“歩行不可能”で敗れた元世界王者が語った井上尚弥の偉才「一撃が俺を狂わせた。今でも『あれがなければ』って考える」
2025年1月26日(日)18時0分 ココカラネクスト

ガードを固めるドヘニーを猛ラッシュで打ち崩した井上。(C)Takamoto TOKUHARA/CoCoKARAnext
ボクシング界で「怪物」と尊敬、もしくは恐れられる男の凄みは、実際に対峙した者の言葉が如実に物語る。
「イノウエとの戦いは本当に信じられない経験だった」
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そう、英専門メディア『Pro Boxing Fans』の公式YouTubeチャンネルで語るのは、元IBF世界スーパーバンタム級王者のテレンス・ジョン・ドヘニー(アイルランド)。昨年9月にボクシングの世界同級4団体統一王者の井上尚弥(大橋)と対峙した38歳は7回TKOで敗戦。試合終了後には周囲のサポートなしでは歩行不可能となるほどのダメージを負った。
戦前の井上有利の下馬評を考えても妥当な結果ではあるが、ドヘニーには試合途中まで勝てるという自信があった。それは「自分は結構いい動きをしていたし、一方的にやられたという感じはなかった」と通りだ。
では何が勝負を分けたのか。ドヘニーは7回のダウンに繋がる、6回に放たれた井上の一撃を回想する。
「残念ながら6ラウンドの終わり際に受けた後ろから回り込むような一撃が俺を狂わせた。今でも『あれがなければ』って考える時がある。ガードを固めていた時に彼が打ってきたボディショットが背骨の横にある筋肉に当たったんだ。それが筋肉を押しずらすような感じになったんだ。それで7ラウンド目に出ていったときには腕が上がらなかった」
守勢に回ったドヘニーに対して井上が展開した6回の猛ラッシュ。パンチが矢継ぎ早に飛んだ中で、ボディー付近に飛んだ一撃は、反撃の隙を模索したベテラン戦士の歯車を狂わせた。
むなしく散ったドヘニーだったが、意外にも「パンチはものすごい威力は感じなかった」と証言。その上で目の当たりにした怪物の偉才を語った。
「彼のパンチの正確さと打ち分けは凄かった。全てのパンチを当てるべき場所に的確に打ち込んできた。もちろん彼にパワーが全くないというわけじゃない。ただ、それ以上に彼が打ってきたショットの正確性が凄まじかった。全てが当てるべきところに来て、本当に印象的だった」
百戦錬磨のベテランを唸らせた井上のボクシングスキル。日本が生んだスーパースターを「怪物」たらしめるのは、パワーだけではないようだ。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]