだ初めての事例として思い浮かぶのが、1999年に京都市立日野小学校で、侵入者が放課後に遊んでいた児童を殺害した、いわゆる「てるくはのる事件」である。
また、2001年には大阪府池田市の大阪教育大学附属池田小学校に男性が侵入し、児童8人を殺害、教職員15人に重軽傷を負わせた痛ましい事件も起きている。
これ以降、文部科学省でも学校施設における防犯対策を強化しており、2002年には「学校への不審者侵入時の危機管理マニュアル」を作成。見直しなどの検討を重ねながら、現在に受け継がれている。
ある程度の対策は取れていたが......
文科省の「学校の『危機管理マニュアル』等の評価・見直しガイドライン」では、不審者侵入を防止するため、
(1)校門
(2)校門から校舎入口まで
(3)校舎の入口
の3段階のチェックを強化するよう呼びかけている。
その方策として、
(1)校門の施錠、利用箇所・利用時間の指定、フェンス等の設置
(2)通行場所の指定、死角の排除
(3)入口の指定・施錠、受付管理
といったものが挙げられている。
今回の事件では、立川市教育委員会によると、通常児童が出入りする正門の門扉は、かんぬきで固定されていたものの、施錠はされていなかった。
逮捕された男性2人は、校舎と体育館をつなぐ通路から中に入り、2年生の教室まで侵入した。さらには、警察に通報していた教員を見て、鍵の閉まった職員室のガラスを割って襲いかかった。
だが、今回事件が起きた第三小学校では、不審者が入ってきた際の訓練が日常的に行われていたという。
実際に事件が発生した際も、鍵を閉めて扉側に机を移動させるなど、訓練どおりの行動が取られていた。
学校施設は開いている入口が生じてしまう
ある程度の対策は取られていても、今回のようなケースが起こってしまったのは、学校組織ゆえの限界があるからだろう。
小学校には、時間外に遅刻・早退する児童や給食、教材の配送業者などが出入りするため、人員的にも校内に入る人の時間を一律に制限することは難しい。
警備員や自動開錠装置などの設置にも、金銭的なハードルがある。
こうして校門から入ると、学校などの大規模施設では非常口や避難扉の施錠が禁止されている。特に学校施設は災害時の避難所としての役割もあるため、開放的な設計になっており、どこかに開いている入口が生じてしまう。
加えて今回の場合、男性2人は児童の母親に連れられて校内に入ってきたことも、セキュリティーの抜け穴となった。
立川市の飯田芳男教育長は会見で「想定を超える部分があった。今後の対応を考えたい」と述べ、教育委員会では児童や職員への心のケアを図るとしている。
今後、児童が安全に教育を受けられるための対策が急がれる。