国立天文台「ご寄付のお願い」投稿にSNS騒然 実は「定例」、その経緯を聞いた
2025年5月21日(水)10時30分 J-CASTニュース
2025年5月中旬、日本の天文学研究の拠点となる研究機関・国立天文台(NAOJ)の公式アカウントが「国立天文台基金」への寄付をXで呼びかけると、1万1000件以上のリポストを集めるなどSNS上で大きな注目を集めた。
この投稿に寄せられたのは、「国立」と冠する機関が寄付を募ることに驚く声などだ。研究機関への予算配分に対する批判的な声もみられた。さらに、東京・台東区にある国立科学博物館が23年にクラウドファンディングを行ったことを思い出す声もあった。
今回X上で寄付を募ったのはなぜか。国立天文台は25年5月20日、「基金についてのXでの投稿は、広くご支援をいただくために、月に1回程度、定期的に寄付への呼びかけを投稿している定例のものです」とJ-CASTニュースの取材に答えた。
「そのご支援が天文学の次の一歩を支えます」
話題になったのは、国立天文台が5月14日に投稿した内容。「ご寄付のお願い」と題した文章で、「これからも、そのご支援が天文学の次の一歩を支えます」と記し、「国立天文台基金」への寄付を募るものだった。この基金への寄付金は、人材育成や先端研究推進のための研究投資に使われると説明していた。
この投稿がSNS上で拡散。「ぜひ税金を使っていただきたい」「こういうところに予算が行き届かないんだなぁ」「国は何をやっているのでしょう」「国からの補助などがないということ?」といった反応が相次いで寄せられた。
国立天文台の公式サイトによれば、04年4月1日から法人化。それまで文科省の管轄だったが、大学共同利用機関法人の自然科学研究機構を構成する研究所の1つになった。大学共同利用機関とは、特定の高等教育機関には属さない独立した研究機関のことだ。
J-CASTニュースの取材に応じた天文台によれば、今回の寄付の呼びかけは定例のものだった。実際に検索してみると、これまで24年9月から月に1回程度寄付を呼びかけていたことが分かる。
天文台が呼びかけた「国立天文台基金」とは何か。天文台によると、自然科学研究機構が20年に自然科学研究機構基金を創設し、その一環として23年8月に国立天文台基金を設立した。機構の財政基盤の強化を図り、機構の研究活動や社会貢献活動に資することを目的としているという。
この基金に寄付すると、具体的には、将来的に国内外で研究リーダーとして活躍する人材の育成を目的とした国立天文台若手研究者奨励賞の実施や、国内外の小中学校で天文学や宇宙の授業を行い、天文学やそれを支える技術の魅力を伝える「ふれあい天文学」事業の実施につながるという。
「皆様からのお声に応えていきたい」
SNS上では国の予算配分に関する批判もある。では、文科省の運営費交付金はどのように配分されているのか。国立天文台によれば、文科省から自然科学研究機構に運営費交付金が配分され、この機構の中で同天文台へ予算配分されるという。
同天文台の公式サイト上では、25年度の予算額が約123億円だと説明されている。この予算には、運営費交付金のほか、施設整備費補助金や自己収入の見込みが含まれていると説明する。
ここ10年ほど、予算は120億円台を推移している。同天文台の説明や国立天文台年次報告によると、24〜17年度の予算額は、順に約128億、約128億円、約123億円、約134億円、約129億円、約156億円、128億円、122億円だ。
今回X上で話題になったことに対し、国立天文台は次のように受け止めている。
「多くの方が国立天文台を応援してくださっていることを改めて認識しました。国立天文台の理念(私たちが提供するもの)として研究成果の社会への普及・還元と、未来世代への夢の伝承とあります。多様なリソースを活用してこれからも研究、技術開発で成果を出し、皆様からのお声に応えていきたいと思います」