ウクライナ軍の北朝鮮兵捕虜、本国に送還で「処刑」も

2025年4月29日(火)5時33分 デイリーNKジャパン

北朝鮮が、ウクライナ軍が一時占領したロシア西部・クルスク地域への派兵を公式に認めたことで、ウクライナ軍が確保した北朝鮮兵捕虜の韓国移送を危ぶむ声が出ている。北朝鮮が正式な交戦国の地位認定を要求し、捕虜送還に積極的に乗り出す可能性があるためだ。


ウクライナ軍の保護下で、すでに韓国行きの意思を明らかにしている捕虜が北朝鮮に送還されれば、処刑を含め深刻な人権侵害が発生しかねないとの懸念もある。


韓国紙・文化日報は28日、外交関係者の話として、「ロシアと北朝鮮が北朝鮮軍派兵を公式認定したのを契機に、ウクライナ軍が確保した北朝鮮軍の韓国移送に支障が生じかねないという分析が出ている」と報じた。ウクライナ政府は1月、北朝鮮兵の捕虜2人を確保したと明らかにしており、韓国政府は彼らの韓国移送に向けウクライナ政府と意思疎通を図ってきた経緯がある。


戦争捕虜の待遇に対する国際条約であるジュネーブ協約は「捕虜は、実際の敵対行為が終了した後遅滞なく解放し、且つ、送還しなければならない。」と規定している。


これまではロシアと北朝鮮が派兵の事実を認めていなかったため、北朝鮮は捕虜の送還要求をしない可能性が高いと見られていた。しかし、北朝鮮が公式メディアを通じて参戦の事実を認めたことで、雲行きは変わるかもしれない。


もっとも、北朝鮮が捕虜の送還を求めたとしても、それがそのまま認められるわけではない。捕虜は、人種や宗教、国籍または政治的見解を理由として、迫害や拷問を受ける、あるいは死に至らしめられる恐れがある場合、それらを理由に本国送還を拒否できます。つまり、ノン・ルフールマンの原則の適用対象となるのだ。


ウクライナ軍に確保された北朝鮮兵捕虜は、韓国情報当局とマスコミなどに、韓国行きの意思を繰り返し明らかにした。北朝鮮当局は、脱北に失敗した人々を取り締まる際にも、韓国行きを目指していた人々を特に苛酷に扱う。また、韓流ドラマを密売しただけで死刑になる現実もあり、「韓国行き」を公言するのはきわめて危険な行為なのだ。



そうした現実は、脱北者による数多くの証言で明らかになっているだけに、「韓国政府は北朝鮮兵捕虜の韓国移送が可能だと見ている。ウクライナのゼレンスキー大統領も『帰還を望まない北朝鮮兵には他の方法がありうる』として、第三国移送の可能性を示唆した経緯がある」と文化日報は指摘している。


しかし現状では、紆余曲折が避けられないウクライナ戦争の停戦・和平交渉の中で、ロシアや北朝鮮がどのような要求を出してくるか、想像するのも難しい。


文化日報は「ロシアとウクライナの和平協定締結の過程で北朝鮮兵捕虜がどのように扱われるか決まる前に、韓国政府とウクライナ政府間で意思疎通し、交渉することが必要だ」とする、外交関係者の話を伝えている。

デイリーNKジャパン

「北朝鮮」をもっと詳しく

「北朝鮮」のニュース

「北朝鮮」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ