阪神・伊原が初先発初勝利「助けてもらった」智弁学園高の先輩・村上直伝、改良カットボールで進化
2025年4月21日(月)5時15分 スポーツニッポン
◇セ・リーグ 阪神8-1広島(2025年4月20日 甲子園)
ルーキー左腕が借金生活突入の危機を救った。阪神のドラフト1位・伊原陵人投手(24)が、20日の広島戦でプロ初先発初勝利。5回を4安打無失点、無四球5奪三振だった。前日までチームが1勝7敗1分けだったホーム開催で、重圧をはねのけ開幕から7試合、13回1/3を無失点。球団新人では18年高橋遥人以来の初先発初勝利となった。デビューが救援だった左投手の初先発初勝利はドラフト制以降、球団初の快挙。2位再浮上に大きく貢献した。
最後のアウトをベンチで見届けると、伊原はホッと息を吐いた。先輩たちから頭をポンと叩かれ、笑みがこぼれる。虎の即戦力左腕が12球団の新人一番乗りで白星を手にした。
「野手の方に助けてもらった。楽に投げられました」
持ち前の制球力が随所で光った。4回2死一、二塁では、菊池を内角直球で見逃し三振。思わずほえた。「自然とガッツポーズが出ましたね」。5回2死では、二俣への5球目を投げる前に女房役・坂本のサインに7度も首を振った末、一飛に封じた。物おじしない度胸で要所を締め、「坂本さんとお互い意思疎通しながらできました」と振り返った。
ずっと追い続けてきた背中がある。智弁学園高(奈良)時代、2学年先輩だった村上だ。初対面は、1年生ながらAチームの練習に入った春季大会終了後。「キャッチボール空いてる?一緒にせん?」と声をかけてもらった。そこから、一挙手一投足に注目。村上が自主練習中、黙々と外野をランニングしているのを見ると、翌日からまねしてルーティンに取り入れた。
「ずっと、村上さんは目標です」
プロ入り後も、その師弟関係は変わらなかった。伊原は春季キャンプ中、カットボールの改良に着手。「スライダーと同じ軌道だったんですが、差別化ができていなくて。“これじゃ通用しない”と」。真っ先に村上にアドバイスを求め、「カットボールは“曲がらなくてもいい”くらいの気持ちで」との金言を授かった。
「自分から見て曲がってないくらいにしようと。握りはほぼ真っすぐと同じに変えて、気持ち、少し、ずらすだけ。打者の反応は変わりましたね」
伊原が主に右打者の内角に投じる139〜143キロの球。ネット速報やテレビ中継の球種表示では「ストレート」と表示されることが多いが、「新しく覚えたカットボールです。映像ではわからないと思います」。まさに村上の代名詞「真っスラ」に近い球に仕上がった。この日は3回1死一、三塁で二俣への9球目に投じ、ファウルを打たせた直後にスライダーで空振り三振斬り。課題だった「カットボールとスライダーの差別化」が生きたと同時に“師匠”の武器で、初勝利への道を切り開いた。
「点を取られなければ負けない」。それが伊原の信条。ゼロにこだわり、白星を重ねていく。(松本 航亮)
◇伊原 陵人(いはら・たかと)2000年(平12)8月7日生まれ、奈良県橿原市出身の24歳。晩成小1年から「晩成フレンズ」で野球を始め、八木中では1年時は柔道部、2年から軟式野球部。智弁学園では3年春に甲子園出場。大商大では1年春から関西六大学リーグ戦で登板し、通算15勝1敗、防御率0.91。NTT西日本を経て24年ドラフト1位で阪神入り。1メートル70、77キロ。左投げ左打ち。