『サンダーボルツ*』を見る前に知ってほしい5つのこと。MCU過去作「予習ゼロ」でも楽しめる涙の傑作
2025年5月2日(金)20時30分 All About
絶賛が相次ぐ映画『サンダーボルツ*』の魅力および見る前に知ってほしい5つのことを紹介しましょう! それでいて「予備知識ゼロでも大丈夫」な明確な理由もあるのです。(画像出典:(C)2024 MARVEL)
本作はアメリカンコミックのヒーローが同一世界で活躍する「マーベル・シネマティック・ユニバース(以下、MCU)」の1つ。「フェーズ4」以降のMCU作品はやや厳しめの評価も寄せられることもあり、Disney+(ディズニープラス)で配信のドラマも含めて作品数が膨大なため、追いかけるモチベーションが下がってしまった、という人もいるでしょう。
しかし、今回の『サンダーボルツ*』はアメリカの批評サービスのRotten Tomatoesで批評家支持率が89%に観客満足度も95%と、シリーズでもトップクラスの高評価(5月上旬現在)。しかも後述する理由で、予備知識がなくても楽しめると断言できますし、実際の本編を見ても「とにかく面白いから見て」とシンプルに大推薦できるのです。
それでも「ほかの作品を見ていないけど大丈夫?」と不安に思っている人のために、大きなネタバレにならない範囲で、見る前に知ってほしいポイントを5つに分けて紹介しましょう。何1つ知らずに見たいという人は、先に劇場へと駆けつけてください。
1:「1作だけ予習」は『ブラック・ウィドウ』がおすすめ
後述しますが、本作のメインキャラクターたちは、MCU作品それぞれに登場していた「過去に傷を持つアウトローたち」です。中でも本作と最も密接に絡んでいる映画は、2021年公開の『ブラック・ウィドウ』でしょう。今回の『サンダーボルツ*』の実質的な主人公である「エレーナ」は、ヒーローチーム「アベンジャーズ」の紅一点「ブラック・ウィドウ(ナターシャ・ロマノフ)」の妹です。映画『ブラック・ウィドウ』を見ていると、今回のエレーナの「空虚」な気持ちにより同調しやすくなるかもしれません。
あえて1作品だけでも予習のために見ておきたいのであれば、『ブラック・ウィドウ』だけでも十分でしょう。
2:ちゃんと「類推」できるようになっている
本作を見ると必然的に2019年の『アベンジャーズ/エンドゲーム』のネタバレになるのでそちらもできれば事前に見てほしくなり、ほかにもこのキャラクターはこの作品でこういう立場で……と説明したくもなってしまうのですが、そうした気持ちは「エゴ」なのかもしれません。どのシリーズ作品でも、ファンはついつい「最大限に楽しむにはこの作品を見ておいたほうがよくて……」などと「予習の必要性」を訴えたくもなりますし、それはもちろん親切心や作品への愛情があってこそ。実際に予習しておけばさらに楽しめるとも思うのですが、大抵は何も知らずに見ても「類推できる」ようになっているものです。

筆者自身もDisney+で配信中の2021年のドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』を未見だったり、4年前に見た『ブラック・ウィドウ』の内容をほとんど覚えていなかったりもしましたが、それでも問題なく楽しめました。繰り返しますが、この『サンダーボルツ*』は「予習はしなくても大丈夫」と断言します。
※以下、『アベンジャーズ/エンドゲーム』のネタバレに触れています。
3:クセの強いキャラクターを紹介!
メインのキャラクターはいずれもクセが強く、すぐに覚えられることも「予備知識ゼロでOK」の大きな理由です。
「エレーナ・ベロワ(フローレンス・ピュー)……幼い頃からロシアのスパイ機関で強制的に養成され、暗殺者=ウィドウになった。擬似家族として共に育った姉のブラック・ウィドウを亡くしている。2021年の『ブラック・ウィドウ』に登場。
ウィンター・ソルジャー/バッキー・バーンズ(セバスチャン・スタン)……元・暗殺兵器で、親友のスティーブこと初代キャプテン・アメリカとの戦いの中で本来の人格と記憶を取り戻していった。今回の新チーム「サンダーボルツ*」のまとめ役。2011年の『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』などに登場。
レッド・ガーディアン/アレクセイ・ショスタコフ(デヴィッド・ハーバー)……エレーナの父にして超人兵士。「キャプテン・アメリカのライバル」を名乗るが、現在は定職に就かず、自堕落な生活を過ごしている。『ブラック・ウィドウ』に登場。
USエージェント/ジョン・ウォーカー(ワイアット・ラッセル)……政府から二代目キャプテン・アメリカに任命された元陸軍兵士だが、とある過ちを犯しキャプテン・アメリカの資格剥奪と不名誉除隊を言い渡された。『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』に登場。
ゴースト/エイヴァ・スター(ハナ・ジョン=カーメン)……6歳の時に父親の実験中の事故に巻き込まれ、あらゆる物質をすり抜けてしまう状態になってしまったスパイ。身体は常に苦痛が襲い、誰とも触れ合えない孤独を抱えている。2018年の『アントマン&ワスプ』に登場。
タスクマスター/アントニア・ドレイコフ(オルガ・キュリレンコ)……髑髏のようなヘルメットで素顔を隠した、相手の動きや武器の使い方をコピーできる能力をもつスパイ。エレーナらとの戦いの中で洗脳が解け、自身の素性を知った。『ブラック・ウィドウ』に登場。
ボブ(ルイス・プルマン)……「サンダーボルツ*」の前に突然現れた謎の男。気弱そうな青年だが、その素性や正体は不明。」
各キャラクターのこれまでの活躍や苦悩は、後からでも該当の作品を見て知ってみるのもいいでしょう。
4:ダメダメなチームの奮闘やアクションに泣く!
今回の『サンダーボルツ*』のあらすじは、とあるミッションを遂行中のエレーナの目の前に、個性豊かなキャラクターが集まるも、モメるどころか殺し合いにまで発展してしまう……というもの。彼女らにはもともと正義感や使命感もなく、成り行きでチームになるというくらいで、その相性やまとまりは最悪。ちっとも「ヒーロー」なんかじゃない、人生がぜんぜんうまくいっていない、はっきり言ってダメな人たちでもあるのです。
そんなダメダメな彼女らが、どのようにチーム「サンダーボルツ*」となっていくのか、というのが大きな見どころ。それぞれに過去に傷があり、もっと言えば「虚無感」にも囚われている彼女らが、何のために、どのように連携をして戦うのか……その過程にアツくなれるのです。
また、MCUの中では、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の全3作も「銀河のはぐれもののダメな人たち」を描いた作品でしたが、今回はエレーナという女性主人公であることや、今回からの新キャラ「ボブ」にまつわるネタバレ厳禁の展開など、そちらとの差別化も十分にされています。

そして、言うまでもなく最大の見どころはアクション。本作は各キャラクター固有のアクションのアイデアや、それぞれの動きの「キレ」も良いために大興奮できるでしょう。
エレーナ役を演じたフローレンス・ピューの「やさぐれ具合」や、確かな信念を持つことが分かる感情表現も素晴らしいです。彼女は世界で2番目に高いビル「Merdeka 118 (ムルデカ・ワン・ワン・エイト)」で、実に678.9 mの高さからCGIやスタントダブルなしで飛び降りたというのですから驚きです。

5:エンドロール中&エンドロール後も必見!
MCUでは恒例となっていますが、この『サンダーボルツ*』でもエンドロールの途中と最後にもおまけがあるので、最後まで席に座っておくことを強くおすすめします。こちらも言うまでもなくネタバレ厳禁であり、ここで今後のMCUへの期待もますます高まることでしょう。
おまけ:絶賛している人でも「タスクマスター」の扱いは不評?
全方位的に優れたエンターテインメントである『サンダーボルツ*』ですが、ただ1点、本作を絶賛している人からも、残念ながら1点だけ不評を買ってしまっていることがあります。それは「タスクマスター」の扱いです。詳細は伏せておきますが、「あの人どうなったの?」「まさかあれで終わり?」というモヤモヤを、かなり長い時間引きずってしまいかねないという大問題があるのです。タスクマスターが好きという人にとっては特に「減点対象」になってしまうのは、もったいないと言わざるを得ません。
とはいえ、『ブラック・ウィドウ』ではあまりおいしい活躍がなかった、エレーナの父こと「レッド・ガーディアン」には重要な役割が与えられてたりもしますし、全体的な面白さと完成度からすれば、その減点も「100点満点マイナス1点」くらいに思えるほど、気にしすぎないほうがいいかもしれません。
何より、MCUはリアルタイムで追って、文句も含めて語り合うことも楽しいものです。ぜひとも、仲の良い友達と劇場へ足を運んで、(もちろん周りの人へのネタバレに気を付けて)その後の会話にも花を咲かせてみてください。
この記事の筆者:ヒナタカ プロフィール
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「マグミクス」「NiEW(ニュー)」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。
(文:ヒナタカ)