JAXAと日本電波工業、宇宙用QCMセンサの開発・実証を目標に共創活動を開始

2024年2月16日(金)11時3分 マイナビニュース

日本電波工業(NDK)と宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、新たな発想の宇宙関連事業の創出を目指す「JAXA 宇宙イノベーションパートナーシップ(J-SPARC)」の枠組みのもと、2023年11月より「宇宙用 QCM(水晶振動子式微小天秤)センサ刷新事業」に関する共創活動を開始したことを発表した。
現在、宇宙空間において地球観測衛星や天文観測衛星が搭載している望遠鏡レンズが、機体に用いられているプラスチックや接着剤の材料から放出されるアウトガスによる汚染(コンタミネーション)によって、光学性能や画質の低下が引き起こされたり、寿命が短くなるなど問題が生じているという。そのため、材料からのアウトガス発生を可能な限り抑えるためには、正確な計測結果に基づく部材選定が重要だという。
NDKとJAXAが共同開発した、アウトガス分析システム「Twin-QCM」は、1枚の水晶振動子センサ上に参照用電極と計測用電極を設けた「Twinセンサ方式」のため、従来課題であったセンサ間の特性差や温度差のバラつきの問題が解消されるほか、従来、水晶振動子センサ交換のたびにメーカーに送付することで発生していたダウンタイムや高価な費用負担が、ユーザー自身による交換が可能となることで、短時間かつ安価に対応できるようになるとしている。2者はすでにTwin-QCMの共同研究を進めた成果として地上用Twin-QCMをNDKが販売しており、国内外の宇宙機器開発ユーザーなどへの導入実績も多数有している。
今後は、Twin-QCMの宇宙用フライトモデルの応用開発や軌道上実証を目標に、海外品がデファクトスタンダードとなっている宇宙用QCMセンサ、およびその市場の刷新を目指すほか、将来の宇宙探査での利用を見越して従来のアウトガス計測に留まらない、宇宙特有の用途である原子状酸素(AO)の軌道上環境計測技術の確立といった新たな用途の開拓を目指すとしている。
今回の共創活動の具体的な内容としては、NDKがフライト用Twin-QCMの開発および顧客開拓を実施し、ロケットによる打ち上げ環境、軌道上環境への対応設計、信頼性評価を行うほか、軌道上での限られた通信環境に対応するため、ストレージ機能の追加実装などを実施し、並行して宇宙用途としての新たな市場調査、顧客開拓を行う。
一方のJAXAは、新たな用途の開拓および開発支援を行い、コンタミネーション計測に限らない新たな宇宙用QCMセンサの用途を模索し、計測する技術の確立を目指すほか、軌道上実証のプラットフォームとして有力である国際宇宙ステーション(ISS)に搭載することを想定した安全要求への対応の支援および軌道上実証の機会獲得を目的とした実証先プラットフォームの調査・検討を行っていくとしてる。また将来、探査での利用を見据えた宇宙用QCMセンサの新たな用途開拓も進めていくとしている。
なお2者はこの共創について、2024年度に開発を完了させ、2025年度の軌道上実証を目指すとしており、地上用・宇宙用ともに、国産QCMセンサを世界的なスタンダードに押し上げたいとしている。

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