アルマ望遠鏡、大規模観測プログラム「exoALMA」で大きな成果を発表

2025年5月3日(土)7時1分 マイナビニュース


国立天文台は4月30日、アルマ望遠鏡を用いて、若い星の周囲で形成中の惑星を探し出す大規模観測プログラム「exoALMA」を開始し、同プログラムでは観測手法や画像解析手法の改良により、若い星を取り巻く原始惑星系円盤をこれまでにないほど精緻に捉えることに成功したと発表した。
同成果は、国立天文台 アルマプロジェクトの深川美里教授(共同代表)、総合研究大学院大学の吉田有宏大学院生ら、国内外の40名以上の研究者が参加した国際共同研究チームによるもの。詳細は、17編の論文にまとめられてすべてが米天体物理学専門誌「The Astrophysical Journal」の特集号に掲載され、今後もさらに複数の論文が発表される予定だとしている。
従来の惑星探索は、若い惑星からの光を直接捉える方法で行われてきた。それに対し、惑星系の形成メカニズムの解明を目指すexoALMAでは、惑星が周囲に及ぼす影響に着目。例えるなら、池の中の魚を直接見るのではなく、水面に広がる波紋を手がかりに魚の存在を探るのに似ているという。そしてこの新たな手法により、従来よりもはるかに若い惑星を見つけられる可能性が見出されている。
exoALMAの特徴としてはまず、高い解像度と高い感度を持つ点が挙げられるといい、典型的な空間分解能は14天文単位(100ミリ秒角、太陽系では太陽からの距離が土星と天王星の間ぐらい)、速度分解能は秒速26mだとする。この高い解像度と速度分解能により、ガス放射観測から惑星形成に関わる微細な構造と運動を検出することが可能となった。
次に、複数の分子トレーサーが利用されている点だ。炭素の2種類の安定同位体を含む一酸化炭素の「12CO」と「13CO」、一硫化炭素(CS)など、複数の分子からの放射が同時に観測された。これにより、円盤内の異なる高さや物理条件を立体的に探ることができるようになった。
ただその一方で、高精度な画像を得る上で、データ処理の技術的課題にも直面したとのこと。そこで、異なる時期に取得された観測データを精密に整列させ、ノイズや歪みを除去するための工夫が重ねられた。データを丁寧に統合して慎重に整えることで、信頼性の高い画像が得られ、その結果、円盤内の構造の検出精度が向上。加えて、新たな数値・解析手法も開発され、同時にベンチマークも実施することにより、観測データからの情報抽出の精度向上につながったとした。また、シミュレーションを通じた物理的予測の検証も可能になったとする。
今回の観測では、原始惑星系円盤を持つ15個の若い星がターゲットとされ、それらの円盤中のガスの運動が詳細に調査された。また一部の天体に対する観測では、塵の円盤にできた溝やリング、惑星の重力によって生じたガスの渦巻き運動、そして惑星の存在を示唆する円盤内の物理的な変化など、若い惑星の手がかりを捉えることにも挑戦。その結果、惑星系形成円盤の密度、温度、速度構造をかつてない精度でマッピングすることに成功したという。
今回の初期成果は、惑星系の誕生に関して未解明だった複数の点に光を当てるものとなった。その1つ目は、原始惑星系円盤が非常に動的で、ガスにおいても塵に匹敵するほど複雑な構造を持つことが、観測によって明確に示された点だ。さらに、円盤の回転速度プロファイルの抽出(精度は秒速10m程度)により、ケプラー回転からの微細なずれが捉えられ、円盤内の局所的な圧力変化が大きな塵をリング状に集積させる駆動力となっていることが示唆された。加えて、銀河の回転曲線からダークマターの質量を推定するのと同様に、円盤そのものの重力の影響を用いる新たな手法で、惑星の材料となるガスの質量が推定された。そして、伴星や惑星との力学的相互作用、複雑な不安定性の兆候を捉えることで、太陽系に似たシステムの初期形成段階における物理機構が解明されたとする。
今回、ガスと塵の同時解析により、原始惑星系円盤の中で実際に働いている物理プロセスが浮かび上がり、それが観測で頻繁に検出される構造の起源である可能性が示唆された。
今後、exoALMAプログラムは、惑星とその誕生環境との相互作用に対する理解を飛躍的に深めていくことが期待されると同時に、円盤に見られる複雑な二次元的運動パターンから浮かび上がった、強く非対称な天体の性質の解明という困難な課題にも挑むことが期待されるとした。なお初期成果のすべての観測データと画像は今後一般に公開される予定であり、さらなる科学的発見に資することも期待されるとしている。

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