「他国の戦争で死ななければならないのか」ロシア派兵で北朝鮮国民から不満
2025年5月5日(月)7時1分 デイリーNKジャパン
北朝鮮当局がロシア派兵と犠牲者の発生を公表したことを受け、国民の間に衝撃が広がっている。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は先月29日、「他国の戦場に送られて死んだ軍人はどれほど無念で、その親たちはまたどれほど心が痛むか心配する人もいた」という現地住民の話を伝えているが、ほかにも様々な反応が出ている。
RFAによると、前出とは別の住民は「ロシアの戦争にわが国の軍人が派遣されたという内容が報道されると、皆が落ち着かない雰囲気になった」と話している。
この住民によれば「軍隊に行っている自分の子供や兄弟が戦場に送られたのではないか、すぐに調べてみようとする人が多い。また暴風軍団をはじめとする特殊歩兵部隊が主に派遣されたようだという周囲の人々の言葉に、自分の子供は空軍や海軍に行っているからと、安心する姿も見られた」という。
北朝鮮の兵役期間は世界一長く、男性で10年間にも達する。中にはその間、一度も家族に会えない例もあり、任務については手紙で知らせることもできない。そのため、ロシアに送られた兵士の家族らは、本人が戦死してもその具体的な経緯を知ることができないのだ。
この住民はまた「今日、人々の中で出た反応は主に、現代の戦争は1950年代の戦争と完全に異なり、死傷者が多く出る可能性があるということ、軍事大国であるロシアがどれほど厳しい境遇に陥れば、私たちの軍隊が必要になったか知りたいということだった」と説明した。
さらに、「数カ月前にも軍部隊がロシアに派遣され、戦死者が発生したという話が出回ったが、結局それは事実だった」とし、「これまで隠していた当局を遠まわしに非難する人もいた」と付け加えている。
また「こういう時、言葉を誤るとひどい目に遭うことをよく知っている人たちだけに、人前では『わが軍のロシア派遣がいつ始まり、派遣規模はどの程度なのか気になる』などと話しているが、実際に知りたがっているのは『いった死傷者は何人なのか』ということ」と話している。
そして「当局は戦死した軍人を追悼する記念碑を平壌に建てるとしているが、それで子供を失った親の心を慰めることができるのか。なぜ他人の戦争に行ってわが国の若者たちが死ななければならないのか、本当に分からない」と嘆いている。