《2019年には元特秘が東京水道サービス社長に…》“基本料金の無償化”は、小池百合子都知事の「都議選の争点つぶし」と批判のワケ

2025年5月27日(火)7時10分 文春オンライン

​​「新聞読み比べ」は複数紙を比べることですが、同じ新聞だけでもできることがある。今回はそんな楽しいご報告です。


他会派は「都議選の争点つぶし」と批判


 東京都は5月20日、今年夏の4カ月間、一般家庭向けの水道の基本料金を無償化すると発表した。物価高が続く中で家計を助け、浮いた水道代で猛暑時のエアコン利用を促す狙いだという。小池百合子都知事は記者会見で「暮らしへの不安から、エアコンの利用控えが起こるのではないか。いわゆる熱中症で亡くなる方は大体屋内。この夏に限った措置として実施する」。



小池百合子都知事 ©時事通信社


 発表までの流れをおさらいすると、前日の19日に自民党、都民ファーストの会、公明党の「知事与党」が相次いで水道基本料金の無償化を要望していた。記者から小池知事に対して「都議選(6月22日投開票)に向けて3党を応援する意図か」との質問も出たほどだった。東京新聞が伝えている。


 さらに前日の記事を読むと興味深い。他会派は「都議選の争点つぶし」と批判しているという。どういうことか? 次に答えがあった。


《共産党の和泉尚美幹事長は「既に物価高対策として申し入れており、都政の重要課題に引き上げられた」と受け止めた。》(東京新聞デジタル版・5月19日)


 つまり水道基本料金無償化はもともと共産党が提案していたが、ここにきて自民党、都民ファーストの会、公明党も提案したのだ。「都議選の争点つぶし」と言われる理由である。「知事与党」3党は自分たちの手柄として無償化をアピールできるのだ。


 なるほどなぁ、こういう話を聞くと選挙(都議選)が近づいてきたなぁと思う。知事与党3党も必死なのだろう。そう思いながら東京新聞の5月19日の紙面をあらためて見てみた。すると、そこには都議選にも大きく関係してくるであろう記事が一面トップに載っていたのである。


『都議会自民党「裏金」問題を追う』


 出ました、裏金問題! 見出しには『パー券 誰に何枚 闇の中』。社会面にも『売った本人「分からない」パー券、記録も記憶もなし』。ずさんでありえないシステムが書かれていた。


都議会自民党のパーティ券「中抜き」の実態


 東京新聞は、都議会自民党の「裏金づくり」を2024年12月にスクープしていた。 今回の紙面に先立ちデジタル版では1週間ほど前から『都議会自民党「裏金」問題を追う』の連載が始まっていた。


 ポイントを紹介しよう。



・パーティーを開催するたびに、都議には1人につきパーティー券50枚100万円を売るノルマが課せられていた。



・パーティー券は一律100枚が渡されていた。



・ノルマ以外の「予備」の50枚分は、売っても、それを都議会自民党の事務局に納める必要がない。



 つまり予備分を売って得た金を「中抜き」していたのだ。都議が収支報告書に記載しないことで、表に出ない「裏金」にする仕組みだったという。


 裏金といえば、国会議員たちは「派閥の指示」とか「秘書が」などと弁明していたが、都議会自民党の場合はパーティー券を販売していたのは都議自身なのである。しかしパーティー券をどこに何枚売ったのか事務局は関知せず、都議も報告していない。


 その結果、収支報告書に不記載が生じていた。こうしてみると単純ミスの「不記載」ではなく、やはりどう考えても「裏金」問題なのである。


 取材した記者は、


《都議選は2025年6月に迫っていた。もし裏金があるのなら、特捜部が立件しようとしまいと、都議らがだんまりを決め込んでいること自体を厳しく問う必要がある。これはやらなきゃいけないんだ。取材を進めることを決めた。》


 と書いている。これぞ新聞記者の役割ではないか。良いものを読んだ。もしかして自民党都議もこの連載を読み、慌てて都議選対策として他党の「水道の基本料金無償化」をパクったのだろうか? 時系列的にも興味深いのだ。


 そういえば小池都知事のことも忘れてはいけない。「サプライズ」は小池都政がよくやる手法だからだ。サプライズといえば聞こえはいいが、要は小池都政では小池都知事周辺だけで重要方針が決まる場合があると度々報じられてきた。


小池都知事の元特別秘書が東京水道サービス社長に


 忘れられないのは築地市場の豊洲移転についてだ。議論が公文書に記録されていないことを問題視されると小池都知事は、


「(移転方針の)最後の決めは人工知能。つまり、政策決定者の私が決めた」


 と言い放った。小池都知事はAIなのか? 堂々とわけのわからないことを言っていたが、今回も知事与党の「提案」を堂々と受けてご機嫌である。つくづく選挙が近いなと思う。


 そういえば「小池百合子」「水道」というとこんなニュースも思い出した。


『小池氏が「天下り」否定 元特秘が東京水道サービス社長に』(産経ニュース2019年4月12日)


 都の監理団体である「東京水道サービス(TSS)」が、2019年3月末まで小池都知事の特別秘書を務めた人物を社長にする決定をしたのだ。側近の「天下り」に当たるのではないかとの指摘に対し、都知事は否定したと各紙が報じている。小池都知事と水道、いろいろご縁があるようです。


 さて、都議選が近くなってきたので都民にはあらためて都議会自民党の裏金議員たちが述べてきた言葉を振り返ることをおススメする。


 たとえば4月16日、政治倫理条例検討委員会の場に、2022年に幹事長だった小宮安里都議(48)=4期、杉並区=が参考人として出席した。小宮都議は開き直りのような姿勢も目についたと東京新聞は報じている。


 たとえばこうだ。


「私たちのことだけの究明をすることだけが委員会でしょうか。政治倫理条例を作るに当たり、過去のことをさらして、深い協議をすること以外にも話し合うことはあると思う」


 さらに、


「きれいごとだけでは政治ができない」


 と。


 こうしたことを平然と言いつつ、「裏金」選挙に臨むのである。やはり1人でも多くの人が選挙に注目したほうがいい。というわけで水道料金と裏金問題、同じ新聞だけで読み比べができたというご報告でした。


◆◆◆


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(プチ鹿島)

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