『あんぱん』話題のタイトルバックでCGの街を駆けぬけるのは「のぶ」ではなくて「今田美桜」制作統括「視聴者の代表として…」

2025年5月24日(土)12時0分 婦人公論.jp


(『あんぱん』/(c)NHK) 

俳優の今田美桜さんがヒロインを務める連続テレビ小説『あんぱん』(NHK総合/毎週月曜〜土曜8時ほか)。RADWIMPSが歌う主題歌「賜物」に合わせて流れるタイトルバックが話題になっている。今田さんが白い洋服姿でCGの街を光に導かれるように駆け抜けていく近未来的な映像だ。制作統括の倉崎憲さんにタイトルバックに込めた思いを聞いた。

朝ドラ通算112作目となる『あんぱん』は、子どもたちの人気者〈アンパンマン〉を生み出したやなせたかしと、妻・暢の夫婦をモデルとした物語。〈朝田のぶ〉を今田美桜さん、<柳井嵩>を北村匠海さんが演じる。2人があらゆる荒波を乗り越え、“逆転しない正義”を体現した『アンパンマン』にたどり着くまでを描く。

タイトルバックの映像は、ドラマの世界感が表現されたもの。朝ドラでは通常、毎週月曜に90秒バージョンが、火〜金曜には70秒バージョンが放送されている。

今作は、コンペにより映像ディレクターの涌井嶺さんの案が採用された。今田さんが戦前から現代、そして未来へと変わりゆくCGの街を光に導かれるように走っていく。たどりついた場所で今田さんが空を見上げると、光の線が像を結び、「アンパンマン」のシルエットが現れる—という内容だ。

倉崎さんは、「戦前から戦後の激動の時代をヒロインがかけめぐるという涌井さんの案が非常に良いとチームで話をしたうえでお願いしました」と説明する。

今田美桜は案内役


放送当初から話題になったのが、今田さんがのぶ役の衣装ではないことだった。「物語は昭和2年から始まって、最終的にどこまで描くかは台本もまだなのでわかりませんが、アンパンマンが生まれたときまでは少なくとも描きます」と話す。物語のなかで長い時が流れるため、戦前の衣装にするか戦後の衣装にするか議論にもなった結果、「のぶではなく今田美桜さんとして出演してもらう」ことになった。

「視聴者のみなさんの代表として、のぶと嵩が生み出した世界の案内役としても、現代を生きる今田さんにタイトルバックに出ていただいています」と語る。

タイトルバックでは、道に穴があけば今田さんは光の線の上を歩く。今田さんが乗った紙飛行機の横を光が並走するシーンもあった。光の線は、のぶの夫でアンパンマンを生み出した嵩との関係を表現しているようにも見える。

倉崎さんは、「今田さんが線に導かれているような、導いているような、どっちにも捉えられます。それは嵩との関係性も表している。生きているとしんどいときもつらいときもいろいろあるけれど、その線を追い続けたからこそ最後に登場するアンパンマン(のシルエット)に結びついていくというのを示したかった。のぶのさまざまな経験すべてが数十年の時を経てアンパンマンや嵩のいろんな作品につながっていくということを表現したかった」と話す。

ドラマの進行とともに感じ方も変わって


近未来的な映像と昭和から始まる物語の組み合わせに「斬新」「朝ドラらしくない」という声もある一方で、今田さんが進む空間の色合いや雰囲気から、やなせさんが創刊した『詩とメルヘン』の表紙を思い出す人も。SNSでは「やなせさんの愛した『詩とメルヘン』の世界観と一致して素晴らしい」「やなせたかしの世界観の再解釈」という声があった。

実は、終盤のアンパンマンのシルエット以外にも、漫画のコマ割りの中を今田さんが進んだり、やなせさんの絵本『アンパンマンとえんぴつじま』を想起させる巨大なえんぴつが登場したりと、やなせさんの人生を感じさせる作りになっているのだ。

朝ドラの放送は半年間に及ぶ。「例えば第1週で見た時と第10週で見た時、最終週で見た時では、受け取り手の感じ方が変わっていけばいいと思っています。主題歌もタイトルバックの映像も例年の朝ドラとは違う表現で挑戦をしているので、それに対して朝ドラっぽくないという声が上がるのは当然。全26週見終わった後に視聴者の皆さまにどう捉えていただけるかが大事だと考えています」

主題歌に込めたテーマは


RADWIMPSの約1年9カ月ぶりの新曲となる主題歌の『賜物』にも物語のテーマが込められている。

倉崎さんは「RADWIMPSさんにはやなせさん関連の資料や台本などあらゆる資料を読んでいただきました」と明かす。その中で、何度も議論を重ねたという。

「世の中のみなさんが知っているやなせたかしさんと暢さんを描くには、一面的なものではなく、相当深いところにいかないとダメだという共通認識がありました」と語る。

「あくまで主人公はのぶ。だからこそ、のぶの疾走感や生命力、突破力も大事。これまでの朝ドラのイメージにとらわれずに挑戦してほしい」とも伝え、最終的に生まれたのが『賜物』だった。

タイトルバックで使われた歌詞は、苦難の多い人生をそれでも生き抜く覚悟と限りある命の輝きに触れたものになっている。

『あんぱん』のテーマの一つは「一度きりの人生、平等に与えられた命をどう生きるのか」という普遍的なものだという。ドラマは序盤ながら、すでにのぶも嵩も父親を失い、これから物語は戦争の影が色濃くなっていく。倉崎さんは「『賜物』とは何かいろんな解釈がありますが一つは、“命”のことだと思っています。朝ドラで流れる歌詞は、曲全体のほんの一部。すべての歌詞も読んでいただきたいなと思っています」と語る。

今田「明るさと悲しみ感じられる」


斬新なタイトルバックは、3月に行われた第1週試写会でも話題になっていた。

会見に参加した今田さんは、「撮影は全部グリーンバックだったので、『ここで穴があきます』みたいなお言葉をいただきながら撮影していたんですが、正直想像がついていなかった」と明かす。完成した映像を見たときには「自分が想像していた以上に素晴らしかった。明るさと悲しみと喜びと、そういうのがいろいろ感じられるタイトルバックになっているんじゃないかな」と語った。

北村さんは、『あんぱん』の舞台が高知から東京と街が移り変わり、時代が進んでいくことを踏まえ、タイトルバックについて自分なりの解釈を披露。

「最初はすごく現代的なものが入ってきたなって思いました。そこにいるのは確かにのぶでもなく、かといって100%今田美桜かっていうとそうじゃない存在が歩いていた。時代とともにCGで街の風景とかもどんどん移り変わっていく。その中を令和に生きる今のこの今田美桜という女優が何か演じている様を見ているようで、観ているとだんだん泣けてくるんですよ」と打ち明けた。RADWIMPSの主題歌にも言及し、「変拍子になったり、ピアノだけになったり。かといってものすごく激しいところもある。それこそ人生はあったかいだけじゃ終わらないし、悲しいこともあるし、そういう心の機微にすごい寄り添ってくれる」と絶賛した。

婦人公論.jp

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