「人気アイドルとは思えない」厳しく指摘されたことも…LE SSERAFIM日本人メンバー・宮脇咲良(27)&カズハ(21)の“本当の評判”《在韓記者が解説》

2025年5月4日(日)18時10分 文春オンライン

 5月2日、韓国の5人組ガールズグループ「LE SSERAFIM(ルセラフィム)」がデビュー3周年を迎えた。3月には5枚目となるミニアルバム「HOT」でカムバック*し、複数の音楽番組で1位を獲得。4月からは世界10都市を回る初のワールドツアーを行っており、その人気ぶりが窺える。
*カムバック=新曲を出すこと。また、リリースに合わせてメディアに集中的に露出する期間


 LE SSERAFIMの日本での人気と認知度の高さは、群雄割拠のK-POPグループの中でもひときわ目立っている。3年連続でNHK紅白歌合戦に出場、今回のワールドツアーも日本は4都市で9公演という充実ぶりだ。


 その大きな要因といえるのが、宮脇咲良(韓国での活動名はサクラ。27歳)とカズハ(21歳)という日本人メンバーの活躍だろう。韓国の大衆文化評論家イ・テジュ氏は、2人への韓国での評価は大きく変わっていったと分析する。あらためて、その歩みを振り返る。(翻訳=金敬哲)



(左から)LE SSERAFIMのカズハ、宮脇咲良 ©AFP=時事


◇◇◇


 LE SSERAFIMのメンバーであるサクラ(宮脇咲良)は、10年以上の芸歴と多数のファンを持つ「王道アイドル」として、デビュー当初から大衆を虜にしていたといえるだろう。しかし、彼女の韓国での評価は、その経歴とともにドラマチックに変化してきた。


「人気アイドルとは思えない」とも言われたが…サクラへの評価が変わるまで


 サクラは2011年にHKT48に加入し、その後2回にわたって韓国でデビューを果たした。最初は2018年に開かれたオーディション「PRODUCE 48」への参加だった。この時、彼女のダンススキルや歌唱力は韓国のアイドルファンから厳しい指摘を受けた。


「7年間人気アイドルとして活動をしたとは思えないレベルだ」


「いくら日本で人気だとしても、韓国での活動は難しいだろう」


 しかし、サクラの「アイドルとしての成長」にフォーカスが当たり始めると、状況は一変した。韓国の練習生にも引けを取らないパフォーマンスを見せ、最終順位2位という好成績でデビューを掴み取ったのだ。


 2018年10月、12人組グループの「IZ*ONE」として2度目のデビューを果たしたサクラは、K-POPアイドルとして大きな飛躍を遂げた。2年半という期間限定の活動ではあったものの、韓国と日本の両国でヒット曲を連発するほど大きな注目と人気を誇った。


「ペクポク」型キャラクターとして親しまれる


 IZ*ONEの活動終了後、サクラはHKT48を卒業し、BTSなどが所属する韓国の芸能事務所・HYBEに移籍する。これは、サクラにとっても、HYBEにとっても大きな冒険だった。一般の韓国の大衆には日本人メンバーに対する心理的な距離が、依然として残っていたからだ。


韓国で強い批判を受けたSNS投稿


 過去にはサクラのSNSの投稿が物議を醸したこともあった。韓国人にとって非常にセンシティブな事柄である8月15日(※日本の植民地支配からの解放を記念する「光復節」)に、「終戦記念日」とつづったことで、一部の韓国国民から強い批判を受けることとなってしまったのだ。


 韓国の大手芸能事務所は、練習生1人当たり年間で1億ウォン以上の育成費用がかかると言われる。まだ韓国内に残る反感を押し切ってまで、それほどの育成費用を投資する価値があるのかどうか。それを証明することが、サクラが直面したもう一つの壁だった。


 しかし、LE SSERAFIMの人気が高まるにつれ、サクラと韓国の大衆の間にあった心理的なハードルも少しずつ低くなっていった。ここには彼女がバラエティ番組でみせる活躍の影響も大きいだろう。


 サクラは、「ぶりっ子が多い」という日本のアイドルに対する韓国人の偏見を見事に覆し、「팩폭(ペクポク)」(和訳は「ファクト暴力」=ファクトだけをストレートに話すことで痛快さを与えるという意味の造語。毒舌とは意味が少し違う)型キャラクターとして親しまれている。


 たとえば、韓国で人気のYouTubeチャンネル「ピシク大学」の番組「The Psick Show」に出演した際、サクラは共演者のうち1人だけがずっとしゃべり続けているのをみて、「気になることがあります。給料はみなさん同じ金額を受け取っているんですか? (それにしては1人だけに)負担が大きすぎませんか?」とストレートに発言し、笑いを誘った。飾らないサクラの姿は、視聴者の間でも「面白い!」と評判になったのだ。


カズハの驚異的な成長


 一方、LE SSERAFIMのもう一人の日本人メンバー、カズハの成長ぶりも目覚ましい。カズハは、バレエ留学中の2021年に、LE SSERAFIMメンバー選出のためのオーディションをオランダからオンラインで受けて合格した。


 3歳からクラシックバレエを習い、デビュー直前までオランダの名門バレエスクールに留学していたというカズハのプロフィールは、デビュー前から話題をさらった。韓国において、バレエは韓国舞踊と並んで高貴なイメージを持つ舞踊である。アイドル養成所ではないところでパフォーマンスを磨いたという彼女の経歴は、デビュー前から「従来のK-POPアイドルとは何かが違う」ことを予感させた。


「華やかなアイドル」のサクラと比べると…


 しかし、K-POPアイドルとしてデビューするためには「練習生」として事務所に所属し、少なくとも1年以上、レッスンを重ねるのが通常だ。カズハがデビューまでに練習できた期間は、わずか半年余り。5、6年以上練習生を続けても、デビューメンバーに選ばれずに事務所を辞めてしまう人が数え切れないほどいることを考えると、彼女のデビューは最初から破格だったと言えよう。


 実際、カズハはデビュー前から「韓国人が好きな顔」として大きな反響を得ていた。「国民の初恋」との異名を持つほど韓国で絶大な人気を誇る、元miss Aで女優のぺ・スジに「似ている」という声も多く聞かれる。


 「キラキラ輝く華やかなアイドル」というアイドルのパブリックイメージにぴったりなサクラに対し、カズハは「清楚でミステリアスな俳優型アイドル」ということで意見が一致する。


 白くてきれいな肌と、細く長い末広の二重が特徴の意味ありげな瞳から、そのようなイメージが持たれるという解釈だ。


 しかし、入れ替わりの激しいアイドル界では、ビジュアルの美しさだけで人気を維持することはできない。アイドルとしての人間的な魅力を感じさせることができなければ、すぐに飽きられ、新しいグループに話題をさらわれてしまうからだ。この点は、多くのアイドルたちが課題として捉えている部分でもある。


大阪出身、「面白い」というギャップで人気に


 そんな中、カズハが高い人気を誇っているのは、彼女の持つ「ギャップ」が大きな理由となるだろう。


 練習生の期間を持たず、韓国での生活もほとんど送れなかった彼女は韓国語が得意ではまったくなかった。しかし、同じ日本人であり「韓国語の先輩」であるサクラをはじめとしたメンバーたちの熱心なサポートのおかげで、驚くべき速さで韓国語を習得していった。


 韓国語の上達とともにメディアでのカズハの口数は増え、一見クールにみえるイメージの裏に隠されていた「面白さ」が目立ち始めると、韓国のファンが一気に増えた。


 サクラもそうだが、お笑いコンビのコメディ番組に出演した際には笑いのセンスをみせて、埋もれない存在感を発揮した。外見からのイメージとは異なる「ギャグ」にも果敢に挑戦し、コメディエンヌ的な立ち回りをごく自然に発揮したのだ。


 カズハの出身地が大阪であることも、韓国ファンにとってはアピールポイントだった。TWICEのサナやBilllieのツキなど、韓国で活躍する日本人アイドルを多く輩出した地域でもあるが、「大阪の人々に『パン』と銃を撃つ真似をすれば、みんな死んだふりをしてくれる」といった言説が浸透しているほど、韓国人にとって大阪は、「面白さ」の象徴として人気のある都市だ。


 そんな大阪出身者に対して韓国人が持っていたユーモラスなイメージを、カズハは裏切らなかったのだろう。その証拠に、一部の韓国ファンは彼女に「赤ちゃん大阪コメディエンヌ」というニックネームをつけた。


 ドラマチックな経歴とミステリアスな外見、そしてしゃべるとギャップのある美少女。そんな、韓国のファンが愛してやまない要素をカズハはすべて持っているのだ。


「『私の人生には常にバレエがある』と信じていた。しかし…」


 韓国メディアの取材に、彼女はデビューについてこう振り返っている。


「3歳からトウシューズを履いて、『私の人生には常にバレエがある』と信じていた。しかし、次第に『今後の私の人生にもバレエがあるだろうか?』という疑問を抱き始めた。そして、K-POPオーディションという人生の分かれ道を前に、果敢に『やってみよう!』と飛び込んだのだ」


 合格を知らせる電話を受ける時さえも「詐欺ではないか」と思ったというが、傍目から見ていても彼女のデビューまでの道のりは異例だった。


 デビュー後の彼女の姿のみを見ている人であれば「練習生期間もなくデビューし、大した努力もなしに人気を得た」と軽く言うかもしれない。しかし、カズハはこの道が決して順調ではなかったと反論する。2024年2月に「EASY」リリースした際には「私たちも見えないところでたくさん努力して悩んでいるという、舞台の裏のLE SSERAFIMの血、汗、涙を表現したアルバムです」と強い意思を示したのだった。


デビュー4年目を迎えるLE SSERAFIM


 LE SSERAFIMを「人生最後のアイドルグループ」と語り、たゆまぬ努力で逆風を追い風に変えてみせたサクラと、電光石火のデビューを果たし、著しい成長と多彩な魅力を見せるカズハ。 彼女たちの今後の活躍は、K-POP界にどのような新しい風を吹き込むのか。デビュー4年目を迎えるLE SSERAFIMはこれからどんな表情を見せるのか。楽しみに待ちたい。


(イ・テジュ,金 敬哲)

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