英アーセナルが辿った女子サッカー躍進の軌跡

2024年4月7日(日)18時0分 FOOTBALL TRIBE

アーセナル・ウィメン 写真:Getty Images

あなたはどのサッカーチームを応援しているだろう?特定のチーム名が思い浮かぶ人もいれば、もちろんそうでない人もいるだろう。特定チームを応援するいわゆる「サポーター」たち。彼らにはどんなきっかけがあり、サポーターになる前と後では人生にどのような変化が生まれているのだろうか。


英国の北ロンドン地域を本拠地にしているアーセナルは、2024年3月の『Women’s History Month(女性史月間)』に合わせ「現在のクラブを作り上げた先駆的な女性たちの存在、そして今も私たちの目の前で歴史を作り上げている女性たちに敬意を称す」としてイベントを開催。1ヶ月の期間中、公式サイトで女子チームの歴史的エピソードを紹介したほか「グーナー(※)になる方法は1つじゃない」というテーマで、アカデミー選手やサポーターへのインタビューを掲載し、彼女たちとクラブとの関係について紹介した。ここでは、その一部を紹介する。


※グーナー:アーセナルサポーターの通称




アーセナル・ウィメン 写真:Getty Images

男女ともに好調のアーセナル


アーセナル男子はプレミアリーグ(英1部)の過去2シーズンから勢いを上げ、今2023/24シーズン第31節を終えた時点で1位の座をキープしている。現在チームに所属している日本代表DF冨安健洋は、その活躍ぶりから世界中に多くのファンを抱えるワールドクラスの人物となった。


一方のアーセナル女子もまた好調で、今年3月31日に開催されたFA女子コンチネンタルリーグカップの決勝戦では、強豪チェルシー女子を相手に1対0で勝利。昨年から2年連続の優勝を勝ち取った。また英1部の女子スーパーリーグ(WSL)では、2011年のリーグ開始から現在まで3度の優勝を遂げており、直近3シーズンはいずれも3位以内の成績をキープしている。


男女ともに好調と言える現在のアーセナル。そんなクラブが改めて着目したのが女子チームの歴史だ。その背景にはキーワードとして「サッカーの発展」が大きく関係している。サッカーは時代の変化と共に膨大な時間をかけて進化していくもの。近年それが顕著にみられるのが女子サッカーだ。




エミレーツ・スタジアム 写真:Getty Images

時代とともに進化する女子サッカー


今年3月3日、アーセナル女子はホームであるエミレーツ・スタジアムで行われたトッテナム・ホットスパー女子との“ノースロンドンダービー”に1-0で勝利。会場には6万50人もの観客が集結し、2月に記録したアーセナル女子VSマンチェスター・ユナイテッド女子(6万160人)に続きWSL史上2番目の動員数を記録した。


いまやチケットは完売、今季ホームゲームの平均観客数は3.5万人を誇るアーセナル女子だが、この快挙は決して一夜で成し得たことではない。同クラブは女性史月間ページで「これまで手にした数々の輝かしい成績以上に、レイチェル・ヤンキーやケリー・スミス、エマ・バーン、ジェーン・ラドローなど多くのレジェンドたちの活躍が現在プレーするサッカー選手たちに大きな影響を与えており、それら過去のプロセスこそが今後の発展を構築する上で最も重要だ」と記した。


また、今回のノースロンドンダービーではグラウンドスタッフやテクニカルチームが全て女性であったことにも触れ、ピッチ内外を問わずサッカー界で働く女性にその機会を提供するため組織と協力していることを示した。これは、英国女子サッカー界が時代と共に刻々と進化していることを証明するエピソードと言えるだろう。


ビビアン・リア 写真:Getty Images

私がサッカー選手になった理由


現在アーセナルのアカデミーで活躍しているFWビビアン・リア。家族の影響もあり2歳の頃からサッカーが身近な環境で育ったという。リアが本格的にサッカーに情熱を注ぐきっかけとなったのは、チームプレーの面白さを知ったこと。世界的に名高いリオネル・メッシやロナウジーニョにも影響を受けたというが、最も影響を受けたのがアーセナル女子伝説のMFジョーダン・ノッブス(現アストン・ビラ女子)。


『私はジョーダンのプレースタイルやビジョンが好きでいつも観ていた。実際の試合もメドウ・パーク(アーセナル女子のホームスタジアム)まで観に行ったりした。中学生になった年にテレビで女子サッカーが放映され始め、その年にアーセナルがWSLで優勝!その瞬間を見ることができてとても嬉しかったわ』


リアは今年2月14日に行われた女子コンチネンタルカップ準々決勝のロンドン・シティ・ライオネス戦に途中出場し、アカデミー選手でありながら17歳でトップチームデビューを飾った。幼少期からグーナーとして応援していたクラブの試合に選手として立ったリア。サポーターたちの熱い想いを胸に、これからどんな活躍を見せてくれるか楽しみだ。




アーセナル サポーター 写真:Getty Images

私がグーナーになった理由


幼い頃からサッカーに触れ実際にプレーもしていたスティービーとマラル。この2人へのインタビューも女性史月間ページに掲載されている。大人になった今も週末はロンドン拠点の草の根サッカーチーム『Baesianz FC』で過ごしているという彼女たち。2人はアーセナル女子の熱烈グーナーだ。


スティービーの父親と姉は熱狂的なアーセナルファン。そのためグーナーへのレールも自然と敷かれていた。アーセナルの試合を見ていると家族を身近に感じるという。そんなスティービーの記憶に残っている幼少期の出来事は、当時アーセナルで活躍していた元フランス代表選手FWティエリ・アンリからウインクしてもらったこと。アンリは試合前のウォーミングアップ中だったそうだ。


一方のマラルもサッカー好きな父親がいる家庭で育った。しかし、マラルの父は特定のチームを応援していた訳ではなかった。そのため周囲の影響ではなく、自分自身でグーナーになることを決めたマラル。そのきっかけは、マンチェスター・ユナテッド(マンU)のサポーターである友人だった。当時、友人宅に誘われマンU対アーセナルの試合を観戦していたマラルは、選手たちのプレーにすっかり魅了され、気付くとアーセナルに夢中!そのままグーナーになることを決めた。


彼女たち曰く「今とは違い、数年前は女子サッカーの試合を観ることがとても難しかった」と。それはある意味で、過去との比較ができるほど女子サッカーが発展したことを証明している。


自分がサポーターになったきっかけを辿ってみれば、そこにはサッカーの発展に関する気づきがあるかもしれない。アーセナルの女性史月間ページは現在も公式サイトから閲覧可能だ(2024年4月7日時点)。ここで紹介した以外にも多くの興味深い記事が掲載されている。気になった方はぜひ覗いてみてほしい。

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