仙台の自宅で津波・楽天Vに感動した少年、「阪神」30年の年にオリ入団…「夢届けられる選手」へ全力
2025年4月25日(金)16時47分 読売新聞
麦谷祐介(2024年10月)
オリックスで開幕一軍をつかんだドラフト1位新人、麦谷祐介(22)(富士大)が、首位を走るチームで存在感を放っている。仙台市出身。小学2年の時に東日本大震災に遭った経験から、「夢や感動を届けられる選手」を目指し、全力プレーを続けている。
1番中堅で先発した15日の西武戦。一回、中前打で出塁し、すかさず盗塁を試みた。捕手が悪送球すると、三塁へ。悠々セーフのタイミングだったが、「チームに勢いを与えたい」と、猛然と頭から滑り込んだ。
楽天の本拠地近くで育ち、「たぶん、当時の選手全員からサインをもらった」というほどの楽天ファンだった。2011年の東日本大震災で自宅に大きな被害はなかったが、2階の窓から津波が見えたといい、一時は避難所生活を送った。
それから2年後。楽天が巨人を破って初の日本一に輝いた瞬間は、一塁側の観客席で応援していた。九回、前日に完投した田中将大(現巨人)が登板し、最後の打者を抑えると、大歓声に包まれた。被災地を勇気づけるスポーツの力を体感し、「野球ってこんなにすごいんだ」と感動した。
大学で俊足強打の外野手として活躍し、オリックスに入団した。阪神大震災後、チームは「がんばろうKOBE」を合言葉に復興を後押ししてきた歴史がある。くしくも今年で30年。麦谷も「ファンの方も特別な思いがある」と、おのずと表情が引き締まる。
守備固めの起用が多い中、出場17試合で打率2割3分8厘、1打点、2盗塁。必死に食らいつく日々だが、大きなガッツポーズで味方を鼓舞するなど、プレーできる喜びを全身で表す。「(子どもの頃に)誰かのために戦っている人の強さを知った」。二つの被災地に思いをはせながら、グラウンドを駆け回る。(大背戸将)