プラスチックリサイクルの効率化が可能なマイクロ波加熱の新たな制御技術を開発
2024年11月21日(木)14時46分 PR TIMES
[画像: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/120285/198/120285-198-81fa5991d726aebb8098e97625dd528e-1500x854.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]ケミカルリサイクルの従来方式との比較
三菱電機株式会社は、プラスチックのケミカルリサイクルに使用されるマイクロ波加熱において、効率的に加熱処理する制御技術を開発しました。マイクロ波を特定領域へ集中照射し、その領域内で均一に加熱する本技術により、加熱時間を約3分の1に短縮(※1)し、効率よく再生原料を取り出すことが可能になります。
プラスチックのリサイクル方法には、マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル、サーマルリサイクルがあります。日本ではプラスチックを燃料として燃やし、その熱を利用するサーマルリサイクルが主流となっていますが、サーキュラーエコノミーの観点から、プラスチックを製品の原料として再利用するマテリアルリサイクルとケミカルリサイクルの重要性が高まっています。しかし、選別工程が多く処理可能なプラスチックの種類が限られるマテリアルリサイクルは、プラスチック以外の素材が混在している場合でのリサイクルが困難で、リサイクルしても強度や色調などの品質が低下するため、リサイクル後の用途が限られています。一方、ケミカルリサイクルは化学的に分解するため、異なる素材が混在したプラスチックのリサイクルが可能で品質も維持されますが、他のプラスチックリサイクル方法と同様、加工には大量の電力が必要になります。また、ケミカルリサイクルの従来技術には、電気炉などの外部の反応器(※2)から熱伝導で加熱する外部加熱方式がありますが、炉全体を温める必要があるため加熱効率が悪いという課題がありました。これに対して、マイクロ波加熱は、直接プラスチックにマイクロ波を当てるため、外部加熱方式に比べて加熱効率は良くなりますが、加熱炉内で生じる反射波が干渉することにより、照射されるマイクロ波が均一ではないため、加熱ムラが発生するという課題がありました。
当社が今回開発した制御技術は、金属で囲まれた狭い空間におけるマイクロ波の強さと広がりを調整することで、特定領域へのマイクロ波の集中照射と、その領域内での均一加熱を可能にしました。これにより、加熱ムラがなくなり、外部加熱方式や従来のマイクロ波加熱に比べて約3分の1の加熱時間で、効率的に再生原料を取り出すことが可能になります。また、電磁波吸収板への世界初(※3)の独自構造の採用による電磁波吸収板の経年劣化の抑制や、反射波の影響を低減する回路の開発によるプラスチックリサイクルの低消費電力化により、カーボンニュートラルの実現に貢献します。さらに、プラスチックリサイクルの効率化は、新たな原料の採掘などを不要とするため、非再生可能エネルギーを使用する採掘設備でのCO2排出量の削減に加え、資源を有効活用し廃棄物を削減するサーキュラーエコノミーの実現が期待できます。
本技術の詳細は「マイクロウェーブ展2024(MWE2024)」(11月27日〜29日、於:パシフィコ横浜)に出展します。
■開発の特長
1.金属で囲まれた狭い空間内におけるマイクロ波の照射領域と強さを調整可能とする新技術で、加熱時間の短縮を実現
・マイクロ波加熱に使用するアレーアンテナ(※4)の素子を増やし、アンテナ素子から照射されるマイクロ波の振幅と位相を最適化したことで、従来困難であった、金属で囲まれた狭い空間内でのアンテナ付近におけるマイクロ波加熱の制御を実現
・マイクロ波の照射領域の広がりや強さの調整に寄与するモニター機能を開発。モニター機能を活用したマイクロ波加熱の制御により、マイクロ波の照射領域と強さの調整が可能になり、特定領域への集中照射に加え、その領域内での均一加熱を行うことで、従来比で加熱時間を約3分の1に短縮し、効率的な加熱を実現
2.世界初の独自構造で、付加材料不要で経年劣化に強い電磁波吸収板を実現
・電磁波吸収板にSIW共振器(※)5を用いた世界初の独自構造を採用。従来のマイクロ波加熱で課題となっていた、不要な反射波抑制のために電磁波吸収板に付加する特殊塗料や抵抗シート、チップ抵抗などの材料を不要とすることで、経年劣化に強い電磁波吸収板を実現
3.抵抗不要の反射波低減回路を開発し、低消費電力化と装置内の回路保護を実現
・反射波の影響(※6)を低減するため、従来のアンテナでは回路内に反射波のエネルギーを熱に変換する抵抗を入れていたのに対し、今回採用した大規模アレーアンテナに適用可能な、抵抗を不要とする反射波低減回路を新たに開発(※7)。これにより、電力の損失なく反射波の影響を低減
・従来の抵抗を用いる方式に比べて、熱変換で消費される電力が不要となり、消費電力を低減しつつ、加熱装置内のマイクロ波送信回路の保護を実現
■今後の予定・将来展望
実証研究を進め、2030年までに製品化を目指します。また、廃棄物処理やリサイクルに関わる企業とのパートナーシップを推進し、プラスチックリサイクルの効率化に寄与する本技術の普及に努めることで、カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーの実現に貢献します。
■三菱電機グループについて
私たち三菱電機グループは、たゆまぬ技術革新と限りない創造力により、活力とゆとりある社会の実現に貢献します。社会・環境を豊かにしながら事業を発展させる「トレード・オン」の活動を加速させ、サステナビリティを実現します。また、デジタル基盤「Serendie」を活用し、お客様から得られたデータをデジタル空間に集約・分析するとともに、グループ内が強くつながり知恵を出し合うことで、新たな価値を生み出し社会課題の解決に貢献する「循環型 デジタル・エンジニアリング」を推進しています。1921年の創業以来、100年を超える歴史を有し、社会システム、電力システム、防衛・宇宙システム、FAシステム、自動車機器、ビルシステム、空調・家電、情報システム・サービス、半導体・デバイスといった事業を展開しています。世界に200以上のグループ会社と約15万人の従業員を擁し、2023年度の連結売上高は5兆2,579億円でした。詳細は、www.MitsubishiElectric.co.jpをご覧ください。
※1 外部加熱方式や従来のマイクロ波加熱との比較において
※2 化学物質の製造過程において、化学反応を行うための装置
※3 2024年11月21日現在、当社調べ
※4 複数のアンテナ素子を規則的に配列(配置)したアンテナ。個々のアンテナ素子の振幅・位相を制御することで、単一のアンテナでは実現できない放射パターンを実現
※5 Substrate Integrated Waveguide共振器の略。マイクロ波共振器の一種で基板内に構成されており、SIW共振器で共振して基板内部に入り込んだマイクロ波の一部は、熱として吸収
※6 加熱装置内のマイクロ波送信回路では、設計時には想定していない「送信とは逆向きのマイクロ波(反射波)」を受信すると、性能の劣化や回路の故障が発生
※7 大規模なアレーアンテナ以外のアンテナでは、抵抗を用いない方式(無損失)の反射波低減回路は複数提案されているが、大規模アレーアンテナへの適用時の効果が不明であったため、今回、大規模アレーアンテナを対象に、アンテナ素子同士の影響(相互作用)や反射を考慮して、各アンテナ素子から照射されるマイクロ波の振幅や位相を調整することで反射波を低減する回路を開発し、その効果を実証
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