小学2年のとき通知表に「体が大きいのによく泣きます」と書かれた……そのジェーン・スーさんが初めて翻訳した絵本とは
2025年5月26日(月)15時20分 読売新聞
体の大きい子 実体験もとに
『わたしはBIG! ありのままで、かんぺき』を翻訳 ジェーン・スーさん
『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』をはじめ、鋭くも温かいエッセーで知られるコラムニストが、初めて絵本の翻訳を手がけた。
原作は、米国の絵本作家ワシュティ・ハリソンさんの『BIG』。ほかの子より体の大きい女の子が主人公の物語だ。黒人女性であるハリソンさんの実体験をもとにした同作は、米国の権威ある絵本賞「コルデコット賞」をはじめ、数々の賞に輝いた。
翻訳を引き受けたのは、自身も体が大きい子どもで、「幼少期からいろいろ思うことがあった」からだという。それをパーソナリティーを務めるラジオ番組や著書で明かしていたため、「訳者も実体験がある人を」と考えた編集者から声をかけられた。あとがきでは、小学2年生のとき、好きだった先生から通知表に「体が大きいのによく泣きます」と書かれた思い出をつづった。「傷ついたというよりは、何か違和感として残っていたんだと思います」
主人公の女の子は、子どもらしいふるまいをしたら周囲から「大きいのに」と白い目で見られたり、かわいらしい服は似合わないと決めつけられたりして、次第に傷ついていく。翻訳は、「読み聞かせしても、子どもが読んでも分かるように、作者が伝えたいことを過不足なく伝えるにはどうしたらよいのか」を考えながら進めた。
傷ついた女の子が自分に向けられた言葉と向き合い、自らの力で立ち上がる最後の場面は、原作では「she was good」となっていたが、考えた末、こう訳した。<ありのままでかんぺき>
刊行後、子どもだけでなく大人からも反響が寄せられている。「体が大きい子もそうじゃない子も、他者に思いをはせるきっかけになると思う。大人も、読むと癒やされ、許されるような気持ちになれる絵本だと思います」。柔らかくほほ笑んだ。(ポプラ社、2035円)金巻有美