OTSで最速奪取の山下健太「SFは常に不安」。“実質スイープ”の牧野任祐は「一番手応えがあった」/鈴鹿テスト

2024年2月22日(木)23時15分 AUTOSPORT web

 鈴鹿サーキットで2日間にわたって行われた全日本スーパーフォーミュラ選手権の公式合同テスト。2日目は午前のセッション3で牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、午後のセッション4では山下健太(KONDO RACING)がトップタイムを記録した。前日とは変わってセッション3後半からドライコンディションで行われたこともあり、シーズンを占う上では重要な1日となったとも言えるが、両セッションでトップタイムを記録したふたりから聞こえてきた手応えは、“真逆”と言っていいほど異なるものだった。


■例年の『冬は速い』とは異なる状況


 ウエットコンディションとなったテスト1日目では両セッションともにトップタイムを記録した牧野。セッション後半にドライとなった2日目午前のセッション3では、最終アタックで1分37秒455を叩き出して2番手以下に0.3秒近い差をつけ、3セッション連続のトップタイムを奪った。


 午後のセッション4では開始1時間までは動作確認のためにオーバーテイクシステム(OTS。ドライバーら関係者の多くは単に『OT』と発言することが多い)の使用が可能となっていたが、そのタイミングで何台かのマシンがタイムを更新。


 一方、路面が整い、セットアップも突き詰められたセッション終盤に多くのマシンがニュータイヤを投入して繰り広げる予選シミュレーションのごときアタック合戦の際は、OTSが使用できない時間帯となる。牧野はこの終盤のタイミングで自己ベストを更新し、OTSを使用してセッション前半にトップタイムを記録した山下(1分36秒327)に0.169秒差に迫る1分36秒496をマーク。実質的には、4セッションを通じてライバルを圧倒する速さを見せたことになる。


「最後のセッションに関しては、OTのタイミングもあると思います。僕はOTを押していないです。最後、みんながアタックに行ったタイミングではOTが使えない時間だったので、その中では多分トップだったと思います。良いセッションだったかなと思います」と牧野。リザルト上では全セッション制覇とはならなかったが、特に悲観している様子はなく、開幕に向けて弾みをつけるテストになったという。

2024スーパーフォーミュラ鈴鹿合同テスト 牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)


 昨年12月のテストでも、共通ダンパーへの移行を比較的スムーズにこなして好調ぶりをアピールしていた牧野およびDOCOMO TEAM DANDELION RACINGだったが、今回のテストも引き続き好感触で終えることができたようだ。


「結果的には良かったところもありますし、テストでは僕たちのパッケージで抱えていた問題が解決するように取り組んでいたのですが、一番手応えが感じられたテストだったかなと思います。開幕に向けてすごく楽しみなテストになったかなと思います」


 スーパーフォーミュラ参戦6年目となる牧野は、まだ優勝経験がなく、昨年チームメイトで後輩でもある太田格之進が先に1勝目を挙げた際には、かなり悔しそうな表情を見せていた。テスト前日に行われたチームごとの囲み会見でも「何としても1勝目を挙げる」と力強く語っていたが、テストでも気迫溢れる走りが随所で見られた。


「正直、冬のテストはいつも速いと言えば速いのですが、昨年の途中から良くなっていて、暑い時期も良かったです。特に鈴鹿は得意としているコースなので、まずは開幕戦で良いシーズンスタートができるように頑張りたいなと思います」と、いつになく自信に溢れた表情でコメントしていたのが印象的だった。

2024スーパーフォーミュラ鈴鹿合同テスト 牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)


■「テストでOTS押すのはやめた方がいい」と山下


 一方、午後のセッション4でトップタイムを記録した山下は、結果に対して異なる印象を抱いていた。開始1時間を前に1分36秒327の2日間総合ベストタイムを記録したものの、これはOTSを使っていたタイミングだったという。


「OTが使えなくなる前に新品タイヤを入れようと思っていました。そこで出たタイムだったので、OTを使ってのタイムではありますけど……それなりにクルマも自分もまとまっていたので、その中で出たタイムでしたね」と冷静に語る山下。OTSを使用すると、通常時と比べて鈴鹿では0.3〜0.4秒ほど稼げるという。


 OTSが使えないセッション終盤でのタイムアタック合戦では。山下は1分36秒715をマークしている。


「最後の10分でみんなアタックをしたと思うのですけど、そこでは2番手だったと思います。(牧野)任祐が一番速かったと思うので、その点では足りないというふうに思っています」と、純粋なパフォーマンスでは牧野が先行していると考えているようだ。


 とはいえ、テストで一番時計を記録することは少なからずポジティブであることに間違いないが「冬の間に速くて、開幕したら全然ダメというのは何回も経験しているので、(テストで)調子が良くても、今年行けるなという感触にはまったくならないです」と山下。


「いろいろと考えてきたことを試して、今回のテストでは新たなものも見つかってステップとしては踏めていると思います。それがちゃんと(シーズンが始まって)暖かくなった時に作用するかも分からない。とりあえずトップは獲れましたけど、開幕戦はちょっと分からないなという気持ちが大きいです。スーパーフォーミュラは予想がつかないところがいっぱいあるので、常に不安です」と、過去の経験も踏まえると喜べる状況ではないようだ。


 なお、このセッション4ではOTSを使ってタイムを出したドライバーが上位を占めた一方で、牧野のようにOTSを使用せずにパーソナルベストタイムを記録したドライバーも混在するリザルトとなった。


 これに対して山下は「ドライバーミーティングの時にも言ったんですけど、テストで(OTSを)押すのは止めた方がいいと思います。勢力図もよく分からなくなるし、OTを使っていない状態でそのセクタータイムを越えられることは絶対にないので、いろいろなものがボヤけてしまう」と、テスト時のOTS運用について意見を述べたが、最後には「周りが使う以上、自分も使わないと順位が下がってしまうので、今回はあって良かったなと思います(笑)」と本音も漏らしていた。

2024スーパーフォーミュラ鈴鹿合同テスト 山下健太(KONDO RACING)


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