町田ゼルビアは“ブラック体質”なのか。親会社の評判から検証

2025年4月12日(土)14時0分 FOOTBALL TRIBE

黒田剛監督 写真:Getty Images

4月6日に光文社のニュースサイト『SmartFLASH』が報じた町田ゼルビア黒田剛監督のパワハラ疑惑。オーナー企業の株式会社サイバーエージェントの藤田晋社長がその日のうちに、X上で完全否定し、さらにクラブ公式サイトに、特別調査委員会による調査報告書の全文を公開した。


光文社から届いた質問状に対して「クラブとは利害関係のない特別調査委員会を設置」した上で、黒田監督以下、フットボールダイレクター原靖氏、パワハラ被害を訴える3氏に加え、17人のコーチ、スタッフへのヒアリングを基に調査報告書を作成したとしている。


しかしながら、これを利害関係のない“第三者委員会”の調査によるものと受け取るには少々無理がある。調査に当たった弁護士は山岡通浩弁護士をはじめとする「山岡総合法律事務所」所属の計3人によるもので、“完全なる第三者”とは言えないのではないか。


ここでは、町田側が取った対応の是非を問うとともに、親会社のサイバーエージェントの企業体質も絡めて検証していきたい。




Jリーグ 写真:Getty Images

Jリーグによる調査は


Jリーグは町田に調査と報告を求めているが、町田は報告書を提出していないことも明らかとなった。Jリーグにはパワハラに関する同様の情報が複数寄せられており、今後、Jリーグが町田関係者への事情聴取を含めた直接調査に着手する可能性がある。


この事実からも、Jリーグ側は町田側が行った調査について「“第三者”によるもの」という部分に疑義を感じているのではないのか。光文社に対して示した調査報告書において、証言している者のほとんどが町田に雇われている身であり「パワハラ行為がありました」などと口を滑らせてしまったら、自身の立場が危うくなることは自明の理だからだ。


日本サッカー協会(JFA)が設置している相談窓口にも複数の通報があったとし、Jリーグは具体的な証言としてパワハラの疑いがあると認識した上で、改めて町田側に調査と報告を要請している。


町田側は「確認が済んでいる」として幕引きを図ろうとしているが、Jリーグの調査次第では、新たな事実が明るみとなる可能性もあるだろう。


町田ゼルビア 写真:Getty Images

公開された調査報告書を読み込んだ印象


筆者は会社員時代、労働組合の幹部を務め、就業規則や労働協約の改定に加え、社内のハラスメント問題にも直面し、どう決着を付けるべきか頭を悩ませた経験がある。


山岡総合法律事務所による調査報告書を読み込んだ上で抱いた印象としては、“黒とも白とも言えないグレー”なパワハラ行為はあえて認めつつ、“ここから先は確実にアウト”といった部分については真っ向から否定するという、非常に上手な落としどころを見付けていると感じた。


現時点で事実としてあるのは、被害を受けたコーチが黒田監督からの長時間にわたる叱責や、ベンチ入りの禁止、遠征先でも前泊が許されないなどのパワハラ行為を受けたとして、適応障害を発症し、休職に追い込まれたことのみだ。


仮にJリーグ側からの調査が行われるとすれば、町田側からすれば“言った言わない”の水掛け論に持ち込みたいところだろう。一連の行為は録音・録画されたわけではなく、パワハラ行為の事実を証明しようがないからだ。


町田側が恐れているのは、かつて所属した選手やスタッフが黒田監督の具体的なパワハラ行為を証言するケースだ。仮にそんな人物が現れれば、既に公開した調査報告書の全てが意味をなさなくなり、一から調査をやり直すことになるだろう。


ベテラン選手に対して「あいつは造反者」などと呼び「チームの雰囲気を悪くする存在」と公言したり、コーチに対しても「俺が藤田社長に直接報告したら、お前なんかタダじゃすまないぞ」と、クビをチラつかせる黒田監督の発言が『SmartFLASH』の記事で触れられたが、これらを裏付ける第三者からの証言が出てきたとしたら、初動で過ちを犯し収拾がつかなくなったフジテレビや斎藤元彦兵庫県知事と同じ道が待っているだろう。




藤田晋氏 写真:Getty Images

親会社の企業風土がそのまま反映?


ここで一つ視点を変えたい。黒田監督に全幅の信頼を置き、体を張って守っている藤田晋社長が率いる株式会社サイバーエージェント(以下、サイバー社)についてだ。


サイバー社の大卒初任給は、ビジネスコース、クリエイターコース、エンジニアコースで年俸504万円(月給42万円)、エキスパート認定されれば最低年俸720万円という高水準を誇り、IT業界では就活人気でトップクラスだ。


しかしながら、就活サイトを覗くと「超激務」「深夜残業は当たり前」「離職率が高い」というワードがてんこ盛りで、鬱病を発症した元社員も多く、中でも上司からの「詰め文化」があるといった指摘もある。今回のパワハラ騒動も、こうした親会社の企業風土がそのまま反映されているようで滑稽ですらある。


もちろん、就活サイトの書き込みは基本的に悪口が多い。それにしてもこれだけネガティブな意見が多いことには驚きすら感じさせる。もはや「平成」を飛び越えて「昭和」の企業文化だ。


当然ながら、社員側も「ここに骨を埋める」など微塵も思っておらず、独立・転職前提で入社した社員が多いようだ。それは社員の平均年齢33.7歳(2024年9月期時点)に現れており、20代と30代で全社員の8割を占めている。


さらに上司によって“社風に合わない”と決め付けられた社員に対しては退職勧奨の対象となる「ミスマッチ制度」まであるという。運用次第では不当解雇として労基法違反になりかねないリスクがあることを、サイバー社の人事担当者は知っているのだろうか。ある程度の離職者を見越して採用を行う会社は昔からあったが、ここまで開き直った人事を行う会社があることに、時代の流れを感じてしまう。


これは、今2025シーズン前に17選手が加入する一方で、24選手もの選手を放出し、コーチ陣も大量に入れ替えた町田の姿そのものではないかとも感じる。サイバー社の企業風土をそのままサッカー界に持ち込んだ結果として生まれたのが町田ゼルビアというチームなのだと、妙に納得させられてしまうのだ。

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