とにかく「吸引力が最強」な掃除機がほしいです。「吸込仕事率」を見れば分かりますか?【家電のプロが回答】
2025年5月7日(水)21時10分 All About
誰しも、できることなら吸引力に優れた掃除機がほしいですよね。購入時にはどのようなポイントをチェックすればよいのでしょうか。「All About」白物・美容家電ガイドの田中真紀子が解説します。
「All About」ガイドの田中真紀子が解説します。
(今回の質問)
とにかく「吸引力が最強」な掃除機がほしいです。「吸込仕事率」を見れば分かると聞いたのですが、どうなのでしょうか?
(回答)
1つの目安にはなりますが、実際の吸引力とは異なり、必ずしも数値が低い=吸引力が弱いわけではありません。ダストピックアップ率やブラシの性能、本体重量などを合わせて確認しましょう。
どういうことなのか、以下で詳しく解説します。
「吸込仕事率」=「本来の吸引力」ではありません
コードレス掃除機が一般的でなかったころ、キャニスター式掃除機の吸引力を測る指標として、「吸込仕事率」が重視される傾向にありました。これはJIS規格で定められた吸込力の目安で、W(ワット)数で表示され、400Wを超えると特に「吸引力が強い」と評価されていました。しかし、このJIS規格が定める吸込仕事率の計測方法が必ずしも、本来の吸引力を反映しているとは言い切れません。というのも、計測は床ブラシ(ヘッド)を外した状態で行われていますし、風量や真空度から算出された数値であり、実際のゴミを吸い取っているわけではないからです。しかし実際は、床ブラシ(ヘッド)の性能が吸引力に大きく影響します。床に密着して真空状態を作れば吸引力がアップしますし、ブラシでゴミをかき取る効果も加わるためです。
近年人気のコードレス掃除機の吸込仕事率は50〜100W程度しかありませんが、キャニスター式レベルの掃除性能を発揮するものも多く存在します。そのため、吸込仕事率の数値がかえって誤解を招くことになるので、コードレス掃除機の吸込仕事率を明示していないメーカーも多くあります。
ダストピックアップ率という指標も?
もう1つの指標として「ダストピックアップ率」というものがあります。これは国際電気標準会議(IEC)が定めた測定方法で、床に撒いた「けい砂」を掃除機で吸引し、取り残した量から算出するもの。数値が100%に近いほど集じん性能が高いことを表します。現在は、吸込仕事率よりもこちらの方が実際の吸引性能を表していると考えられます。ただしこの指標は主に海外で使われており、国内メーカーでは数値を公表していないことが多いのが現状。また測定に使用する「けい砂」は、土足文化のある国を前提としており、日本のようにホコリなどの軽いゴミが多い環境では、必ずしも適切とは言い切れません。
購入時に見るべきポイントは?
では、購入時にはどこをチェックしたらよいのでしょうか。筆者としては、キャニスター式は今までどおり吸込仕事率を参考にし、コードレスは本体重量をチェックするとよいと考えます。近年は軽量化が進んでいるとはいえ、重量が1.2kg以下になると、モーターが軽量小型化されていたり、ヘッドにブラシがついていないなどの理由から、吸引力が低下しやすい傾向にあります。特にヘッドが軽過ぎると掃除中に浮きやすく、床に密着しにくくなるため、実際に店頭で試してみるのがおすすめです。
この記事の筆者:田中 真紀子
白物家電、美容家電の専門家兼ライターとして活躍。日々発売される新製品をチェックし、製品の紹介記事やレビュー記事を雑誌やWeb、新聞などで紹介している。日常的にも話題の新製品を使うことで、ライフスタイルに合わせた選び方や、上手な採り入れ方の提案も行っており、テレビ出演も多数。
(文:田中 真紀子)