スーパー中学生の今――“西の名門”大阪桐蔭の怪物ラマルは何が凄いのか? プロ注目のポテンシャルに迫る【高校野球】

2024年3月16日(土)6時0分 ココカラネクスト

荒削りながら存在感を放っているラマル。大阪桐蔭の主軸として全国の舞台に立つ逸材の注目ポイントを掘り下げる。(C)産経新聞社

 来る3月18日に開幕する選抜に出場するチームを紹介する報知高校野球(報知新聞社)とホームラン(ミライカナイ)の専門2誌が、いずれも表紙で豊川の怪童モイセエフ・ニキータとともに写真使用し、高い注目を集めるのが、ラマル・ギービン・ラタナヤケ(大阪桐蔭)だ。

 スリランカ出身の両親を持つラマルだが、出身は愛知県。このバックボーンはモイセエフと共通するが、高校入学前に、関係者の間でより名前が知られていたのはラマルの方だった。

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 中学時代に愛知港ボーイズでプレーしていたラマルは、当時から打っては130メートル級の特大ホームランを放ち、投げても130キロ台中盤のスピードをマークするなど、いわゆる「スーパー中学生」として話題となっていた。地元の愛知をはじめ、多くの高校から誘いがあったというが、より厳しい環境をということで熟考の末に選んだのが、大阪桐蔭だった。

 全国から力のある選手が集まるチームにあってもラマルのポテンシャルは高く評価されていた。1年の秋からベンチ入りを果たすと、近畿大会の対彦根総合戦では4番を任されて3安打をマークするなど存在感は早々に示していたのである。

 しかし、彼のここまでの道程が決して順風満帆だったわけではない。打撃の確実性の低さと、サードを主戦場とする守備の拙さもあって、昨春の選抜でもベンチ入りこそ果たしたものの、打席に立てずに大会を終えていた。

 ようやく特大の才能が花開き始めたのは、昨秋に新チームが発足してからだ。「4番・サード」の定位置をつかむと、近畿大会では4試合で打率.500(12打数6安打)を記録し、チームの三連覇にも大きく貢献。そして図抜けたポテンシャルの高さを全国に知らしめたのが、同年秋の明治神宮大会での活躍だった。

 チームは初戦で関東一に敗れたものの、ラマルは第2打席からスリーベース、ツーベース、ホームランと3本の長打を放つ活躍を披露。とりわけ第4打席に放ったライトへのホームランは、低い軌道のライナーがスタンドに突き刺さる圧巻の当たりだった。

 新基準になる前の金属バットを使用したとはいえ、高校生離れした力強い打球だ。ただチームを指揮する西谷浩一監督の話では、練習ではもっと凄い当たりを放っているとのことで、その長打力はまさに規格外と言える。秋季大会で放った19安打のうち12本が長打(二塁打6本、三塁打1本、本塁打5本)というのも見事という他ない。

あらゆる課題が聞こえるのは期待の裏返し

 ただ、課題が多いのも確かである。最も気になるのがやはり守備だ。明治神宮大会でも悪送球を一つ記録しているように、特にスローイングが不安定で、シートノックからワンバウンドになるようなことが多い。元々投手としても高い能力を誇っていただけに、地肩の強さはあるはずだが、小手先で加減したような腕の振りになる場面も悪目立ちする。その点は修正すべきポイントだろう。

 打球の処理についても距離感が合わずに弾く場面が散見しており、まだまだ我慢して起用されている感が否めないのが現状ではある。また、バッティングに関してもモイセエフが全身を使って振っているのと比べると、腕力に頼ったスイングに見え、甘いボールをミスショットするケースも多い。

 誘うような緩い変化球を呼び込み切れず、体勢が崩れるようなスイングになるのも課題だ。反発力の低い新基準のバットでは、より芯でとらえる技術が求められるだけに、そのあたりは選抜での注目ポイントと言えるだろう。

 無論、あらゆる課題がスカウト陣や関係者から多く聞かれるのも、それだけ期待の大きさの裏返しとも言える。昨年の選抜では大半をベンチで過ごしただけに、今年はその悔しさを晴らすような豪快な一打を見せてくれることを期待したい。

[文:西尾典文]

【著者プロフィール】

1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。

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