職場にいる「性格が悪い人」とどう接するか…トップコンサルが「これだけは絶対ダメ」というNG言動
2025年5月27日(火)8時15分 プレジデント社
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/sabthai
※本稿は、佐藤美和『世界のハイパフォーマーを30年間見てきてわかった一流が大切にしている仕事の基本』(かんき出版)の一部を再編集したものです。
■言いにくいことをどう伝えるか
「うわー、気が重いな」
先輩のミスを指摘する、懇意にしている取引先にクレームを言う、他部門の怖い人の仕事にダメ出しをする……。仕事だとは思うものの、言いにくいことを相手に伝えるのはやっぱり嫌なものです。定年延長や継続雇用制度で、これからは元上司に言いにくいことを言う立場になることだって十分に考えられます。そんなことは考えただけで腰が引けてしまいます。
言いにくいことは、相手を傷つけないような言葉や、遠回しな表現を使うと、少しは言いやすくなるものです。
例えば、自社に熱心に何度も通ってきて、とても好感が持てる営業担当者がいたとします。でも、残念なことに自社にはニーズがなかったら、どう断りますか?
「その商品は当社には必要ありません。購入することは決してありません。いくら熱く語ってもムダです。二度と来ないでください」とは、さすがに言えません。「とても素晴らしい商品ですね。社内で検討してみます」と耳当たりのいいことを言って、その場を乗り切ってしまいがちです。
自分では、やんわりと断ったつもりでも、相手からしてみると「検討する」と言われたら、数日後には「ご検討状況いかがでしょうか?」と連絡するのは当然です。その都度「まだ検討中です」と言ってやり過ごしても、いつかははっきりと断らなければなりません。
写真=iStock.com/sabthai
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こちらが断る前に、相手が察してくれたとしても「『素晴らしい商品』『検討する』と言ってたのは嘘なのか! その気がないなら早くそう言ってよ。これまでの時間を返してほしい!」というのが、偽らざる気持ちでしょう。
言いにくいことを遠回しに言うことを「オブラートに包む」と表現しますが、オブラートに包み過ぎると真意が見えなくなって、かえって人間関係を悪くします。
■ストレートで思いやりいっぱいの断り方
一流は、言いにくいことほどストレートに伝えます。それでいて、相手の気分を害したり、関係にひびが入ったりはしません。本題に入る前に、「本当に残念なのですが」「申し上げにくいのですが」「ご期待に添えなくて心苦しいのですが」などの前置きをします。これをクッション言葉と言います。
クッション言葉は、陶器を箱に詰めるときに使う緩衝材と同じ役割をします。この前置きで、相手は「ネガティブな話なんだな」と心づもりができるので、このあとに続く厳しい話が与える衝撃を緩和することができます。
ただし、褒め言葉をクッション言葉にしてはいけません。「御社の商品は本当に素晴らしい。あなたの熱意のこもったお話には大変心を動かされました。しかし、当社では購入を見送ることにしました」と言われたら、「素晴らしくて、心を動かされたのに、なぜ買ってくれないの?」と思いませんか?
断る側は相手に配慮したつもりでも、クッション言葉と本題の内容に矛盾があると、不誠実な感じがします。その結果、こちらへの信頼そのものが揺らいでしまいます。
クッション言葉を伝えたら、言いにくい結論をはっきり言ってしまいます。それから、相手のこれまでの努力に対する賛辞を送りましょう。
例えば、「ご期待に添えなくて心苦しいのですが、当社では購入を見送ることにしました。残念ながら当社のニーズには合いませんでしたが、御社の商品は本当に素晴らしいと思います。それに、○○さまの熱意のこもったお話には大変心を動かされました。当社とは今回ご縁がありませんでしたが、これにめげずに引き続きがんばってください。個人として応援しています」
こう言われたら、断られた相手も気持ちよくこちらの決定を受け入れてくれるでしょう。一流と一緒に仕事をしたい人が社内にも社外にも多いのは、こんなストレートだけれど思いやりいっぱいの断り方にも理由があります。
■コミュニケーションは相手のスタイルに合わせて
誰とでもうまくやっていく秘訣は、相手を優先することだと言われます。これは、まったくもってその通り。でも、いつでも自分の欲求や感情を押し殺して、相手を優先してばかりいると疲弊してしまいます。
私が見てきた一流に共通しているのは、誰に対してもしっかりと自己主張しながらも、うまくやっていることです。こんなことが可能なのは、コミュニケーションのスタイルをいくつも持っていて、相手によって変化させているからです。
人はそれぞれ、性格、価値観、育ってきた環境などが異なります。これらは、コミュニケーションの「クセ」、つまり好む言葉や好むアプローチの違いにつながります。
「この仕事を明日までにやってください」とひと言で指示されて、「ビジネスライクで冷たい」と嫌悪感を示す人がいる一方で、「余計な情報が削ぎ落とされていてわかりやすい」と好感を持つ人がいます。これが、その人のコミュニケーションのクセです。
相手のコミュニケーションのクセについては、「ソーシャルスタイル理論」が有名です。
出典=『世界のハイパフォーマーを30年間見てきてわかった一流が大切にしている仕事の基本』
これは、その人が、①「意見を主張する」のか、それとも「意見を聞く」のか、②「感情表現を抑える」のか、それとも「感情を表す」のか、の2軸でコミュニケーションのクセを4つに分類するものです。
■コミュニケーションのクセ4分類
「意見を主張する」×「感情表現を抑える」は、自分で物事を決めるのが好きな人(ドライバー)。説明は短く、明確に。いくつかの選択肢を示して相手に選んでもらうといいでしょう。
「意見を主張する」×「感情を表す」は、注目されることが好きな人(エクスプレッシブ)。相手の話をしっかりと聞きながら、仕事の面白さや新規性を伝えます。話が自分の興味のある方向にそれがちなので、ところどころで本題に戻ってどのくらい理解しているか確認するといいでしょう。
「意見を聞く」×「感情表現を抑える」は、分析や論理が好きな人(アナリティカル)。
前例やデータを示して筋道立てて説明します。相手が自分で答えを出すまで待ってあげるといいでしょう。
写真=iStock.com/kazuma seki
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「意見を聞く」×「感情を表す」は、周囲との調和が好きな人(エミアブル)。やわらかい雰囲気と言葉で話しかけます。周囲に遠慮してはっきりと意見を言わないことがあるので、ときどき質問をして本人の考えを引き出します。「大丈夫」「信頼してます」「サポートします」と言って、安心させてあげましょう。
例えば、「A案のほうがB案よりも優れているから採用したい」と主張するとしましょう。自分がエクスプレッシブだったらその理由を、「A案のほうがワクワクするから」と言ってしまいますが、アナリティカルの人は、「ワクワクなんて言われてもわからない。こんな感覚的なことを根拠にA案を推しているのか」と不信感を持ちます。こういうことが積もり積もると、相手に対する苦手意識になり、関係はうまくいかなくなってしまいます。
一流は人と話すとき、自分のコミュニケーションのクセが前面に出過ぎないように注意を払います。自分がしてほしいことが、相手もしてほしいこととは限りません。良かれと思って発したひと言が、相手を傷つけたりイライラさせたりすることもあるのです。
■負のオーラを発する人とどう接するか
誰にだってどうしても好きになれない人はいるものです。マウントを取る人、何でもネガティブにとらえる人、人の噂話ばかりする人……。その人たちが発する負のオーラを浴びると、こちらまで気が滅入ってしまいそうです。できればあまり関わりたくありません。たいていの人は、こういうちょっとやっかいな人たちにはできるだけ近寄らないようにしています。
ところが、一流は総じて、周囲から敬遠されている人とでも、普通に接しています。一流に言わせると、そういう人たちがする気の滅入る話は「ひとつのネタ」。
人にはそれぞれ、他愛もない世間話をするときのネタに傾向があります。天気の話、ペットの話、サッカーの話……。それらと同じで、ネガティブな話も場をもたせるための世間話で、特に意味はありません。沈黙は気まずいから、礼儀だと思って何か話しているだけです。
また、不満や悪意があるわけではなくて、自分を認めてほしい、ストレスを発散したい、周囲の人の関心を引きたい、という気持ちから、誰かと話をするチャンスがあれば、かわいそうな自分や他の人よりイケてる自分の話をする人もいます。
写真=iStock.com/curioustiger
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一流は、社会人である以上、誰とでもうまくやっていかなければならない、でも、誰とでも親しくつき合う必要はない、と考えています。それほど親しいわけではない人と話をするのは、たまたま一緒になったときだけ。エレベーターを待っている間とか、通勤電車で偶然同じ車両になったとか、特に何もすることがないときがほとんどです。
どのみちすることがない時間なのだから、話の内容が何であれ黙って聞きます。エレベーターや電車が目的地に着いたら、話は終わるのですから。
■誰からも助けてもらえるのが一流の証
相手に好かれようとして、ネガティブな話にも共感を示す人がいますが、これは絶対にダメです。嫌な顔ひとつしないで話は聞くけれど、傾聴してはいけません。傾聴すると「私に同意してくれた」と受け取られるからです。そればかりか、いつの間にかその話をしていたのは自分にされてしまいかねません。そうなると、周囲から自分が誤解されて、敬遠されてしまいます。
だから、こういう人に対しては、自分は「壁」になったつもりで、思う存分壁打ちをしてもらいます。そうは言っても、楽しくない話をただ聞いているのはつらいものです。だから、話を聞き終わったら、自分で自分に「お疲れさま」と言ってきれいさっぱり忘れてしまい、吸い込んだネガティブな空気を吹き飛ばしてしまいましょう。誰とでもうまくやっていくためとはいえ、自分が精神的にダメージを受けてしまっては、何にもなりませんから。
こんなふうにしているから、一流は誰からも嫌われません。むしろ、思わぬところから助け舟が出てきます。
あるスタートアップ企業に勤める方は、東京の一等地に自社の看板を出すミッションを担っていましたが、目立つ場所の広告料は高く、人気もあるので、苦戦していました。
佐藤美和『世界のハイパフォーマーを30年間見てきてわかった一流が大切にしている仕事の基本』(かんき出版)
すると、「息を吐くように愚痴を言う」と、周囲から敬遠されている同僚が、条件にぴったりの場所にあるビルのオーナーを紹介してくれたのです。その結果、希望通りの条件で無事に看板を出すことができました。
愚痴を言う同僚がその方を助けた理由は、「社内で数少ない、お世話になりっぱなしの人だから」というものでした。壁打ちにつき合ってくれていることをうれしく思い、恩義に感じていたのです。
この方に限らず、一流は「この人ともつながりがあるの?」と驚くような幅広く多様なネットワークを持っています。それを支えているのは、こんな人づき合いの哲学なのです。
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佐藤 美和(さとう・みわ)
ビービーエル 代表取締役 人事戦略・組織開発・人材開発コンサルタント/企業研修講師
一橋大学大学院国際企業戦略研究科修士課程修了。2023年度Asia Business Outlook誌が選ぶ「アジアの組織開発コンサルタントトップ10」に日本から唯一選出。アメリカン・エキスプレス・インターナショナルにて、アジア太平洋地域オペレーションセンター設立プロジェクトを担当。アーサーアンダーセン ヒューマン・キャピタル・サービス、IBMビジネスコンサルティングサービス(現日本IBM)戦略コンサルティング部門にて、人事戦略策定等のコンサルティングに従事。日本GEにて人事本部組織・人材開発責任者として、グローバルタレント育成等に従事。現在は、ビービーエルを起業し、組織・人事コンサルタントとして活動している。
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(ビービーエル 代表取締役 人事戦略・組織開発・人材開発コンサルタント/企業研修講師 佐藤 美和)