卒業式に登壇したハーバード大学長「世界各地から集まった皆さん、これがあるべき姿だ」…人材流出の懸念も広がる
2025年5月30日(金)22時36分 読売新聞
29日、米ハーバード大の卒業式で、学生らから拍手を受けるアラン・ガーバー学長(右)=金子靖志撮影
【ボストン(米マサチューセッツ州)=金子靖志】米国のトランプ政権によるハーバード大の留学生受け入れ停止措置を巡る問題で、連邦地裁は29日、停止措置の差し止め命令を、当面の間延長することを認めた。政権からの圧力に対する不安や人材流出への懸念が渦巻く中、ハーバード大では同日、卒業式が行われた。
「留学生のいないハーバードはハーバードではない」。学生らが胸元にこう書かれたステッカーを貼って臨んだ卒業式。政権からの圧力に譲歩しなかった姿勢をたたえ、スタンディングオベーションで迎えられて登壇した同大のアラン・ガーバー学長は、「世界各地から集まった皆さん。これがあるべき姿だ」と訴えた。
ただ、同大の大学院を修了した30歳代の日本人男性は「留学生の間では不安が根強い」と語り、他国の大学への転入を検討する日本人留学生もいると打ち明けた。今夏に入学を控えながらもビザ(査証)が下りていない知人もいるといい、「今後の動き次第では進学先を他国に変えざるを得なくなる」と懸念を示す。
この日卒業した中国出身の女性留学生(22)は「トランプ政権はあと4年続く。後輩が常に不安の中で過ごすと思うと手放しでは祝えない」と語った。
政権の圧力は、アイビーリーグと呼ばれる米北東部の名門8大学を狙い撃ちにする形で強まっている。多様性を重視し、留学生への支援も手厚いアイビーリーグを、トランプ大統領は「民主党支持者の牙城」と見なし、保守層も「税金で外国人を支援する大学」として政権による圧力を支持する傾向があるためだ。
政権の措置により、優秀な国際人材が流出し、米国全体の国益低下につながるとの懸念も広がっている。
米テクノロジー誌「WIRED」は29日、カリフォルニア大バークレー校の国際交流責任者の「中国や英国が学生獲得に動いている」との指摘や、カーネギーメロン大のビンセント・コンイッツァー教授の「優秀な人材が米国に来なくなり、米国の経済や技術基盤の発展に深刻な打撃を与える」との警告を報じた。