井上尚弥の拳を世界一受けた男が証言…なぜ強いのか「パンチを言葉にすれば『バゴーン!』って感じ」

2025年5月2日(金)5時0分 スポーツ報知

太田トレーナー(左)のミットに打ち込む井上(大橋ジム提供)

 世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥が4日(日本時間5日)、米ラスベガスのT—モバイルアリーナでWBA世界同級1位ラモン・カルデナスとの防衛戦を行う。連日ミット打ちの相手を務めているのが、大橋ジムの太田光亮トレーナー(36)だ。尚弥がパウンド・フォー・パウンド(全階級を通じての最強ランキング)1位、ラスベガスのメインイベンターに至る道を最も近い場所で見てきた。「モンスターのパンチを世界一受けた男」がスポーツ報知のインタビューに応じ、その強さの秘密を明かした。

  * * *

 太田トレーナーは、尚弥がスーパーフライ級王者だった17年12月のヨアン・ボワイヨ(フランス)戦の10日ほど前、尚弥の父・真吾トレーナー(53)からミット担当を受け継いだ。以来、約7年半にわたりミット越しで対話を続けてきた。

 「尚弥さんのパンチを言葉にすれば、『バゴーン!』って感じですね。目の前で大きなものが破裂したみたいな感覚。パワーを下半身から連動して上半身に伝え、バランスも崩さず、連打の中でも全部のパンチを強く打てるのがすごい」

 破壊力だけではない。尚弥を「世界一」と感じる部分は他にある。

 「何が一番驚くかといえばボクシングIQの高さです。ものすごくボクシングを発想する力、それを日々の練習の積み重ねでやり遂げる力がすごい」

 努力の蓄積が、IQボクシングの地盤を築いている。

 「やっぱり世界一級品。こっちも他の選手より頭を使う」。型どおりのコンビネーションだけではなく、高度な攻防の駆け引きや流れの中でのミットワークが、試合の設計図となる。

 試合前は連日3〜6ラウンド、ミットを持つ。その衝撃の蓄積は体にも表れる。「夜ご飯を食べている時に、お箸を持つ手が震えたりすることも。前腕部も異常に発達して太くなった」と腕をさする。ただ「尚弥さんは『太田さんとコンビ組めてよかった』とか『練習してたパンチがハマりましたね』とか言ってくれる。やっぱりうれしい」。ふとした言葉に心が救われる。

 まずはカルデナスとの防衛戦のクリアだが、その先も続く。5階級制覇を懸けたフェザー級挑戦、中谷潤人との東京ドーム決戦などビッグマッチが計画される。「ここまでの選手になるとは思っていなかった。とっくに僕の想像を超えている」と語る尚弥の“相棒”は「僕はサポートし続けるだけ。行くとこまで行っちゃってほしいですね」と笑った。

(勝田 成紀)

 〇…若々しさを誇る36歳の太田トレーナーは、尚弥の美肌の指南役でもある。「僕はそのトレーナーでもあるんで」。スキンケア用品をすすめたり、肌を乾燥について、モンスターにモイスチャーのアドバイスもする。自身も肌の手入れはもちろん「アスタキサンチン、ビタミンC、Dとかサプリをおやつ感覚で摂っている」と体の中からのケアも怠らない。「トレーナーという職業は関係なく、若くいたいんです。まだ22歳だと思ってるぐらいなんで」と笑った。

 ◆太田 光亮(おおた・こうすけ)1988年8月9日、横浜市生まれ。36歳。アマチュアで3戦3勝の成績を残し、2006年6月に大橋ジムからプロデビュー。通算成績は10戦6勝(3KO)4敗。16年に同ジムのトレーナーに就任。22年世界ユース選手権優勝などアマ7冠でプロ3戦3勝(3KO)のホープ・坂井優太、アマ8冠で5月28日にプロデビューする荒竹一真らも担当。

◆ベガス広告で「怪物」襲来歓迎

 〇…ラスベガスの街に「怪物」が襲来した。試合前の会見や前日計量が行われるカジノ&ホテル「MGMグランド」の壁面は、漢字で「怪物」と書かれた尚弥—カルデナス戦の巨大広告が掲げられている。目抜き通りのストリップ大通りの複数の電子広告にも、「怪物」がたびたび登場。スマホで撮影する人も多数見られた。

スポーツ報知

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