「草加せんべい」値上げ、「ハッピーターン」など外国産米比率アップ…コメ高騰で米菓も苦境
2025年4月30日(水)15時0分 読売新聞
コメの価格高騰で商品を値上げした「豊田屋」(16日、埼玉県草加市で)
米菓メーカーが、商品の値上げや輸入米の使用などを迫られている。主食用米の高騰に連動し、加工用のコメも値上がりしているためだ。農家がより価格の高い主食用に生産を切り替えることへの懸念もあり、原料確保に対する不安も広がっている。(新潟支局 谷出知謙、地方部 児玉森生)
1・4倍に高騰
「草加せんべい」を製造・販売する埼玉県草加市の豊田屋は、1袋8枚入りの「特選堅焼」を1000円で販売している。昨年10月までは800円だったが、値上げしたという。
原料の加工用米は国産にこだわる。ただ、今年4月の値段は1キロあたり290円ほど。2年前は200円程度だったといい、約1・4倍に高騰したことになる。3代目の豊田重治さん(79)は「今後どうなるのか」と表情を曇らせる。
「加工用」「小粒」上昇
米菓やみそなどの加工食品には、加工用として育てられたコメのほか、小粒だったり割れたりして主食用に適さなくなった「特定米穀」なども使われる。
特定米穀は価格の安さが利点だったが、主食用米の高騰とともに価格が上昇。全国米穀工業協同組合(東京)によると、通常は1キロあたり200円を超えないが、今年4月中旬の取引会では約290円になった。
農林水産省が今年1月末時点でまとめた調査では、2025年産米に関する農家の作付け意向は、主食用米が128・2万ヘクタールで前年比2・3万ヘクタール増だった。一方で、加工用米は4・7万ヘクタールで同0・3万ヘクタール減だった。背景には、主食用米の高騰に伴う転換もあるとみられる。
外国産1割→6割
米菓製造が盛んな新潟県でも、メーカー側が対策を進めている。
栗山米菓(新潟市)では、原料に占める外国産米の割合が3年前には1割だった。しかし、徐々に引き上げ、現在は6割になっている。櫛谷文則生産本部長(56)は「外国産の比率を上げないと価格を抑えられない」と話す。それでも、昨夏には主力の「ばかうけ」を約6%値上げした。
「亀田の柿の種」「ハッピーターン」などを製造する亀田製菓(新潟市)も、外国産米の比率を高めている。コメ不足でも安定して商品を供給できるようにするためだ。岩塚製菓(長岡市)は地元の農家やJAと連携して国産米を確保する。
影響は日本酒にも
日本酒にも影響が広がる。福島県南会津町の国権酒造は、地元産の酒米で醸造した日本酒を地域のブランドとして売り出し、輸出拡大を目指している。地元の三つの蔵とともに昨年8月、国から地理的表示(GI)の指定を受けたばかりだ。
しかし、コメの価格高騰で酒米から主食用に切り替える農家もあるという。細井信浩社長は「必要量を確保できるか。価格も昨年の1・5倍ほどになりそうだ」とため息をつく。
山形県は今年度、県内49の酒蔵を対象に酒米の値上がり分の半額を補助する。今月18日までに32蔵から申請があった。県の担当者は「日本酒は重要な産業で、文化。生産基盤を維持する手助けになれば」と話す。