ガザ戦闘再開から1か月…刑務所に逃げ込む住民「コンクリートの壁があり、テントよりまし」

2025年4月18日(金)21時32分 読売新聞

ガザ南部ハンユニスにあるアスダー刑務所=読売通信員撮影

 【エルサレム=福島利之】戦闘再開から18日で1か月となったパレスチナ自治区ガザでは、イスラエル軍が各地で避難命令を出しているが、住民は避難先を探すのが困難となっている。そんな中、住民が意外な場所に逃げ込んでいる。かつて人々の自由を奪う場所だった刑務所だ。

 ガザ南部ハンユニスの海岸沿いマワシ地区にあるアスダー中央刑務所。4万平方メートルの敷地に4階建ての建物があり、350以上の独房を備える同刑務所では今、500家族の約3000人が避難生活を送る。

 「最初は刑務所で暮らす現実を受け入れるのは難しかったが、ここにはコンクリートの壁がある。テントよりましだ」

 ガザ最南部ラファから昨年5月にこの刑務所に避難し、家族9人で3メートル四方の独房で暮らすマフムード・ファトヒさん(40)は、本紙通信員に自嘲気味に話した。一家は避難の際、テントも持っておらず、道端で夜を過ごしていたところ、通りすがりの人に「刑務所に行ったらどうか」と言われ、たどり着いた。

 刑務所はかつて、イスラム主義組織ハマスの警察が運営し、麻薬中毒者ら犯罪者を収容してきたが、ガザでの戦闘が一昨年10月に始まると、囚人を釈放し、施設も放棄された。

 ただ、ハマスの施設だったため、イスラエル軍にいつ攻撃されるか分からない。不衛生で、避難民の間では腸の感染症や疥癬かいせんも広がる。住民同士で食料の奪い合いも毎日のように起きる。

 それでも避難民たちは、刑務所に学校やモスク(イスラム教礼拝所)を開設し、日常生活を送れるよう協力している。今では、八百屋や理容室、薬局もできた。

 ラファ出身のアシュラフ・カッサースさん(45)は昨年5月、7度目の避難の末に刑務所にたどり着き、鉄の扉のある独房に家族11人で暮らす。カッサースさんは「鉄の扉があるから、爆弾を防げるかもしれない。今では、冬の寒さや夏の暑さから守ってくれる避難所だと思うようになってきた」と話した。

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