東京でも、大阪でもない…鳥取最大のコーヒーチェーン『すなば珈琲』が、県外で唯一店舗を構える“場所”とは?

2025年4月20日(日)7時10分 文春オンライン

〈 《スタバはないけど砂場はある》知事のダジャレをきっかけに開業…『すなば珈琲』が「スタバの鳥取出店」に抱いていた“意外な本音” 〉から続く


 全国で鳥取にだけスターバックスが出店していなかった2014年当時、平井伸治(しんじ)知事が発した名言、「スタバはないけど、日本一のスナバ(砂場)はある」。全国的にも話題になった知事の会心の“ダジャレ”にかけて、『すなば珈琲』は開業した。それから10年、すなば珈琲は県内に11店舗を構える、鳥取最大のコーヒーチェーン店となった。


 同店の人気メニューや、全国展開しない理由、唯一の県外店舗ができた背景について、“新”鳥取駅前店の村上春希店長に話を聞いた。(全2回の2回目/ はじめから読む )



すなば珈琲1号店は2022年に“新”鳥取駅前店としてリニューアルオープン。(左から)アイスのキャラメルウィンナーコーヒー、砂焼きコーヒー ©︎深野未季/文藝春秋



◆◆◆


ーー人気メニューはなんでしょうか。


村上 やっぱりコーヒーは人気ですね。3種類用意してますが、特に人気なのは「砂焼きコーヒー」でしょうか。「すなばブレンド」と迷われて、砂焼きを選ぶ方が多いような。


鳥取砂丘の砂を使った「砂焼きコーヒー」


ーー「砂焼きコーヒー」、気になるネーミングです。


村上 鳥取砂丘の砂で焙煎しています。鳥取砂丘の砂を勝手に持っていくのはだめなんですよ。だから正式に許可をとって、定期的に砂を集めさせてもらっています。


 普通の焙煎機を使うと、どうしても豆に焼きムラができてしまうんですが、砂焼きコーヒーは砂をつかって、豆をオーブンの板でサンドイッチにして焼き上げる。そうすると豆に熱が均等に加わって、焼きムラを抑えられるんです。


ーー手が込んでいますね!


村上 焙煎に50分くらいかかります。それから、1日寝かせていて。抽出もサイフォン式なんですよ。なので、お客さんには少しお時間いただいてしまいますが、えぐみが少ないっていう風におっしゃる方が多いですね。まろやかで、すっきりとした苦味のある、バランスのいい味かなと思います。


ーークリームが乗ったドリンクはサイズがものすごく大きいんですね。


村上 ドリンクだけじゃなくて、パンケーキなんかでもホイップをマシマシで乗っけていますね(笑)。「砂焼きコーヒー」もそうですが、まずはお客さんに「なんだこれ!」って思ってもらいたいという考えがありますね。あとは、量を増やすことで長居してもらいたいなっていう狙いもあります。


 食事だと、「薬膳大山鶏カレー」を召し上がられる方が多いですね。鳥取って、カレーの消費量が1位なんですよ。なのでうちもそこはこだわりたいなと。鳥取の名産の大山鶏を使っています。


 あと、モーニングも人気です。観光で来て、ホテルの朝食ではなくこちらで食べて下さったり。開店前から並んでくださる方もいます。


ーー地元の方に愛されている印象ですが、やっぱり観光の方も多いんですね。


村上 そうですね。うちは基本的に鳥取県内にしか店舗がないので、観光で立ち寄ってくださる方が多いのかもしれません。


ーー全国展開の予定はあるのでしょうか。


『すなば珈琲』が鳥取以外に出店しないワケ


村上 すごくよく聞かれるんですけど、ないですね。以前は東京や大阪に期間限定で出店したこともあったんですが、すなば珈琲が鳥取に来ていただくきっかけになればいいなという思いが強くなったんです。なので、鳥取限定でやっていきたいなと。


 ただ、唯一の県外店舗が、岩手・陸前高田市にあります。東日本大震災が起きてすぐにうちが炊き出し支援を行っていまして、今も続けているんですけれども、高田松原の道の駅がリニューアルするときに、「すなば珈琲さんも入ってくれませんか?」とお声がけいただきまして。陸前高田だけは特別に運営させていただいています。


ーー素敵なエピソードです。


村上 地域に根づいたお店を目指していますので、陸前高田とのご縁も大事にしていきたいですね。


「思い出の中にすなば珈琲があるのは、すごく光栄なこと」


ーー鳥取密着型のお店ならではのエピソードはありますか。


村上 そうですね……。2024年で開業10周年を迎えまして。ある時、お父さんと小学校ぐらいの男の子がいらっしゃって、レジで「ありがとうございました」って普通に会計をしてたら、お父さんが大慌てでスマホの画面を見せてきたんですよ。


 なんだろうと思って見たら、開業したばかりの1号店の前で「すなば珈琲」のロゴと一緒に赤ちゃんが写っている写真だったんです。お父さんが「あの時の子も10歳になりました」って言ってくださって、男の子も「10周年おめでとうございます。これからも頑張ってください」と。10年越しにまた来てくれたっていう、すごい……うん、これはめちゃくちゃ嬉しかったですね。忘れられないです。


ーー鳥取に根付いたすなば珈琲さんだからこそですね。


村上 誰かの思い出の中にすなば珈琲があるっていうのは、すごく光栄なことだなって思いますね。


すなば珈琲をきっかけに鳥取に来てもらえたら


ーー鳥取を歩けばすなば珈琲が見つかりますよね。空港にもありましたし、米子方面にも。


村上 今は県内に11店舗展開しています。うちはあんまり広告費が出せないので、みなさんが口コミで広げてくださったおかげです。


 鳥取で思いつくことって砂丘くらいかなって思うんですけど、食べ物もおいしいですし、道路も空いていて運転しやすいですし、いいところですよ! 「すなば珈琲ってあるらしいじゃん、鳥取行ってみようか」なんて、一つの選択肢に入れてくださったら嬉しいですね。


ーー実はプライベートではスタバによく行く、なんてことは……。


村上 (笑)。手前味噌ですが「うちのコーヒーはおいしいな」と思っているので、スタバに限らず、あえてほかのお店でコーヒーをいただくことはあまりないですね。行ったときは、フラペチーノとか、うちにはないメニューを頼んでいます(笑)。


撮影=深野未季/文藝春秋


(「文春オンライン」編集部)

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