富士通、ニュルブルクリンク・ノルドシュライフェの安全対策強化にAI技術を活用

　1月23日、ニュルブルクリンクの安全対策を支援する富士通は、その取り組みの第一弾として『ノルドシュライフェ（通称：北コース）』にて、AI技術を活用した安全対策強化に向けたシステムの実証実験を実施し、2023年1月より同システムの本導入を開始すると発表した。

　ニュルブルクリンクでは、ドライバーに危険の警告や事故発生を伝える際に、コース・マーシャルたちが振るフラッグやラジオ放送を活用してきた。ただ、『ノルドシュライフェ』は約21kmに及ぶ世界最長の常設サーキットということもあり、救助が来るまでに時間を要する場合もあったほか、ときにはコースが閉鎖されレースやイベントに大きな影響が生じるなどの課題があった。

　そこで、ニュルブルクリンクと富士通は、カメラやAIを搭載したICTの活用により、レーストラックの異常を自動検出し、ドライバーに即座に危険を警告できる基盤を整備することで、安全対策の強化を目指している。

　2022年に実施された実証実験では、ノルドシュライフェの内2.8kmの区間に8台のハイビジョンカメラを設置。それらを光ファイバーケーブルで接続するとともに、AI機能を搭載しシームレスなシステムが構築された。

　これにより、ハイビジョンカメラからのコース映像をAIがリアルタイムで監視・判断し、レーストラック上のLEDディスプレイを介して即座に危険をドライバーに警告できるシステムが確認された。このシステムにより、ほかの車両や人との接触事故などを未然に防止することが可能になったとしている。

　ニュルブルクリンクは、2025年シーズンまでに本システムの実運用開始を目指しており、富士通は、実証実験による有効性検証を踏まえて、今後2年間で『ノルドシュライフェ』のレーストラック全域に追加のハイビジョンカメラ100台の増設とAI機能の強化を行い、『ノルドシュライフェ』の約21kmの監視による安全対策を支援していくとしている。

　ニュルブルクリンクCEOのクリスチャン・ステファニとインゴ・ボーダーは「世界的に有名な『ノルドシュライフェ』の未来の安全性に備えた基盤を整備する本プロジェクトは我々にとって非常に重要であり、ニュルブルクリンク100年の歴史の中で最も大規模なイノベーションのひとつだ」

「本プロジェクトにおいて、AIは最良の解決策だと考えている。なぜなら、これほど多くのカメラからの画像をリアルタイムに監視、判断し、適切な行動を取ることは人の力だけでは実現できないからだ。富士通は、必要な専門知識と適切なソリューションを提供するだけでなく、この歴史的なレーストラックへの情熱を共有する重要なビジネスパートナーだ」と連名でコメントを発表。

　また、ドイツの富士通サービスGmbHでデジタル・トランスフォーメーション・ユニットDACHの責任者を務めるヨルン・ニッチマンは「本ソリューションは、レーストラックへの適用だけではなく、自動車産業のデジタル化とイノベーションに貢献するもので、道路交通やそのほかのシーンにおける技術の適用の検討を進めている」とコメントしている。