26歳で糖尿病を発症、合併症で視力を失うも…モノマネ芸人・コージー冨田が舞台に立ち続ける理由

2025年5月24日(土)11時30分 ABEMA TIMES

 タモリ笑福亭鶴瓶など、100を超えるレパートリーを持つモノマネ芸人のコージー冨田(58)。1995年のデビュー以来、その観察眼で多くのモノマネを披露し、見る人を笑わせてきた。しかし、20代で患った糖尿病が悪化の一途をたどり、現在は目がほとんど見えていない。

【映像】客が見えない中、舞台に立つコージー冨田

 それでもなお舞台に立ち続ける理由とは?『ABEMA エンタメ』の密着企画「NO MAKE」がコージーの胸の内に迫る。

26歳で糖尿病を発症、52歳で目に異変「急にテレビが見えづらくなった」

 取材の日、30年以上出演している「そっくり館キサラ」で、モノマネショーを行うコージー。付き人の後輩芸人に支えられながら楽屋に入った。

——今は杖をつかないと歩けない状態なんですか?

コージー:足が悪いんじゃなくて目が見えないので怖いんですよね杖がないと。だから確認しながら歩いている感じですね。基本的に歩く時は肩を借りて歩いたりとか、ものを書くこととかを代わりにしてもらったり、爪を切ってもらったり、鼻毛を切ってもらったりとか、そういうことをやってもらいます。

——足の感覚は?

コージー:もうあんまりないですね 神経障害で。海に入ったら全然冷たさを感じなかったの。この辺(膝下)まで。神経を感じないんだなって思いました。

 いちじるしい視力の低下や神経障害は「糖尿病」の合併症によるもの。コージーが糖尿病と診断されたのは26歳の時だった。

コージー:暴飲暴食が原因だと思っていますよ。喉が渇くのでビールがどんどん飲めるんですよ。基本的にこういう仕事ですから。終わった後に打ち上げっていう形で、ほぼ毎日(居酒屋に)行ってましたね。(医師に)糖尿なんだからダメだよと言われてましたけど、当時は、やっぱりやめられなかったですね。

 すると52歳の時、突然目に異変が——

コージー:急にテレビが見えづらくなったっていう感じでしたかね。だから白い中にいるんです、みなさんが。真っ白な霧の中にいるみたいな感じですね。(自身の手を顔に近づけて…)手相は見えないです。女優ライトに当たっているみたいな感じで(眩しくて)全部色が飛んでますから見えないです。でも手に指があるのは見えます。

 現在のコージーの視力は、健常者が半透明のビニール袋越しに対象物を見るようなものだそうだ。

楽屋でインスリン注射、付き人がお客さんをチェック…糖尿病と闘うコージー冨田のステージ裏

 開演2時間前、リハーサル。ステージ上には、コージー用の巨大な立ち位置マーク、いわゆる、バミリが貼ってあった。

コージー:僕の場合、昔はリハなんてやらなかった。リハなんてやらなくても出来ますから。だけど今はやらないと どこが真ん中なのか、どこは袖なのか、どこに階段があるのかとかって全部確認して。『そっくり館キサラ』は30年出演していますからわかるんだけど、それでも一応やっておかないと。

——お客さんの反応はどう感じ取りますか?

コージー:僕より前にやっている人のウケを聞いています。この人のこれウケてるなとか、こいつのこれがウケてるなら大した客じゃないなとかね。(タモリのモノマネで)『髪切った?』ってやるんですけど基本的には女性にやるんで、どこに女性がいるか(スタッフに)聞いてね。見えてないけど『髪切った?』って言うんですよ。見てもらわないと全然誰もいないところで『髪切った?』ってやってましたから。透明人間に髪切ったって。リハやればちゃんと出来ますから。暗転の中、袖に帰っていくのは怖いです。

 視力が低下してからはモノマネの新たなレパートリーを増やすことが難しくなったそうだ。

コージー:2019年から出てきた俳優の顔がわかんないとかね。それまではわかるんですよ。例えば広瀬すずとか、わかりますよもちろん。伊藤沙莉もわかる。浜辺美波はちょっとわかんないとか。そこからもうその時は。もう見えてなかったんで。

 そんなコージーの付き人を2年前からしているのがどんまいみどりだ。

どんまいみどり:実際にモノマネを教えていただいてるんですよ。一緒にいるとアドバイスをもらったりとか芸を学ぶことができるというか。付き人でいかせてもらうんですけど。その付き人だけじゃなくて、芸の勉強もしています。

コージー:どんまいみどりさんにはお世話になっています。

 開演30分前、コージーは食事をとる。

コージー:今日はカレーなんでアレですけど、(仕切りのついた)9つぐらいの部屋に分かれた弁当があるでしょ。ああいうのはもうここにご飯があって、揚げ物があってって全部教えてもらわないと(わからない)。(インスリン)注射出して、注射。

——注射打つタイミングは決まっている?

コージー:食べる前です。この(食事の)量を見てこのくらいとか量を決める。

——カレーは食べやすいほう?

コージー:そうですね、スプーンだからね。みんなはまかないがいろいろある。(見えやすいから)俺はカレーにしてもらってる。でもこぼすのはね、見えないってよりは俺の行儀が悪いだけだと思うんだよね。

 本番を控え、コージーが口にしたのは、お客さんへの思いだった。

コージー:(客は)心配になるじゃない。何をやっても。大丈夫かなとか、倒れないかなとかって。それじゃ笑えないからね。だからモノマネ芸だけ見てくれればいい。俺としては笑ってほしいわけよ、エピソード全て。だけど大変だなとか、笑っちゃいけないだろうなって思ってるんじゃないかと思って。だから全然笑っていいですよっていう。

 開演5分前。開演直前になり付き人のどんまいが最前列のお客さんをチェック。「テージ左から夫婦、夫婦、女性2名様、男性2名様」と、コージーがいじりやすいように状況を伝えている。

「病気を理由に辞めたくない」コージー冨田が舞台に立ち続ける理由

 5人の芸人が出演するモノマネショー。コージーは、冒頭に登場し場を盛り上げ、ショーの大トリも務める。

コージー:お世話になっていて去年お亡くなりになった方が西田敏行さんで、西田さんは僕が糖尿病って知っていて一緒に飲んでいる時にインスリンの注射を打ったんですよ。そうしたら西田さんが『俺もいろんな人と酒飲んだけど酒飲みながら注射打つ人初めて見たよ』って。だから飲酒リンっていうのかな?

 ショーの最後は、ザ・ワイルドワンズ「思い出の渚」に乗せてのモノマネメドレーだ。30分近くのステージで24人のモノマネを披露した。

——いかがでしたか?

コージー:とてもいいお客さんで盛り上がったと思います。見えてないですけど、見えてる風に。どうでした?見えてないように見えた?

——見えてるように見えました。

コージー:でも見えてないんですよ。あんまり心配をかけないようにやってはいます。それがもう最後の意地というか、まだできるよっていうね。

 お客さんのリアクションが見えなくても、意地で舞台に立ち続けるというコージー。実は、リハーサルの時、本番では披露しなかった、桑田佳祐の「明日晴れるかな」を歌っていた——自らを鼓舞しているかのように。

 最後に、コージーにモノマネを続ける理由を聞いた。

コージー:ん〜不思議なものでみなさんの拍手や笑い声を聞くと元気が出るんですよね。ポジティブに考えてもらいたいというか、病気になっても元気に頑張っているやつもいますよっていうことを言いたい。病気を理由に辞めたくないっていうのはあります。

——コージーさんにとってモノマネって何ですか?

コージー:もう生きがいです。モノマネというより。モノマネショーが生きがいですね。よく「舞台の上で死にたい」って言うじゃないですか。あの気持ちがよくわかりますね。今になって。

(『ABEMA NEWS』より)

ABEMA TIMES

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