統一教会、解散命令でも日本人信者1200人参加の「合同結婚式」強行の内幕《韓鶴子総裁は「強く大胆に進め」と…》
2025年5月21日(水)12時0分 文春オンライン
安倍元首相が凶弾に倒れて3年弱。統一教会に解散命令が出た。改革を謳うものの、合同結婚式や献金要求、霊感商法など、その実態は、驚くほど変わっていない。統一教会を取材し続ける記者が教団の今をレポートする。
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裁判所は『無反省』と判断
「これは解散命令を受けて、ある古参信徒から送られてきたものです」
と言って、統一教会(現世界平和統一家庭連合)元広報部長の大江益夫氏は、一通のLINEを見せてくれた。
〈裁判所に「改善の見込みなし=無反省」と判断されたという事だと思います。反省、改善、改革に要する時間がタップリあったハズなのに。目に見える形での「反省とお詫び、そして大改革」が為せなかった。田中(富広)会長以下、誰一人として辞めていない。これじゃあ、無反省と断じられても不思議じゃない〉

昨年、『旧統一教会 大江益夫・元広報部長懺悔録』(著者は樋田毅氏)を出版した大江氏は、現在の教団の在り方を厳しく批判した。
「多くの信徒が同じように、『行政や司法と対決しても勝てるはずないのだから、早く謝罪して出直すべきだった』と訴えています。『基本的な人権の中で、信教の自由が最優先だ』という主張は独善的で、世の中に通用しませんよ」
山上被告は、大阪拘置所に勾留されたまま
東京地裁は3月25日、統一教会に対して解散を命令した。「全国霊感商法対策弁護士連絡会」が1987(昭和62)年に結成された直後から参加し、長く東京の事務局長を務めて来た渡辺博弁護士が「感無量です」と振り返る。
「20年前から文化庁宗務課へ何度も足を運んで、統一教会の解散を求めてきました。その都度『刑事事件の確定判決を持って来て』と門前払いにされた。民事の判決だけで解散に至ったいま、この間に拡大した被害を考えると、残念でなりません」
そもそもこの解散命令のトリガーとなったのは、山上徹也被告(44)による安倍晋三元首相殺害事件だった。当の山上被告は、大阪拘置所に勾留されたまま。
「普通は1年弱で終わる公判前整理手続きに、2年以上かかっています。初公判は今年の秋以降になる見通しです」(司法担当記者)
山上被告が〈宗教学者と複数回にわたり面会〉
先日、朝日新聞は山上被告が〈宗教学者と複数回にわたり面会〉と報じた。
「山上被告の母親が統一教会への多額の献金によって自己破産した背景を争点にして、情状酌量に持ち込みたい弁護側の意図によるものです。検察は、宗教学者との面会には反対しています。当の山上被告ですが、母親の面会希望をいまだに拒絶しているそうです」(同前)
解散命令の審理は、教団が抗告すれば東京高裁へ移る。結論は年内にも出ると見られ、命令が高裁でも支持された場合、即座に清算の手続きが始まる。
「解散命令の決定書によって、統一教会の2021年3月末の総資産は約1136億円であり、現預金が820億円を占めていることが明らかになりました」(渡辺弁護士)
続けて渡辺弁護士は、「被害者救済のために教団が現在持っている財産を保全する仕組みが必要」と強く訴える。
日本政府と戦うように檄を飛ばす
日本の司法が解散命令を出した25日、韓国では、統一教会の韓鶴子総裁が側近を集めて会議を開いている。韓総裁はその場で、
「強く大胆に進め」
と指示を飛ばした。
「韓総裁は、解散命令は出ないと楽観視していました。実際に命令が出て、大きく失望したものの、さらに日本政府と戦うように檄を飛ばしたのです」(統一教会関係者)
トランプ側近もイベントに
では、どのように戦うのか。米政治に詳しい別の統一教会関係者が語る。
「米国の共和党の有力者を動員して、日本政府にもっと圧力をかけろということでしょう」
実際、バンス米副大統領は2月、統一教会の関連団体が首都ワシントンで開いた「国際宗教自由サミット」で講演し、「宗教の自由擁護はトランプ政権の重要課題だ」と述べた。
さらにトランプ大統領が新設を決めた信仰局の局長に就任したのは、福音派のポーラ・ホワイト牧師。統一教会系イベントに出席するなど、シンパであることを隠さない人物だ。
統一教会は、このような大物を教団のイベントに招き、利用して来た。
「4月10日から13日にソウルの蚕室ロッテホテルワールドで『ワールドサミット2025』が行われます。1期目の大統領任期を終えたトランプ氏や安倍元首相がビデオメッセージを送ったのが、3年前のこのイベントでした」(前出・別の統一教会関係者)
VIP名簿にある名前
今回入手したVIP名簿には、常連となったポンペオ元米国務長官やギングリッチ元米下院議長のほか、前出のホワイト牧師の名前もある。
「日本の政治家やトランプ大統領の名前はありませんが、メッセージが寄せられるのかが注目されます。今回のサミットでは『信教の自由』の名のもとに、法人解散を命じた日本への批判が相次ぐことは間違いない」(日本の統一教会関係者)
国際合同結婚式に、日本人信者1200人
統一教会はワールドサミットだけでなく、同時期にいくつものイベントを行う。
「12日には、孝情天宙祝福式(国際合同結婚式)が予定されています。日本人信者は1200人が参加する予定となっています」(同前)
渡韓する信者は、多額の現金を持参する。かつては送金にみずほ銀行を通していたが停止されたため、献金手段は現金の持参が中心。税関で申告が必要な100万円よりも少ない額をそれぞれの信者が持ち出している。
「今回、献金に使われる封筒には、所属教会や氏名、金額を書き込むほかQRコードまで付いていて、記録が残せるようになっています」(同前)
しかし、このイベントウィークの最大の祭事は別にある。
〈 統一教会が生み出した“新霊感商法”のカラクリ《日本人信者から韓国に送金される「献金ノルマ」は…》 〉へ続く
(石井 謙一郎,「週刊文春」編集部/週刊文春 2025年4月10日号)