世界の平均気温2度上昇で…国内の「土砂災害警戒」エリアは1・6倍に拡大

2025年5月26日(月)14時45分 読売新聞

土石流とみられる土砂災害に民家が巻き込まれ、捜索が行われる現場(2023年7月、福岡県久留米市田主丸町で、読売機から)

 世界の平均気温が産業革命前から2度上昇すると、国内で土砂災害の避難指示発表の目安となる「土砂災害警戒情報」の対象エリアが、気候変動の影響が顕著でなかった時期の1・6倍に拡大するとのシミュレーション結果を京都大防災研究所のチームがまとめた。(松田俊輔)

 ◆土砂災害警戒情報=対象となる市町村で土砂災害発生の危険度が高まった際、気象庁と都道府県が共同で発表し、自治体による避難指示発令や住民による自主避難の判断の参考にしてもらう。5段階ある防災情報のうち2番目に危険な「レベル4」に相当。地域ごとに発表基準となる雨量と土壌中の水分量が定められている。

 長野市で開催される砂防学会で28日、発表する。特に中国地方や紀伊半島、九州北部など、これまでも豪雨災害が相次いだ地域で広がっており、チームは対策強化の重要性を呼びかけている。

 チームは地球全体の気象を再現する最新モデルを使って、産業革命前(1850〜1900年の平均)より気温が上昇した場合の国内各地の降雨量などを推定。地域ごとに設定されている土砂災害警戒情報の発表基準を上回ったエリアの面積を算出した。

 気温上昇の進行が緩やかだった1950〜2010年の降雨量などを基に算出すると、土砂災害警戒情報の対象エリアは全国で年平均2万2800平方キロ・メートルだったのに対し、2度上昇では3万6600平方キロ・メートルに増加。1日未満の短時間豪雨と1週間を超える長雨の影響を大きく受け、地域ごとの差も目立った。

 国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」によると、産業革命前からの気温の上昇幅は11〜20年ですでに1・09度となっており、チームの呉映昕・特定准教授(水工学)は「地球温暖化の進行が抑えられなければ、土砂災害のリスクはますます高まり、警戒を強める必要がある」としている。

東京農工大の石川芳治名誉教授(砂防学)の話「土砂災害の発生が懸念される地域は多いが、ハード対策の財源は限られている。各自治体にはそれぞれのリスクを調査し、住民に伝えるなどソフト面の取り組みも進めてほしい」

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