大局制した自陣角 永瀬九段が持ち味の受けで藤井王将を破り1勝を返す ALSOK杯第74期王将戦七番勝負第4局
2025年2月17日(月)11時30分 マイナビニュース
藤井聡太王将に永瀬拓矢九段が挑戦するALSOK杯第74期王将戦七番勝負(毎日新聞社、スポーツニッポン新聞社、日本将棋連盟主催)は、藤井王将3連勝で迎えた第4局が2月15日(土)・16日(日)に大阪府高槻市「摂津峡花の里温泉 山水館」で行われました。対局の結果、難解な終盤戦から抜け出した永瀬九段が124手で勝利。待望の1勝で王将奪取に望みをつなぎました。
○永瀬流の受け将棋
早くもカド番に立たされた永瀬九段は後手番で迎えた本局で角換わり腰掛け銀を採用。この戦型は先攻できる先手が指しやすいとされるものの、変化の権利は後手のほうにあり、実戦も永瀬九段が新手を披露しました。藤井王将の4筋からの仕掛けにノータイムで玉を寄ったのは研究の深さを示す一手で、直後の自陣角との合わせ技で好機に反撃したい意図が見て取れます。
永瀬九段が記した封じ手が立会人の谷川浩司十七世名人によって読み上げられ、2日目の戦いが始まります。形勢は互角で主導権は先手。手番を握った先手の藤井王将は飛車を切り飛ばして攻め続けてペースをつかみますが、この日は永瀬九段の力強い受けが光る展開となりました。銀取りの歩打ちで強く相手の攻めを催促したのが藤井王将の軽視した事実上の決め手です。
○受けて築いた1勝目
持ち時間でもリードする永瀬九段ですが、結論を急ぐようなテンポよい指し手で持ち時間を残しつつ指し進めます。攻めの手番は藤井王将にあるものの、これはいわゆる「攻めさせられている」格好。攻めが一段落した局面の永瀬玉は危険なように見えますが、序盤に打った自陣角が輝いており容易に詰めろがかかりません。ここからは永瀬九段の反撃を見るばかりとなりました。
終局時刻は18時28分、最後は自玉の詰みを認めた藤井王将が投了。序盤に打った自陣角が詰みに働く終局図となりました。手厚い受けでの快勝で1勝3敗と反撃の狼煙を挙げた永瀬九段は次局に向けて「いままで以上にしっかり準備したい」と抱負を語りました。注目の第5局は3月8日(土)・9日(日)に埼玉県深谷市の「旧渋沢邸『中の家(なかんち)』」で行われます。
水留啓(将棋情報局)