「褒めて伸ばす」が逆効果になる…「子供の脳は8タイプある」脳内科医が指摘する"子供の才能を潰す親"の盲点

2025年3月12日(水)10時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Chinnapong

子供の才能を引き出すには、どうしたらいいのか。脳内科医の加藤俊徳さんは「子供の脳には8つのタイプがある。正しく把握できれば、子供の能力を開花させることができる」という——。(第1回)

※本稿は、加藤俊徳『子どもの脳は8タイプ 最新脳科学が教える才能の伸ばし方』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。


写真=iStock.com/Chinnapong
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Chinnapong

■右脳が失われたら、左脳が大きくなる


私たちの脳は大まかに右脳と左脳に分かれているというのは、皆さんご存じのことと思います。では、ここで1つ極端な例を挙げましょう。仮に右脳が失われたら、何が起こるでしょうか?


右脳は左半身、左脳は右半身の運動を司っているので、右脳が失われたら、左半身がまったく動かなくなってしまうと想像するかもしれません。これは半分正解ですが、もう半分は不正解と言えます。


たしかに左半身はかなりの機能不全に陥ります。しかし、そうなるだけではなく、右半身の機能が格段に高まります。なぜなら、脳には全体の機能を賄うために、残っている脳の質量を最大化しようとする作用があるからです。


実際、右脳が失われたら、その分を埋め合わせるかのように左脳が大きくなります。誤解のないように付け加えますと、右脳が損傷を受けたとしても、右脳が担っていたすべての機能を失うことは容易ではありません。脳には、損傷を最小限に抑えようとする仕組みが備わっているからです。


結果として、右脳が司る左半身の出力が失われる代わりに、左脳が司る右半身の出力が上がります。右半身の出力が倍増して、全体としてプラスマイナスゼロになるとまでは言えないのですが、年齢や機能の種類によって異なるものの、大半の機能は回復する経過をたどります。特に、脳の重量が成人に達していない21歳以下、とりわけ5歳以下では、未損傷の脳領域が損傷を受けた脳領域を補うように成長していきます。


■親は「できること」に目を向けたほうがいい


生きとし生けるものは、皆「今ある脳」の特性を精一杯、発揮しながら生きています。


すべての脳は、「今、できること」を表現しているだけ。そこに、その人の個性なり才能なり、何かしらの「真価」が秘められているのです。そしてそれは、いかようにも変わりえます。たとえ脳の右半分が失われても、左半分が増大するように。この点において、いわゆる障がいのある人の脳も、障がいのない人の脳も、実は同じと言えるのです。


子を持つ親としては、我が子が心配なあまり、つい「できないこと」にばかりフォーカスし、何とか克服させようと手を尽くすのが常なのかもしれません。私自身父親でもありますから、その気持ちはよくわかります。でも、実は、「すでに脳が表現していること」の中に、かけがえのない宝物がある、ということをぜひとも皆さんに覚えておいていただきたいです。


写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

さらに脳の発達状態(各部位が担う機能ごとの発達度合いのバランス)は固定的なものではなく、どんどん変化しうるものですから、可能性は未知数と言えます。本書で皆さんにお伝えしたい一番重要なメッセージは、こうした脳の仕組みへの認知を持って「あるがままの脳」と向き合うようになると、その脳の能力が向上するということです。


■「わが子の脳」を正しく知る


単純に言うと、お子さんの脳を「できないことがある脳」ではなく「あるがままの姿で、その特性を精一杯、発揮している脳」と知ったうえで、お子さんと付き合うと、お子さんの能力向上につながるのです。不思議に思われるかもしれませんが、これは脳科学的に説明ができる話なのです。


脳は外部からの刺激によってどんどん変化します。我が子に「できないことがある」という前提で付き合うのと、「あるがままの姿で、その特性を精一杯、発揮している」という認知のもとで付き合うのとでは、子どもの脳に送られる刺激は、当然大きく変わってきます。


つまり、「正しい認知」が「その脳にふさわしい刺激の源」となり、それが能力向上、才能の開花につながるというわけです。


これは、子どもの脳にとってメリットになるだけではありません。我が子は、一体、どのような脳の特性を精一杯発揮しながら生きているのか。それを知ることは、子どもに対する最大の理解と言っても過言ではありません。そして的確な理解は、相手との関係性の向上に直結します。


■脳には8タイプある


子どもの脳特性を的確に認知できれば、自然と子どもの「あるがまま」を受け入れられるようになり、付き合い方に悩むことも少なくなるでしょう。また、子どもとしても「親にちゃんと認知され、受け入れられている」というのは安心感と信頼につながります。子どもの脳を知ると、こうして親も子も格段に楽になり、絆が深まるのです。


思春期を迎えると、子どもは徐々に親から離れていくものです。それが自然なことだとわかってはいても、寂しく感じる親は多いに違いありません。


でも、「あるがままの子どもの脳」を認知することができたら、仮に一緒に過ごす時間は幼少期よりずっと少なくなろうとも、より良好で健全な親子関係を築いていく道が開かれるでしょう。


本書では、どのような脳も、今、あるがままの特性を精一杯発揮していると述べました。それは周りから見て「優れた能力」としてその機能が出力される場合もあれば、周りには「困ったな」と受け取られる形で出力されることもあります。


たとえば本書でご紹介する「8タイプ」の1つである「クリエイティブタイプ」の子には、その名の通り創造性が豊かという特性があります(ここで言う「創造性」とは芸術的なセンスとは限らないのですが、詳しくは本書の第3章で解説します)。


お子さんがどのタイプに該当するのか、ぜひ次のテストを行ってみてください。(図表1、2、3)


※編集部注:外部配信先ではハイパーリンクや図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はPRESIDENT Online内でご確認ください。


出所=『子どもの脳は8タイプ 最新脳科学が教える才能の伸ばし方
出所=『子どもの脳は8タイプ 最新脳科学が教える才能の伸ばし方
出所=『子どもの脳は8タイプ 最新脳科学が教える才能の伸ばし方

■“空気が読めない子”を叱ると、才能が摘まれる


ところが、クリエイティブタイプには「場の空気が読めない」という一面もあり、世の中の常識とは少し場違いなところで持ち前の創造性を発揮することが多い。それが周囲の目には「たびたび問題行動を取る、困った子」と映ってしまうケースがよく見られるのです。


ここでの本当の課題は、クリエイティブタイプの創造性あふれる行動そのものではなく、その行動を取る「時と場合」が適切でないことでしょう。しかし多くの場合、周りの人たちがクリエイティブタイプの脳特性を理解していないばかりに、創造的な行動そのものを頭ごなしに叱ってしまいます。


すると、子どもの頭には「こういうことをすると叱られるんだ」とすり込まれます。そして叱られるのは誰だって嫌ですから、せっかくの創造性の出力が弱くなってしまうのです。本当は創造的な行動を抑えるのではなく、「創造性を発揮する『時と場合』を選ぶ」という社会的なスキルを身につけられればいいだけなのにもかかわらず……。


しかしここで、周りの人たちが「このタイプの子は創造性がとても高い。ただし、ちょっと空気が読めないところがあるから、場違いなことをしてしまうことがある」と理解していれば、こんなことにはならないはずです。


■“愛されキャラ”に自己主張を求めるのはNG


もう1つ例を挙げると、「癒やしタイプ」の子は、常に優しく従順で、ほとんど自己主張をしませんし、自分が考えていることを言語化して相手に伝えることが苦手です。それはそれで、「こんなことで、将来、大丈夫だろうか? 厳しい社会を生き抜いていけるだろうか?」なんて心配になるのが親の性(さが)というものでしょう。


でも、この癒やしタイプには、自分が受け身である分、周辺の情報の受信力が高いという強みがあります。多くの情報を受信することで周囲を癒やし、尊重することができるという点は、8タイプ中トップであり、そのために友達も多い「愛されキャラ」です。


このように、癒やしタイプの場合、「自己主張をしない」「言語化が苦手」という点が親の目には「困った子だな」というふうに映ったとしても、その裏側には「受信力が高いために人を尊重し、その結果として人から愛される」という素晴らしい価値があるわけです。


その点を理解せずに、「もっと自己主張をしなさい!」「あなたには自分の意見というものがないの?」などといった言葉をかけるのは酷です。そのように接するうちに、やがてその子は周囲を尊重するという脳特性が出力されづらくなってしまうでしょう。


こうした例からも、それぞれのタイプの脳特性を理解することの重要性がおわかりいただけるかと思います。理解が欠けていることで、その子の脳特性、持ち前の才能が失われることにもなりかねないのです。


写真=iStock.com/JGalione
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/JGalione

■「褒める」でも「叱る」でもなく、「正しい理解」から


親の目に「困ったな」としか映らなければ、脳に何らかの課題があるように思えても無理はありません。当クリニックにも、問題行動を起こす我が子を理解できず、「この子の脳はどこかおかしいのでは?」と不安を抱えている親御さんが多くいらっしゃいます。



加藤俊徳『子どもの脳は8タイプ 最新脳科学が教える才能の伸ばし方』(SBクリエイティブ)

でも、本質的には「欠陥のある脳」は存在しません。子どもはみんな個性的で、脳が表現している個性はさまざまです。親からすると「困ったな」と感じるような事柄であっても、ほとんどの場合において、子どもには親や周囲の人たちを困らせるつもりなどなく、ただ自分の脳特性を精一杯、発揮しながら生きているだけなのです。


そしてその子の問題行動の裏にある才能が見つかれば、もうよその子と我が子を比べている暇などありません。


自(おの)ずと子どもに対する接し方や言葉がけなどが変わり、すると子どもは、よりのびのびと自由に育ちます。何より子どもに関する悩みや不安、フラストレーションが少なくなり、親子ともに楽になるはずです。すべては「正しい理解」から始まります。子どもの素質を深く理解し、才能を伸ばしていきましょう。


----------
加藤 俊徳(かとう・としのり)
脳内科医
昭和大学客員教授。医学博士。加藤プラチナクリニック院長。株式会社「脳の学校」代表。MRI脳画像診断・発達脳科学の専門家で、脳を機能別領域に分類した脳番地トレーニングや脳科学音読法の提唱者。1991年に、現在世界700カ所以上の施設で使われる脳活動計測「fNIRS(エフニルス)」法を発見。1995年から2001年まで米ミネソタ大学放射線科でアルツハイマー病やMRI脳画像の研究に従事。ADHD、コミュニケーション障害など発達障害と関係する「海馬回旋遅滞症」を発見。著書に『1万人の脳を見た名医が教える すごい左利き』(ダイヤモンド社)、『アタマがみるみるシャープになる!! 脳の強化書』(あさ出版)、『一生頭がよくなり続ける すごい脳の使い方』(サンマーク出版)など多数。
----------


(脳内科医 加藤 俊徳)

プレジデント社

「子供」をもっと詳しく

「子供」のニュース

「子供」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ