『あんぱん』蘭子と豪の“最後の夜”に制作陣も涙 河合優実と細田佳央太の演技も絶賛「この2人だから…」
2025年5月12日(月)8時15分 マイナビニュース
●細田佳央太と豪がリンク「真摯で真面目でストイック」
女優の今田美桜が主演を務める連続テレビ小説『あんぱん』(NHK総合 毎週月〜土曜8:00〜ほか ※土曜は1週間の振り返り)。8日に放送された第29回では、朝田家で豪(細田佳央太)の壮行会が盛大に行われ、そして、蘭子(河合優実)と豪が互いの思いを伝え、出征前、最後の夜を2人で過ごすという展開が描かれた。制作統括の倉崎憲氏に、蘭子と豪のストーリーがどのように生まれたのか、また演じた河合と細田の魅力について話を聞いた。
112作目の朝ドラとなる『あんぱん』は、アンパンマンを生み出したやなせたかしさんと妻・暢さん夫婦をモデルに、何者でもなかった2人があらゆる荒波を乗り越え、“逆転しない正義”を体現した『アンパンマン』にたどり着くまでを描く愛と勇気の物語。小松暢さんがモデルのヒロイン・朝田のぶ役を今田美桜、やなせたかしさんがモデルの柳井嵩を北村匠海が演じ、脚本は中園ミホ氏が手掛けている。
第29回で、蘭子が「きっと戻ってきてよ」と豪に伝えると、豪は「無事戻ってきたら、わしの嫁になってください」とプロポーズ。蘭子は「うち、おまさんのこと、うんと好きや」と答え、羽多子(江口のりこ)に送り出されて、その晩を2人で過ごした。
細田はもともと、嵩の弟・千尋役のオーディションに参加していたが、豪役にぴったりだと思ってオファーしたと倉崎氏は明かす。
「柳井千尋役のオーディションには、次世代のエースを担う方々にお集まりいただきました。細田さんの芝居や佇まいを見た時に、絶対に豪にハマると思ったんです。豪は職人気質で無口で“釜じい”(釜次/吉田鋼太郎)をリスペクトしていて、真面目な男で、細田さんとお会いしたときに寡黙な男が似合うと直感的に思いました」
そして、「彼はすでに多方面で活躍されていて、映画主演など素晴らしい作品を数多くやっていらっしゃるので、果たしてセリフが少ない役で出ていただけるだろうか」と断られる可能性も考えていたと打ち明けつつ、「とにかく真摯で真面目でストイックという細田さん自身の人間性と豪のキャラクターがリンクするものがあったと思いますし、今までの映像を見ても、豪が細田さんで非常によかったなと感じております」と完成した映像を見ても適役だったと確信しているという。
視聴者の涙をそそった蘭子と豪が一緒に夜を過ごすシーンについては、「我々も試写段階から号泣していました」と明かす。
「あのシーンに限らずですが、もう二度と戻ってこない時間をどう生きるかというのは、現代にも通ずるテーマだなと思っていて、その象徴の一つがあのシーンだなと思っています。豪が出征しないといけない。帰ってこられるかどうかわからない。2人にとって一旦、最後の時間なので、チームとしても大事なシーンと位置付けていました」
試写で見たときはとても手応えを感じたという。
「細田さんと河合優実さんの芝居を見た時に、この2人だからできた距離感というか、出来上がったシーンだなと思っていて、彼らの佇まいや表情を含め、仕草一つ一つが、その瞬間しかないあの時間を、役を通して生きているんだなというのが本当に伝わってきたので、全1億2000万人に見ていただきたいシーンになりました」
●河合優実の演技ににじみ出ていた蘭子の豪への恋心
豪は史実にはないオリジナルキャラクター。倉崎氏は「釜じいに弟子はいるよねというところから始まって、戦前の職人ですから、無口で寡黙で、でも男気あるというキャラクターがいいと。そして、常に朝田家にいるけど、口出しせずに、でも全体を見守っているようなキャラクターに」と豪という登場人物が生まれた経緯も説明し、「戦争が近づいてきて、豪ぐらいの世代だとそろそろ出征するよねという話で、こういうストーリーにしました」と語る。
蘭子については、「3姉妹の中では、自分が一歩引いて、自分よりも人の幸せをどちらかというと願っているタイプ」だと言い、豪への恋心をあからさまに表に出すことはなかったものの、河合の演技によってにじみ出るものがあったと振り返る。
「河合優実さんは目線一つで人の心を、気になる人だなと思わせる力があるので、セリフがなかったとしても、蘭子が豪をちょっと見るだけで、すごく感じるものがありますよね。パン食い競走の受付のときもそうだし、釜じいが冗談でのぶと豪が結婚したらどうだという話をした時の目線一つとっても、河合さんでしか出せない雰囲気があります」
河合はヒロインオーディションに参加しており、そこでの演技や佇まいなどから次女・蘭子役としてオファー。オーディションのときから「只者ではない」感じが出ていたという。そして、「表には出ない蘭子だからこそ豪に惹かれるのかなという議論もチームでしていて。なので自然と、蘭子と豪をそういう関係にしたらどうかということになりました」と語っていた。
(C)NHK