台風が遠くにあるのに「天気痛」になるワケ
2020年10月6日(火)5時0分 ウェザーニュース
2020/10/06 05:43 ウェザーニュース
気象の変化によって起こる頭痛、関節痛、めまい、むくみ、体のだるさなどの症状を総称して「天気痛」といいます。台風シーズンは気象病に悩む人が増えますが、はるか遠くで発生した台風や熱帯低気圧で天気痛の症状を訴える人がいます。なぜでしょうか。
「気のせい」で片付けられていた
「私が診ている天気痛外来に通院する患者さんの中には、小笠原諸島やフィリピン沖で台風が発生したと聞いたとたん、頭痛、体のだるさ、めまいといった症状を訴える人がいます。天気痛は主に気圧の変化で引き起こされるので、気圧を調べてみましたが大きな変化はありません。不思議でした」と言うのは、ウェザーニューズ気象病顧問アドバイザー・愛知医科大学客員教授・中部大学教授で医師の佐藤純先生です。
フィリピン沖で発生した台風は日本から3000kmも離れています。そんな遠くにある台風が天気痛を引き起こすというと、「たんなる気のせい」とか、「台風と聞いただけで症状が出るのは自己暗示の結果」と考える人が多いのですが、佐藤先生は患者の言葉を信じて検証を続けたと言います。
「ノイズ」と見なされた微気圧変動が原因?
佐藤先生はウェザーニューズの健康気象担当者に相談し、遠くにある台風が日本にどう影響するのかを調べた結果、意外なことがわかりました。
「通常は1hPa(ヘクトパスカル)に満たない気圧の変動はノイズ(不必要な数値)として捨てていたのですが、単位を100倍にして調べると、50Pa(パスカル)=0.5hPa程度の微気圧変動がさざ波のように3000km離れた日本にも押し寄せていたのです。
0.5hPaの気圧変動は家庭用の気圧計では測れませんが、微気圧変動が連続的に押し寄せて来れば、内耳にある気圧センサーに影響することが考えられます」(佐藤先生)
事前にできる天気痛対策
「私の天気痛外来でも、遠方の台風や熱帯低気圧で天気痛を訴える人は3割ほどなので、誰もが影響を受けるわけではありません。台風が接近するにつれて影響を受ける人が増えてきますが、台風は進路が予想でき接近時刻もわかります。それに応じた対策をとって天気痛の症状を軽減していただきたいものです」(佐藤先生)
頭痛や関節痛、めまいなどの症状で通院して薬を処方してもらっている人は天気痛に備えて早めに服用するとよいでしょう。
「市販の酔い止め薬、漢方薬の五苓散(ごれいさん)、天気痛用の耳栓が効くことがあるので試してはいかがでしょうか。ただし、かかりつけの医師や薬剤師とよく相談してください」(佐藤先生)
台風や熱帯低気圧は巨大なエネルギーの塊です。何千kmも遠方に微気圧変動という形でエネルギーを送り、天気痛という症状を引き起こすと推測されるのです。早めの対策を心がけてください。