決して鳴らない「石の鐘」、77年吊るす寺 戦中の「代替梵鐘」に込めた住職の思い
「石の鐘」を吊るし続けているお寺がある。長野県にある称名寺(信濃町)だ。
「金属回収令」により金属類が根こそぎ回収された戦時中。お寺の梵鐘(ぼんしょう)も例外ではなく、各地で供出されたという。その代わりに、石などの重量物を「代替梵鐘(ぼんしょう)」として吊るした例は各地であった。
称名寺にある「石の鐘」も、その1つだ。だが一般に、こうした代替梵鐘は、戦争の終わりと共に降ろされ、いわゆる「戦争遺産」として保存されることが多いらしい。
ではなぜ、ここ称名寺は戦後74年にあたる今なお、石を吊るし続けているのか。Jタウンネットが、その理由を探った。
「梵鐘記念 昭和十七年十月」
「梵鐘記念 昭和十七年十月」
石の鐘にはそんな刻銘がされている。1942年(昭和17年)の10月から77年近く吊るし続けられていることになる。Jタウンネット編集部は2019年2月21日、信州しなの町観光協会に問い合わせたところ、
「普通は降ろしてしまうので、やはり思いを持って吊るし続けているのだと思います」
と担当者。数年前まではイベントや終戦記念日の際に取り上げられ、話題になっていたが、最近は「忘れ去られているところもある」という。春には見事なしだれ桜が花を咲かせ、美しい写真を撮ることもできる。
称名寺の住職は佐々木五七子(いなこ)さん。
15年7月10日の信濃毎日新聞の報道によれば、鐘楼から鐘がなくなった1942年の10月1日は、佐々木さんが当時13歳だった頃だという。終戦後に住民から金属の鐘に戻すよう何度も頼まれたが、「戦争の悲惨さ、愚かさの証」として新調せずに残し続けたそうだ。
まもなく90歳を迎えることになる佐々木さん。過去に以下のような言葉を残している。
「いま世の中は平和ですか?平和ではありませんね。こうしているあいだにも、戦車や爆撃による殺し合いでなんの罪もない子どもや老人、赤ちゃんまでもが亡くなっています。そういう戦争がなくなったら、石の鐘は下げてとりかえましょう」(信州しなの町観光協会公式サイトより引用)
どうかこれからも元気に、石の鐘に託された思いを伝え続けてほしい。
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