《スタバはないけど砂場はある》知事のダジャレをきっかけに開業…『すなば珈琲』が「スタバの鳥取出店」に抱いていた“意外な本音”

2025年4月20日(日)7時10分 文春オンライン

「スタバはないけど、日本一のスナバ(砂場)はある」。


 全国で鳥取にだけスターバックスが出店していなかった当時、平井伸治(しんじ)知事が発した名言だ。全国的にも話題になった知事の会心の“ダジャレ”にかけて、「すなば珈琲」が登場したのは2014年のこと。地元は大いににぎわったが、そのわずか1年後に、スタバは満を持して鳥取に出店する。


 あれから10年。すなば珈琲はいま、どうなっているのだろうか? “新”鳥取駅前店の村上春希店長に話を聞いた。



鳥取県内に11店舗展開する「すなば珈琲」。2022年にリニューアルオープンした1号店「“新”鳥取駅前店」に伺った ©︎深野未季/文藝春秋


◆◆◆


平井知事の「スタバはないけど砂場はある」がきっかけ


ーーきょうは平日ですが、お客さんでにぎわっていますね!


村上春希店長(以下、村上) 平日は大体このくらいでしょうか。土日のように待ち時間が出るほどではないですが、この店舗は駅前で立地がいいですし、いろんなお客さんが足を運ばれますね。


ーーお名前が村上春希さん、なんですね。


村上 はい。小説は書けませんけど(笑)。


ーー(笑)。すなば珈琲を運営する「ぎんりんグループ」のオーナーは村上無費価(むひか)さんですよね。ご関係があるのでしょうか。


村上 父です。もともとは、鳥取県内で展開する居酒屋チェーン店の事業を中心でやっていて、私も22歳くらいまでそこで働いていました。すなば珈琲の事業をはじめたのが2014年で、僕が携わるようになったのはそれから3、4年くらいですね。


ーー2014年は鳥取の平井知事が「スタバはないけど砂場はある」と発言して話題に。この“ダジャレ”がオープンのきっかけだったそうですね。


村上 そうです。オーナーがテレビのニュースか何かを見て「これだ!」と思ったらしくて、すぐに平井知事に「使わせてもらっていいですかね?」と連絡を取って。知事も「どうぞどうぞ」と快諾してくださった。


居酒屋のあった店舗を改装して「すなば珈琲」に


ーー居酒屋から喫茶店と、思い切った事業展開ですが、初めて聞いたときはどう思いましたか?


村上 もうびっくりしましたよ。私はオーナーの車に一緒に乗っているときに「すなば珈琲、始めるから」と言われて。


ーー店名まで決まっていたんですね。


村上 最初は、「なんだそれ」でした(笑)。父は「鉄は熱いうちに打て」が口癖で、やるって決めたらすぐに実行するタイプの人なんです。なので、「ああ、これはもうでっかくやるんだな」と。あれよあれよという間に、居酒屋のあった店舗を改装してすなば珈琲にすることが決まりました。


 1号店がオープンしたのは、オーナーが「やる」って決めてから1ヶ月くらいだったと思います。最初は地元の放送局とかに「取り上げてください」ってFAXを送ったりして、自分たちで売り込んでいましたね。


ーーお店が軌道に乗り始めたのは、いつ頃だったんでしょうか。


村上 たまたまなんですけど、『月曜から夜ふかし』(日テレ系)で取り上げられたんです。鳥取にはスタバがない……というテーマでうちにも取材してくださって。そこから朝の情報番組とかでも取材されるようになったんです。あれは大きかったですね。


 鳥取空港の店舗に、マツコ・デラックスさん用のイスを置いているんです。いつか来てくださったときに、感謝をお伝えしたいなと思って(笑)。


ーーマツコさんはまだいらしていない?


村上 残念ながら、そうなんですよ。ご本人が座られていないんですが、あの椅子がフォトスポットになっていますね。


スタバの鳥取出店に抱いていた“本音”


ーー2015年、すなば珈琲のオープンからほどなくして、スターバックスが鳥取に出店します。いよいよ“激突”というか……。


村上 いやいや(笑)。スタバさんには本当に頭が上がりません。スタバの鳥取出店計画はすでにあったけど、うちに気を遣って1年ほどずらしてくれた……という逸話も聞いたことがあります。スタバの鳥取1号店がオープンするときは、当時の店長さんがうちに「どうぞよろしくお願いします」と挨拶に来てくださったんですよ。僕らからしたら「とんでもございません!」という気持ちでしたね。 


 ただ、せっかくなら乗っかるしかない、ということで「大ピンチキャンペーン」というものを行いました。他店のコーヒーショップのレシートを持参して来店するとブレンドコーヒーを半額に、もし「他店よりもマズイ」と感じたならば無料にします、というものでした。当時スタバに1000人くらい並んだみたいですけど、うちのほうにも開店前から行列ができていたりして、ありがたかったですね。


ーー「お客さんを取られるかもしれない」という焦りはなかったんですか?


村上 「大ピンチ」と口では言っていましたけど、内心はそれほどなかったですね。お店に来ていただければわかると思うんですが、スタバとは結構客層が違うんですよ。実は、どちらかというと雰囲気はコメダ珈琲さんが近いと思います(笑)。


ーー新事実です(笑)。ライバルはスタバではなくコメダ……。


村上 ライバルというにはおこがましいですけど(笑)。スタバはドリンクがメインですけど、うちは純喫茶というか、ファミレスに近いというか。食事もしてもらって、憩いの場としてゆっくりしてもらうのを想定しています。


撮影=深野未季/文藝春秋


◇◇◇


 後編では、すなば珈琲の知られざる人気メニューや、全国展開をしない理由について聞いた。鳥取砂丘の砂を使った「砂焼きコーヒー」とは、一体……?

〈 東京でも、大阪でもない…鳥取最大のコーヒーチェーン『すなば珈琲』が、県外で唯一店舗を構える“場所”とは? 〉へ続く


(「文春オンライン」編集部)

文春オンライン

「スタバ」をもっと詳しく

「スタバ」のニュース

「スタバ」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ