「我ら宇宙の塵」英語版、初のロンドン公演…演出・美術の小沢道成「再演というよりリニューアル」
2025年5月22日(木)15時48分 読売新聞
「10代のころ、父に連れられて行ったロンドンで『キャッツ』や『オペラ座の怪人』を見た。その記憶が、今につながっていると思う」と語る=早坂洋祐撮影
脚本・演出・美術を担当した舞台「我ら宇宙の
「我ら——」は、父を捜しに出たまま帰らない息子の行方を追う母が、途中で様々な人たちと出会い、息子の中にある亡き父の記憶をたどり直していくファンタジー。2023年の初演では小沢が自らパペットを操って息子を演じ、半円状に舞台を取り囲むLEDディスプレーには手描きアニメーションや美しい星空などを映して、観客を物語世界に引き込んだ。
初の海外公演とあって劇場探しには時間がかかった。ある劇場では「社会的テーマを扱う作品をセレクトしているが、この作品にはそこまで社会的なものはない」と言われた。
「僕としては、社会的なコミュニケーションの物語だと思っている」。その思いを受け止めてくれたのが、今回、上演が決まったパーク・シアターだった。「『本当に面白い。イギリスの方たちの心にも届くだろう』と言ってくださった。劇場に入った瞬間、あっ、ここだと感じ、その場で舞台美術のラフスケッチを描いて、これならいけそうな気がするんですと伝えた」
約200の客席が舞台を三方から囲む構造は、東京の初演時と異なるが、「キャストも変わり、パペットも生まれ変わる。舞台美術も新しいアイデアでやった方がいいと思った」。
今回、小沢は出演せず、演出と美術を担当する。すでに現地で稽古に入っているが、5人の俳優と現地スタッフに頼もしさを感じている。「『5人でパペットを歩かせてみて』と言ったら、知らない同士なのに息を合わせて立ち上がらせた。すごいなあと思った」。さらに、「パペット・ディレクター」という専門スタッフも加わった。「プロが分担してくれるのはすごく心強い。英国のパペット文化は日本の一歩先を行っているなと感じる」
1985年生まれ。京都出身。16歳で俳優を志し、小劇場にはまって鴻上尚史主宰の「虚構の劇団」に参加した。2022年の解散まで全公演に出演する一方、「役者として、もっと成長したい」と13年から演劇ユニット「EPOCH MAN」を主宰する。出演のほか脚本・演出・美術・企画制作を手がけ、「我ら——」も、そこから生まれた。
目指すのは「楽しいと思えるものと、深く考えさせることが両立できる作品」という。「どこかにいる、生きづらいと感じている人が抱えるものを、僕がもっと掘り下げて徹底的に考えることに、今は興味があります」
ロンドン公演は6月6日〜7月5日。詳細はホームページ。