巨人・甲斐 球団64年ぶり2番・捕手「僕もびっくり」 V撃&零封リード!攻守で1-0立役者
2025年4月16日(水)5時30分 スポーツニッポン
◇セ・リーグ 巨人1−0DeNA(2025年4月15日 東京D)
巨人・甲斐拓也捕手(32)が15日、DeNA戦で2番起用に応えた。打っては決勝の先制適時打、守っては完封リレーに導く好リードで、チームの連敗を3で止めた。巨人の「2番・捕手」は、1961年の藤尾茂以来、実に64年ぶり。主力2選手の出場選手登録が抹消された非常事態下で、新司令塔が攻守に存在感を示して勝率を5割に戻し、3位に浮上した。
勝利のハイタッチで表情にようやく笑みが広がった。甲斐は自ら放った決勝の先制打を、捕手としても好リードで守り抜いた。移籍2度目のお立ち台で、巨人の「2番・捕手」が64年ぶりとアナウンスされると場内が大きくどよめいた。「今の(反応)が全てだと思います。僕もびっくりしたので」と笑うと、「でも、どこだとしてもやることは変わらない」と信念を続けた。
開幕前日の3月27日だった。「徳川家康が好きなんで」と天下統一を果たした徳川家康が関ケ原の戦い(1600年)を前に必勝祈願したとされる神田明神に参拝。「不自由が当たり前と考えれば不満は生じない」を意味する「不自由を常とおもへば不足なし」。自ら大事にしている家康の遺訓を心に刻み、新天地での開幕を迎えた。
チームは11日からの広島戦で今季2度目の同一カード3連敗を喫し、借金1の5位に転落。加えて、不調の坂本がついに2軍降格し、打線をけん引してきたキャベッジも負傷の影響で登録を外れる緊急事態に陥っていた。今季15試合目に訪れた窮地、不自由なチーム状況にも、自分の仕事を貫く甲斐が救った。
ソフトバンク時代の21年5月22日オリックス戦以来、自身2度目の2番起用。巨人では「2番・捕手」は、1961年9月23日国鉄戦の藤尾以来、64年ぶりだった。打率・352、そして・390と高い出塁率を買われての抜てきだった。3回1死一、三塁で華麗な右前打で先制点をもたらした。ジャクソンの外寄りの150キロ直球に「食らいついていきました」。育成出身らしく、「過去の苦労は忘れず謙虚に」という家康が残した「心に望みおこらば困窮したる時を思い出すべし」の言葉も体現していた。
お立ち台では「今日は温大のおかげです。皆さん、拍手をお願いします」と自分のことよりも、真っ先に井上を称えた。巨人の10番はいつだって、人の良さがにじみ出て、誰よりも仲間思いで頼りになる。(村井 樹)
▽藤尾茂という男 鳴尾(兵庫)で春の選抜甲子園で活躍し、1953年に巨人入団。55年には1勝3敗で迎えた南海との日本シリーズ第5戦で3番に抜てきされ、初回に先制3ラン。逆転での日本一に貢献し、正捕手に定着した。翌56年から4年連続で球宴出場、ベストナイン受賞。晩年は外野にコンバートされたが、西鉄の「知将」三原脩監督は南海・野村克也と総合力は互角と評価。通算成績は868試合で打率.253、74本塁打、346打点。俊足で長打力があり、闘志あふれるプレーで主将も務め、戦後の巨人軍最強の捕手とも称される。背番号は主に9。22年10月8日没、享年88。