JAL元CAが伝える“選ばれる人”の条件 “アイスコーヒー事件”に見る「仕事ができる人」の本質
2025年5月28日(水)14時4分 オリコン
香山万由理氏 著書『仕事ができる人は、「人」のどこを見ているのか』(光文社)
本書の核心は、「人あたりの良さは才能ではなく技術である」という視点。丁寧な挨拶、態度、言葉づかいなど、それらを組み合わせた“人間力”が信頼を生み、結果としてビジネスの成果にもつながるという。
なかでも印象的なのが、著者が新人CA時代に体験した“アイスコーヒー事件”。飲み物のサービス中に手が滑り、あろうことかアイスコーヒーを男性客の頭の上からこぼしてしまうという大失態を犯してしまった。ひたすらお詫びの言葉を繰り返す著者。ところが、その男性は全身ずぶ濡れになりながらも、やさしくこう答えたという。
「大丈夫だよ。誰でも一生懸命仕事をしていると、ときにミスを犯すこともあるよ。だから全く気にすることはないよ。私が飛行機に乗ってきたとき、あなたは“いらっしゃいませ、こんにちは”と、にこやかに迎えてくれたよね。荷物を棚に入れようとしたとき、すぐに手伝いにきてくれたよね。新聞を頼んだら、“他の新聞もよろしければどうぞ“と持ってきて、“今日はお仕事ですか?“と声をかけてくれたよね。他のお客さまに対しても、同じように礼儀正しく親切に接客していた。あなたがふだん、どんな気持ちで、どんな心の在り方でサービスをしているのか、見ていればよくわかる。あなたがどんな人物なのか、見ていれば十分伝わるのだから、謝ることなんてないよ」後で名刺をもらうと、その男性は、ある超一流企業の経営者だった。
接客中のミスで客に飲み物をこぼしてしまった際、相手の男性が「あなたの普段の接し方を見れば、どんな人物か分かる」と穏やかに声をかけてくれたというエピソードには、「人は一瞬の言動より“日頃の態度”を見る」という深いメッセージが込められている。
また、香山氏が考案した「あたしひみこ」(挨拶・態度・表情・身だしなみ・言葉づかい)のフレームワークを通じて、人あたりの基本を体系化。頼み方、断り方、視線の使い方など、どんな職種でも活かせる“対人スキル”が実例とともに紹介されている。
現在、香山は研修会社「ファーストクラスアカデミー」の代表として、企業や医療機関などで2万人以上に指導。そのリピート率は97%超。さらに高野山真言宗の僧侶という異色の経歴も持ち、仏教哲学に基づいた“心の整え方”も指導に取り入れている。