和菓子職人と二刀流 同大ラグビー部の異色新監督「久々に勝てて良かった」立命大に逆転勝ち名門再建へ弾み
2025年4月28日(月)6時0分 スポーツ報知
後半37分、35―31からダメ押しのトライ後を決める同大・フッカー荒川駿(中)と喜ぶ選手たち
◆ラグビー▽亀岡市ラグビー祭 同大42—31立命大(27日・サンガスタジアムbyKYOCERA)
「第21回亀岡市ラグビー祭」が27日、京都・亀岡市のサンガスタジアムbyKYOCERAで行われた。同大が立命大から6トライを奪い、42—31で逆転勝ちした。和菓子店の店主でもある永山宜泉(ぎせん)監督(54)が2月に就任。秋の関西大学Aリーグで3年続けて黒星を喫している相手を退け、名門再建に向けて弾みをつけた。また、“二刀流監督”が作る商品を森口登生記者が「食べてみた」。
ノーサイドの直後、同大フィフティーンは会心の表情でハイタッチを交わした。前半は10点差をつけられたが、後半は28—31の同34分にCTB森岡蒼良(そら、3年)=京都成章=が逆転トライを奪うなど、4トライを挙げた。3年続けてリーグ戦で敗れている立命大に勝利し、OBの永山監督は「ずっと負けていたので、久々に勝てて良かった」と喜んだ。
新指揮官は、大阪・門真市に2店舗ある和菓子店「まむ多」の店主と監督業を両立している。この日も「ゴールデンウィークで忙しい。かしわ餅やちまきを朝からやってきました」と午前4時から8時半まで商品を作り、同9時ごろ発の電車で試合会場に移動した。「年中無休なんですよね」と“超多忙”な日々を送るが「この商売だから、しょうがない」と、笑い飛ばすほどの体力の持ち主だ。
卒業後は社会人チームのワールドでプレー。経営者として培ってきた経験は指導にも生きている。「学生の時にできていたら『いい大人になっていただろうな』と思うことから教えている。ラグビーがうまくて、社会の規律を守れなかったら意味がない」。2月の就任以来、「考えて動ける人間になってほしい」と伝え続け、選手たちは、あいさつやトイレ掃除などから徹底した。指揮官は「『同志社ラグビー部だ』というところを見つめ直すようになってきた」と、成長を感じている。
リーグ優勝は15年度が最後で、23年度は初のBリーグ降格の危機に陥った。「一昨年、去年と散々、負けている。ラグビーは格闘技。うちはフィジカルがない。小さい。体を大きくしていかなあかん」と課題を指摘した。名門再建は、異色の監督に託された。(森口 登生)
◆永山 宜泉(ながやま・ぎせん)1970年6月24日生まれ。54歳。同志社香里中、高を経て同大に進学。大学時代のポジションはフッカー。96年に日本代表合宿に招集されたが辞退し、父の死去に伴い、現役を引退。和菓子店「絹笠」を継ぎ、現在は「まむ多」を経営。和菓子職人をしながら同大、摂南大のコーチを歴任。
食べた瞬間に、思わず口角が上がった。ふわっふわの皮に、ぎっしり詰まったあんこ。今まで食べてきた「どら焼き」は、どうしてもあんこを主役に感じがちだったが、看板商品の「楠(くす)どら」は全く違う。互いを生かし合う味のハーモニーに、15人で攻守を繰り広げるラグビーさながらのチームワークを感じた。
「今朝、監督が作った大福です」と、いただいたメロンのフルーツ大福も、外の皮と白あんとメロンのバランスが絶妙だった。多大な幸福感とともに、その味で和菓子を学んだ気にさえなった。23歳の私にまで取材後に「今後も同志社大学ラグビー部をよろしくお願いします」と、お辞儀をしてくれた永山監督の人柄を感じるような2品だった。(森口 登生)
◆各界の主な二刀流監督
▽製麺業 甲子園ボウルで11度、ライスボウルで1度優勝の関学大アメフト部・鳥内秀晃前監督は製麺業を営んでいた。
▽生命保険代理店経営 24年の春季大阪府高校野球大会で初優勝した大院大高の辻盛英一監督は、18年から生命保険代理店「ライフメトリクス」を経営。過去に大手保険会社で13年連続売り上げトップを記録。
▽コンビニ副店長 24年のセンバツ21世紀枠で甲子園初出場した別海(北海道)の島影隆啓前監督は、道内で最多の店舗を展開するローカルコンビニ「セイコーマート」しまかげ中春別店の副店長。店内で作った弁当などを販売する名物「ホットシェフ」の調理を担当していた。