水泳日本代表のサラリーマンスイマー柳沢駿成から勇気をもらった

2025年4月14日(月)16時0分 スポーツ報知

柳沢駿成

◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」

 タンスの奥にある水着とゴーグルを引っ張り出した。競泳の日本選手権(3月、東京アクアティクスセンター)で柳沢駿成(としなり、27)=スウィン高島平=を取材して、心に火がついたことが理由だ。大学まで水泳部だったが、最近はプールから足が遠のいていた。

 柳沢は男子50メートル平泳ぎで2位に入り、7月の世界選手権(シンガポール)代表に内定。全くのノーマークで、失礼ながら「誰だ」と取材に行った。驚いたことに、彼は普段はフルタイムで働くサラリーマンという。プール関連の設備を扱う会社で営業担当。大学までは“無名”で、社会人になってからは働きながらジムや市民プールに通う日々。趣味が高じて日本代表に…。そんな夢物語のような事象に興奮した。

 50メートルは特殊だ。乱暴に言えば、適した技術と筋力があれば速い。2008年の北京五輪、女子50メートル自由形で銀のトーレス(米国)は当時41歳。16年リオ五輪、男子で勝ったアービン(米国)は、同種目史上最年長の35歳だった。他の種目に比べれば、非凡な才能がより際立つ。柳沢も例外ではないだろう。ただ、3月に公開された代表合宿でその姿を改めて見て、また驚いた。筋骨隆々。他の代表選手と並んでも遜色ない。練習拠点も指導者もいない環境で、彼のストイックさは十分に伝わってきた。

 残業で市民プールの利用時間を過ぎてしまうこともある。それでも「水泳が、仕事を頑張れるモチベーションにもなっている」と言う。どこか遠い存在のように感じる日本代表に、私と同じサラリーマンがなった。柳沢に挑戦する勇気をもらった。(競泳担当・大谷 翔太)

 ◆大谷 翔太(おおたに・しょうた) 2018年入社。大相撲を経て五輪・ラグビー担当。24年パリ五輪などを取材。

スポーツ報知

「日本」をもっと詳しく

「日本」のニュース

「日本」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ