シケインは「ゆっくり走れ」/タイヤが余る/連戦となる21名は豪州直行etc.【デイトナ24時間決勝後Topics】

2025年1月28日(火)17時40分 AUTOSPORT web

 1月25日から26日にかけて、アメリカ・フロリダ州に位置するデイトナ・インターナショナル・スピードウェイで『第63回ロレックス24・アット・デイトナ(デイトナ24時間レース)』の決勝レースが行われた。日本から小林可夢偉、太田格之進、ケイ・コッツォリーノが参戦し、それぞれが活躍を見せるも残念ながら結果に結びつかなかった今大会は、既報のとおりポルシェ・ペンスキー・モータースポーツの7号車ポルシェ963が大会2連覇を飾っている。


 ここでは、前年王者のこれ以上ないスタートで始まったIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権の開幕ラウンドから、決勝レースにまつわる各種トピックをお届けする。


* * * * *


 ポルシェはデイトナで歴代最多となる20回目の総合優勝を果たし、ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ(PPM)と7号車ポルシェ963は大会2連覇を達成した。ローレンス・ファントールとニック・タンディが初の総合優勝を果たした一方で、フェリペ・ナッセは2年連続でウイナーとなっている。


 優勝した7号車と、3位表彰台を獲得した6号車。このポルシェ・ペンスキー・モータースポーツの963ペアは、781周のうち517周をリードした。


 ポルシェ・モータースポーツのトーマス・ローデンバッハは次のように語った。「つねに最速のクルマを持っていたわけではなかったが、我々には一貫性があり、ミスも少なかった。これはドライバー、メカニック、エンジニア、そしてドイツ・ヴァイザッハの同僚を含むチーム全体にとって素晴らしい結果だ。本当に嬉しく思う。この勝利は、新シーズンの完璧なスタートと言えるだろう」


 最終的な決定要因のひとつは、最終ピットストップで分かれた戦略だった。マット・キャンベルがドライブしていた6号車がニュータイヤを2本しか履かずに先行したのに対し、ナッセの7号車は4本すべてニュータイヤ。同じく4本交換したトム・ブロンクビスト駆る60号車アキュラARX-06(アキュラ・メイヤー・シャンク・レーシング)は最終的に6号車をパスして2位となった。


 ポルシェ・ペンスキーのマネージング・ディレクターであるジョナサン・ディウグイドは次のように説明した。「そこではトラックポジションが非常に重要だった。BMWとアキュラの前に1台のPPMカーがいるようにしておきたかったんだ」

最後のピットストップでトラックポジションを優先するためタイヤ2本交換で出ていった6号車ポルシェ963(ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ) 2025年IMSA開幕戦デイトナ24時間


■ポルシェ・ペンスキーはほぼノントラブル


 同氏はまた6号車がレースで割り当てられたタイヤをフルには使用せず、「1.5セットか2セット」を余らせたことを明らかにした。PPMは夜間にキャンベルが乗った6号車で一度だけミシュランのオプションであるソフトタイヤを使用したが、ミディアムのほうがパフォーマンスが優れていることが分かった。このソフトタイヤは土曜日の17時から日曜日の10時まで、路気温が低い時間帯のみ使用することができた。


 ポルシェのファクトリーチームに起きた唯一の顕著な問題は、夜間に正体不明のGTカーが6号車の後部に衝突したことで、チームはリヤデッキを交換することを余儀なくされた。この作業は13回目のフルコース・コーション中に行われた、これにより若干の遅れが生じた。


 ディウグイドは次のように述べた。「私たちは一日中963を酷使したが、どちらのクルマも技術的な問題はひとつもなかった。これはレースを戦ううえで大きな助けになった」


 またディウグイドによると、すべてのGTPカーは高電圧関連の問題を報告することなくレースを終えた。これはポルシェ・ペンスキーがもっとも懸念していた信頼性の問題であり、レース前に「決定的な証拠」を発見した後、両方のクルマに以前使用していた部品を組み合わせて取り付けることで状況を緩和したと明かした。

2連覇で第63回デイトナ24時間レースを制した7号車ポルシェ963(ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ)


■やはり厳しかった新しい縁石


 ロレックス24で通算4度目の表彰台を獲得したトム・ブロンクビストは、ポルシェ勢のワン・ツーを阻止した60号車キュラが、レース中にもっともリヤタイヤの劣化と戦っていたと述べた。


 60号車のクルーは、姉妹車でHRC USのセミ・ワークスカーである93号車アキュラARX-06が左リヤサスペンションのトラブルで5時間目に大幅なタイムロスを喫した後、縁石が新しくなったル・マン・シケイン(旧バス・ストップ)で速度を落とすよう指示されたという。


 「他のクルマや他メーカーのサスペンションでもいくつかトラブルが見られた」と語ったブロンクビスト。「僕たちはそれが新しいル・マン・シケインによるものだと思っていた。あの場所の縁石はそこを通るとかなり(クルマに)攻撃的になることがあるので、僕たちはそこを通るときは少しゆっくり走るように言われた」


 太田格之進のドライブで序盤にトップを走行するシーンも見られた93号車アキュラに加え、プロトン・コンペティションの5号車ポルシェ963とキャデラック・ウェーレンの31号車キャデラックVシリーズ.Rもレース中にサスペンショントラブルに見舞われた。また、少なくとも3台のLMP2カーがギアボックスのトラブルに見舞われたたが、これも同様に新しい縁石が原因であると考えられている。

前年に続きル・マン・シケインが変更され、今季は新しい高さのある縁石が設置された。 2025年IMSA開幕戦デイトナ24時間
31号車キャデラックVシリーズ.Rの修復作業にあたるアクション・エクスプレス・レーシングのメカニックたち 2025年IMSA開幕戦デイトナ24時間


■早々に姿を消したランボルギーニのリタイア原因


 ライリーが運営するアウトモビリ・ランボルギーニ・スクアドラ・コルセの63号車ランボルギーニSC63は、冷却関連の問題のためにレース開始からわずか1時間ほどでリタイア。昨年のル・マン24時間レースでは出場した2台がそろってトップ10フィニッシュを果たしたにもかかわらず、初参戦となったデイトナでは、このレースで最初に姿を消したマシンとなった。ランボルギーニの最高技術責任者であるルーベン・モールは、レース中のラウンドテーブル・ミーティングにおいて選ばれた記者に次のように語った。「データから、加熱回路に異常があることが分かった」


 このレースでライリーが走らせたもう1台のプロトタイプカー、74号車オレカ07・ギブソンは、レース終盤に右側のドアを付け替える作業こととなったために遅れを取った。しかし、フェリペ・マッサもドライブしたこのマシンは最終的にクラス3位に入り、LMP2の表彰台を獲得している。


 同クラスでは、コルトン・ハータが04号車オレカ(クラウドストライク・レーシング・バイ・APR)をドライブ中にクラッシュしたほか、88号車オレカ(AFコルセ)がギアボックスの問題で停車、さらにクラス最多の280周をリードした99号車オレカ(AOレーシング)が電気系トラブルに見舞われるなど、トップを走る車両に相次いで悪夢が降り掛かった。


 そんななか優勝したタワー・モータースポーツのクルーの中には、2016年にテキーラ・パトロンESMがリジェJS P2・ホンダで総合優勝を飾って以来、初めてビクトリーレーンに戻ったメンバーもいた。チーム代表のリッキー・カポネもそのひとりだ。


 タワーの8号車オレカ07・ギブソンをドライブしたセバスチャン・ブルデーは、異なる3つめのクラスでデイトナ24時間のウイナーとなった。このフランス人は、2014年にアクション・エクスプレス・レーシングのコルベットDPで総合優勝を果たした後、2017年にはチップ・ガナッシ・レーシングの一員としてフォードGTを駆り、GTLMクラス優勝を飾った。

LMP2クラスを制した8号車オレカ07・ギブソン(タワー・モータースポーツ) 2025年IMSA開幕戦デイトナ24時間


■コルベットとマスタングが勝利


 一方フォードは、マスタングGT3で20回目のクラス優勝を果たし、これが昨年のデイトナでグローバルデビューを果たしたマルチマチック製マスタングGTの世界大会初優勝となっている。


 GTDプロクラスを制したフォードの画期的なクラス勝利は、ブルーオーバルがウォーリー・ダレンバッハJr.、ジョン・ジョーンズ、ドク・バンディとともにデイトナで優勝してからちょうど40年後のことだった。このトリオは、ルーシュ・レーシングのフォード・マスタングをドライブした。なお、その年は総合優勝はポルシェだった。


 AWAはウェザーテック選手権で3度目の勝利を手にした。このGTDウイナーは2023年シーズンにLMP3クラスで2勝を挙げているが、皮肉なことにチームの最初の勝利はデイトナ24時間で、その後に初開催のバトル・オン・ザ・ブリックス(インディアナポリス6時間)が続いた。


 この結果は、シボレー・コルベットZ06 GT3.Rにとって24時間レースでの初勝利だ。


 アダム・アデルソンは、ライト・モータースポーツの120号車ポルシェ911 GT3 Rが多くの時間で優位にたった後、GTDクラスで2位終わったことを「ほろ苦い」と表現した。「僕たちはリードしていたのに、あのイエローコーションはとても不運だった。アイハンカン(・グヴェン)は最後のピットストップの後、僕たちを表彰台に戻すために正気とは思えないほどのドライブをみせてくれた」

フォード・マルチマチック・モータースポーツの65号車フォード・マスタングGT3 2025年IMSA開幕戦デイトナ24時間
AWAの13号車シボレー・コルベットZ06 GT3.R 2025年IMSA開幕戦デイトナ24時間


■2年連続でエンジントラブルが発生


 GTDプロとGTDで1台ずつレクサスRC F GT3を走らせたバッサー・サリバン・レーシングは、困難なロレックス24に耐えぬいた。プロカテゴリーにエントリーした14号車はクラス11位でレースを終え、姉妹車の12号車はエンジントラブルによりリタイアとなっている。


 他の多くのGTDエントリーも機械的な問題でレースを途中で終了せざるを得なかった。アキュラからフォードにブランドをスイッチしたグランディント・レーシングは、66号車マスタングGT3にクラッチの問題が発生。インセプション・レーシングの70号車フェラーリ296 GT3はサスペンショントラブルでリタイアとなった。


 DXDTレーシングのレースは36号車コルベットが火災を起こしたことで、フォルテ・レーシングは78号車ランボルギーニ・ウラカンGT3エボ2がステアリングの問題でストップしたことで、それぞれ終了した。

バッサー・サリバン・レーシングの12号車レクサスRC F GT3 2025年IMSA開幕戦デイトナ24時間


■24時間レースの翌週は12時間レース


 TFスポーツのボスであるトム・フェリエは、トラックハウス・バイ・TFスポーツの91号車コルベットがGTDプロの表彰台争いから脱落することとなった18号車オレカ07・ギブソン(エラ・モータースポーツ)との接触について、コナー・ジリッシュを「まったく責めていない」と述べている。


 フェリエはSportscar365に次のように語った。「彼は今週ずっとスーパースターだった。彼の活躍がなければ私たちは表彰台争いに加わっていなかったと思う」


 サンエナジー1・レーシングは、メルセデスAMG GT3エボのオイルタンクが破損した後、GTカテゴリーで最初のリタイア車両となった。それはチームオーナー兼ドライバーのケニー・ハブルが乗り込んだ75号車がウォーターポンプのベルトが緩んでいたために6周遅れとなり、2時間目にガレージに入れられた後のことだった。


 ハブルを含む合計21人のドライバーは、IGTCインターコンチネンタルGTチャレンジの開幕戦として今週末、マウント・パノラマ・サーキットで行われる『バサースト12時間』に向け、オーストラリアに直行する。




 IMSAはレース後、各クラスの上位4位までのクルマを差し押さえた。GTPとGTDプロの上位3台は、月曜日に「管理された場所でより徹底的で詳細な検査」を受ける。これ以外の車両は、27日15時までに開放される予定だ。


 IMSAのジョン・ドゥーナン代表はレース前に、今年のデイトナ24時間には61台の定員に対して89台のエントリーリクエストがあったが、現在はワトキンス・グレン6時間とプチ・ル・マンの予備リストがあることを明らかにした。


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