特攻隊隊長役のワッキーが「忘れさせやしない」という思いを語る。「戦争とは、ジジイが始めて、オッサンが命令して、若者が死んでいく物語」
2025年3月21日(金)8時0分 婦人公論.jp
ゲネを終えて取材に答えるキャスト
2025年3月19日から23日まで、東京・新国立劇場・小劇場にて、ペナルティ・ワッキーがプロデューサーを務め、自らも出演する舞台「Mother〜特攻の母 鳥濱トメ物語〜」が上演されている。戦後80年を迎える今年、「なぜ、何のために彼らは突撃できたのか」を問い、「彼ら1人1人にそれぞれの人生があったことを忘れさせやしない」という鳥濱トメさんたちの思いを受け継ぐ舞台となっている。
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3月19日、初日の開演前にゲネプロと取材会が行われ、プロデューサー兼特攻隊隊長・久保田利雄役のワッキーや主演・鳥濱トメさん役の浅香唯、久保田の妻役で、元フィギュアスケート選手の安藤美姫、金山文博役の太田博久が、感動冷めやらぬ中、本番に向けての意気込みを語った。
「Mother〜特攻の母 鳥濱トメ物語〜」は、知覧で富屋食堂を営み、特攻隊員の面倒を見続け”母”と慕われた鳥濱トメさんの半生を、実話をもとに舞台化したもの。2009年の初演から年に1回上演され、141公演を数える。
今回はワッキーのオファーで、自身の弟と娘の出演がご縁で本作品のファンだったという安藤美姫が久保田の妻役で演技に初挑戦した。また、お笑いコンビ「ジャングルポケット」の太田博久も、物語の重要な役どころである、朝鮮出身の特攻隊員、金山文博役を務める。
この舞台をライフワークとして今回はプロデューサーとしても関わったワッキーは「ゲネプロの自分の出来は100点。1年をかけて準備してきたものが初日を迎え、うれしい。不安もありますが、うれしさが勝っています」と語った。
出撃前に「何か芸術作品を残したい」という堀川隊員に、生け花を教えるトメさん
主演の浅香は、「すごく緊張して反省点も。修正して本番に臨みたい」と気を引き締める。今回が初の舞台挑戦となる太田は、ゲネ後にワッキーから称賛され「不安だったので、本番前にワッキーさんのコメントが聞けて良かった!」と安堵を見せた。演じながらどうしても思いがこみ上げてしまい、泣いてはいけないところでは、ちびまる子のことを思い出して涙をこらえたという。
太田演じる朝鮮出身の金山(左)は、出撃の前日、祖国に向かって敬礼する機会を得る
数年前、観客でありながら、「久保田の妻役の台詞を覚えてしまった」という安藤は、稽古なしで久保田の妻役を見事に演じたことで今回抜擢された。「普段は言葉がない演技でメッセージを届けているが、セリフのある緊張感がある。弟や娘もお世話になった舞台で、お客様にメッセージを届けられるように」と語った。
小さい体ながらパワフルにトメさん役を演じた浅香は「最初に安藤さんに会ったときは、〈世界の安藤だ〉って緊張した」とコメント。一方安藤は、モンペ姿でただ歩くという演技に、「足がきれいすぎる」と演出家に何度も注意されたとか。指先足先にまで神経が行き届いてしまうゆえのNGに、ワッキーや太田も和んだという。
舞台は、「富屋食堂」のセットと黒い幕だけで、戦後と戦中を見事に行き来する。トメさんの娘の美阿子、礼子と、食堂に集う特攻隊員たち、見送った女学生たち、それぞれの人生を色濃く再現している。
劇中には「戦争とは、ジジイが始めて、オッサンが命令して、若者が死んでいく物語だ」という印象的な言葉が登場する。
戦後、最初は散っていった特攻隊員たちを思い、強く抵抗しながらも、進駐軍の指定食堂としてアメリカ兵の面倒も見ていたトメさん。最後の場面には世界の平和への思いが込められている。
ラストシーンにはすべての特攻隊員たちが富屋食堂に…
【公演概要】
アース製薬100周年presents 「Mother〜特攻の母 鳥濱トメ物語〜」
【公演日程】2025年3月19日(水)〜3月23日(日) (全8回公演)
【会場】新国立劇場 小劇場(〒151-0071 東京都渋谷区本町1丁目1-1)
【出演】浅香唯、ワッキー(ペナルティ)、太田博久(ジャングルポケット) 、安藤美姫 他
<配信チケット情報>
料金:税込3,000円
販売期間:〜 3月29日(土)正午12:00
視聴可能期間:3月22日(土)18:00 〜 3月29日(土)23:59まで
*期間中は何度でもご覧いただけます
配信チケットURL https://airstudio.zaiko.io/item/370197
【公演情報】公式HP http://www.airstudio.jp/index_2025mother.html
公式X https://x.com/mothertomestory
【主催・企画制作】株式会社エアースタジオ
【特別協賛】アース製薬株式会社
【協力】吉本興業株式会社、鳥濱拳大、ホタル館富屋食堂、赤羽潤、薩摩おごじょ、
特定非営利活動法人知覧特攻の母鳥濱トメ顕彰会、NPO法人国際芸術文化交流振興会、劇団空感演人 他
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