ゲーミングノートPCは“GPU消費電力”で差がつく時代に。RTX 5090 Laptop(120W)越えの「ROG Strix G16」を試す
2025年5月30日(金)7時0分 マイナビニュース
2025年モデルとして登場したASUSのゲーミングノートPC「ROG Strix G16(G615LW-U9R5080)」をレビューします。本製品は、Intel Core Ultra 9 275HXとNVIDIA GeForce RTX 5080 Laptop GPUを搭載し、最大175W駆動に対応したハイパフォーマンスモデルです。
価格はASUS公式オンラインストアで499,800円(税込)。高負荷なゲームやクリエイティブ用途にも対応する実力をチェックしていきます。
○無骨なスタイルに機能性を備えたゲーミングデザイン
ROG Strix G16は、ゲーミングノートらしい無骨さと、実用性のあるデザインが特徴です。天板には斜めに走るラインとROGロゴが配置され、エクリプスグレーの本体は光の反射で質感が際立つ仕上がりになっています。
本体サイズは幅354mm、奥行き268mm、高さ22.8〜30.8mmで、重量は約2.65kgと16インチクラスのゲーミングノートとしては標準的です。厚みはありますが、そのぶん冷却性能やポート構成を優先した設計となっており、据え置きメインの使用に向いています。
本体の背面および底面には、冷却性能を重視した大きな吸気・排気スリットが設けられています。内部にはCPUとGPUを広範囲にカバーするベイパーチャンバーと、3基のファンで構成される「Tri-Fanテクノロジー」を採用。さらに、熱伝導性に優れるThermal Grizzly製の液体金属グリスを使用することで、パフォーマンスを維持しながら効率よく熱を逃がせる設計となっています。
ディスプレイには解像度1920×1200ドット、アスペクト比16:10の16型液晶パネルを採用しています。ノングレア仕様で映り込みが少なく、165Hzの高リフレッシュレートにも対応しており、動きの速いゲームでも残像感の少ない表示が可能です。
また、色域はsRGB 100%カバー、最大輝度は300nit、Dolby VisionやPantone認証も取得しており、ゲーミング用途だけでなくクリエイティブ作業にも対応できるクオリティです。ASUSの高品質ディスプレイ基準「Nebula Display」認証を取得しているのもポイントです。
ポート構成は豊富で、左右と背面に分散して配置されています。USB Standard-Aが3ポート、Thunderbolt 5対応のUSB Type-Cが2ポート、HDMI出力、2.5G対応の有線LANポート、3.5mmコンボジャックなどを備えており、ドックやハブがなくても周辺機器の接続には困りません。
キーボードはテンキーを省いた英語配列で、上部には5つのマクロキー(M1〜M5)を搭載しています。ゲーム中の操作に使えるほか、Armoury Crateを使ってショートカットの割り当ても可能です。RGBバックライトにも対応しており、設定次第で視認性と演出を両立できます。
WASD周辺の8キーとスペースキーはクリアキーキャップが採用されており、ライティングの映え具合が印象的です。また、Wキーには突起が設けられていて、FPSゲームなどでのホームポジションを触覚でも把握しやすい仕様になっています。
配列はUS配列がベースのJIS配列で、一部のキーが見かけ上一体になっており、その右側に「Home」「End」などのキーが縦一列に配置されています。この構成は、特に日本語配列に慣れているユーザーにとっては少し違和感があるかもしれません。特にエンターキーのすぐ右にキーが並ぶ構成になっているため、タイピング中に押し間違えてしまう場面もありそうです。
電源ボタンは右上に独立して配置されており、誤操作を防ぎやすい設計です。
本体底面にはスライド式のボタンが用意されており、ネジを外さずにカバーを開けて内部にアクセスできます。ツール不要で内部に到達でき、簡単にメモリやSSDの増設・交換が可能な親切設計です。
また、M.2 SSDスロットにはASUS独自の「Q-latch」機構を採用。ネジを使わずにSSDを簡単に固定できるため、ストレージのアップグレード作業もスムーズに行えます。
電源は専用のDCジャックから供給され、Type-C充電には対応していません。付属のACアダプターは出力380W(20V/19A)の大出力タイプで、本体の高性能を支えるために必要な仕様です。そのぶんサイズや重量も大きく、ケーブル込みの実測では約980g。あわせて持ち歩くとなると、全体の重さは少し気になるところです。
○Armoury Crateで各種機能を一元管理
ROG Strix G16には、ASUSの専用ユーティリティ「Armoury Crate」がプリインストールされており、本体の状態確認やパフォーマンス設定、ライティング制御、マクロの割り当てなど、多くの機能を一元管理できます。
ホーム画面ではCPUやGPU、メモリ、ファンの稼働状況などをリアルタイムでモニタリング可能。動作モードは「サイレント」「パフォーマンス」「Turbo」「手動」の4種類が用意されており、用途に応じて切り替えることで冷却性能や静音性、パフォーマンスのバランスを調整できます。
また、キーボード上部のマクロキー(M1〜M5)には、Armoury Crate上から音量調整やアプリ起動など、好みの操作を割り当てることができます。キー操作で即座にモード変更などが行えるため、ゲームプレイ中の利便性も高まります。
ライティング制御機能も充実しており、「Aura Sync」によってキーボードや本体LEDの発光パターンや色、明るさ、速度などを詳細にカスタマイズ可能です。ほかのASUS製品と連動したイルミネーションも実現できます。
さらに「GameVisual」では、ディスプレイの表示モードをゲームや映像視聴、ブルーライト軽減など用途別に最適化できるプリセットが用意されており、ワンクリックで切り替え可能です。
そのほか、起動音のオンオフやタッチパッドの有効無効、電源モードの同期、バックグラウンドアプリのメモリ解放、アップデート状況の確認なども可能で、ゲーミングノートを自在にコントロールできる強力な統合ツールとなっています。
○各種ベンチマークでROG Strix G16の性能を確認
ここからはベンチマークソフトを使って、ROG Strix G16のパフォーマンスを検証していきます。テストはArmoury Crateの「パフォーマンス」モードを選択し、外部4Kモニターで実施しています。
今回仕様したROG Strix G16(G615LW-U9R5080)の構成は以下の通りです。
OS:Windows 11 Home
CPU:Intel Core Ultra 9 275HX(8P + 16Eコア / 最大5.4GHz)
GPU:NVIDIA GeForce RTX 5080 Laptop GPU(16GB GDDR7 / 最大175W)
メモリ:32GB(DDR5-5600 / SODIMM×2)
ストレージ:1TB SSD(PCIe 4.0x4接続)
CINEBENCH R23およびCINEBENCH 2024では、いずれも高いマルチスレッド性能と優れたシングルスレッド性能を発揮しました。特に、最新世代のIntel Core Ultra 9 275HXの特性がよく現れており、複数コアを活用する3Dレンダリングやエンコード処理において、ノートPCとしてはトップクラスの実力を示しています。
また、PCMark 10では、日常的なタスクからコンテンツ制作まで幅広い用途に対応できるバランスの取れた性能が確認できました。アプリの起動やブラウジングといった基本的な操作はもちろん、フォトレタッチや動画編集といった重めの作業でも安定して処理できる実用性の高さが印象的です。
全体を通じて、CPUの世代刷新によって処理性能が大幅に向上しているうえ、冷却性能の高さにより高いパフォーマンスを長時間持続できる設計となっており、長時間の高負荷な作業でも安心して使えるパフォーマンスでした。
GPUのベンチマークでは、性能の参考としてRTX 5090 Laptopを搭載するROG Zephyrus G16(GU605CX-U9R5090)との比較も行っています。こちらの詳細な単体レビューは『「ROG Zephyrus G16」をレビュー。薄型ボディで120W駆動のRTX 5090 Laptop搭載、16インチのスリムモデル』で行っています。
3DMarkの各テストでは、RTX 5080 Laptop GPUの高いポテンシャルを存分に発揮し、すべての項目でRTX 5090 Laptopを搭載するZephyrus G16(GU605CX-U9R5090)を上回るスコアを記録しました。ゲーム系ベンチマークにおいても、重量級タイトルを含めた各テストで安定した高フレームレートを維持しており、非常に高いゲーミング性能を実現しています。
とくに注目したいのは、TGP(最大消費電力)の差による性能傾向です。本機に搭載されるRTX 5080 Laptopは最大175WのTGP設定が可能であり、Zephyrus G16のRTX 5090 Laptop(最大120W)と比べて消費電力に余裕のある設計となっています。
その結果、GPUの性能をより引き出しやすく、ベンチマークや実ゲームにおいてもすべての測定結果でRTX 5090 Laptopを上回るという逆転現象が見られました。TGPの設定差が実行時のパフォーマンスに直結していることがよくわかります。
Zephyrus G16(GU605CX-U9R5090)が搭載しているCPUはIntel Core Ultra 9 285Hであるとはいえ、やはりグラフィックス性能の伸び方にはGPU側の電力が強く影響していると言えそう。これらの結果から、ROG Strix G16はゲーミングからクリエイティブ作業まで幅広く対応できる、極めてパワフルな高性能ノートPCであると評価できます。
なお、ROG Zephyrus G16とのベンチマーク比較ではArmoury Crateの「パフォーマンス」モードを使用していますが、本機にはより高出力な「Turbo」モードも用意されています。
Turboモードでは3DMarkのSpeed Wayストレステスト実行中に最大297Wの消費電力を記録。これは瞬間的な最大値ではありますが、全体としてもパフォーマンスモード時より30〜40Wほど高い消費が見られました。
ファンもフル稼働し、騒音値は最大約59.8dB。ヘッドセットを装着していても動作音が耳に届くレベルですが、そのぶんパフォーマンスを最大限に引き出す動作モードといえます。
ストレステスト終了時に本体表面の温度も計測。キーボード上部付近で最大45.7℃を観測しました。ただしWASDキー付近は31℃前後と比較的抑えられており、長時間のゲームプレイでも操作に支障をきたすような熱さではありませんでした。
ゲームや作業内容によっては、パフォーマンスモードでも十分な性能が得られますが、すべてを無視した「本気を出した状態」が欲しい場面ではTurboモードを選ぶのも有効な選択肢です。
搭載されている1TB SSDは、PCIe 4.0 x4接続のMicron製。CrystalDiskMarkによる計測では、シーケンシャルリード/ライトともに高速な転送速度を記録しています。高解像度のゲームや映像編集といった用途でも、ボトルネックを感じさせない十分なストレージ性能です。
○本気を出せるハイパフォーマンスゲーミングノートを求めるなら
ROG Strix G16(G615LW-U9R5080)は、Intel Core Ultra 9 275HXとGeForce RTX 5080 Laptop GPUを搭載し、最大175WのTGPを引き出す設計により、モバイルノートの枠を超えた高いゲーミング性能を実現しています。高負荷なゲームプレイやクリエイティブ作業でも、安定したフレームレートと処理速度を維持できるだけの力強さがありました。
注目すべきは、上位GPUであるRTX 5090 Laptopを搭載するROG Zephyrus G16を、パフォーマンスモード同士の条件下で全テストにおいて上回った点で、冷却設計やTGPの余裕がそのまま実効性能に結びついた印象です。
なお、ROG Zephyrus G16が「薄型・軽量でクリエイター向け」のモデルであるのに対し、ROG Strixシリーズは「より高いパフォーマンスを引き出す」ことに主眼を置いた製品です。その違いは、今回のベンチマーク結果にもはっきりと現れていました。
本体は約2.65kgとやや重量はありますが、剛性の高い筐体や豊富なインターフェース、カスタマイズ性の高いArmoury Crate、パフォーマンス重視の冷却設計など、据え置き運用前提のゲーミングノートとしては非常に完成度の高い構成です。
より高い出力を引き出せるTurboモードも用意されており、「とにかく性能を出し切りたい」というユーザーにも応えてくれます。消費電力や騒音と引き換えに、限界まで攻めたパフォーマンスを発揮する姿勢は、まさにROG Strixシリーズらしい個性と言えるでしょう。
携帯性よりも性能を重視し、ゲームもクリエイティブ作業も妥協したくない——。そんなユーザーにとって、ROG Strix G16は非常に有力な選択肢となるはずです。