【NHKマイルC】19年以来の参戦で「アドマイヤ軍団」が思い出の地に帰ってきた 友道調教師が天国のオーナーにV届ける

2025年5月6日(火)6時0分 スポーツ報知

前走以上の仕上がりで臨めそうなアドマイヤズーム

◆第30回NHKマイルC・G1(5月11日、東京競馬場・芝1600メートル)

 3歳マイル王決定戦、第30回NHKマイルC・G1は11日、東京競馬場で行われる。朝日杯FS覇者アドマイヤズームを送り出す友道康夫調教師(61)=栗東=には19年アドマイヤマーズ以来、3勝目が懸かる。JRA・G1・22勝を挙げる西の名門を開業当初から支えてくれた「アドマイヤ軍団」の故・近藤利一オーナーとの思い出を胸に決戦の舞台へ乗り込む。

 思い出の場所に帰ってきた。アドマイヤズームがG1・2勝目を狙うNHKマイルCは「アドマイヤ軍団」にとってアドマイヤマーズが勝った19年以来の参戦。それは名物オーナーの近藤利一さんが生前最後に勝ったG1だった。当時はがんを発症後、約1か月ほどで療養先での観戦。「勝った後に報告の電話をして、週明けに自宅へ行きました。喜んでいましたね」と友道調教師は振り返る。それから約半年後。近藤さんは天国へ旅立った。

 厩舎の礎だった。02年11月の開業直前。突然、牧場関係者から「近藤さんが全面的に面倒を見ると言っている」と告げられた。同年夏に偶然、牧場で一度会い、名刺を渡した程度。しかし、競馬界に縁故もない友道師にはありがたい助け船だった。「大手牧場や人とのつながりをつくってくれた。アドマイヤが厩舎にいるだけでいろいろな場所で一目置いてもらいました」。

 大きな期待に成績で応え、豪快だが情に厚い人柄に触れ、深まっていった信頼関係。「厳しかったよ。馬の故障などはね。ただ、すごく怒っても後には引かない。翌日にはケロッとしていました」。アドマイヤジュピタで厩舎のG1初制覇となった08年天皇賞・春では、悲願の盾を手に号泣するオーナーの姿に思わずもらい泣き。亡くなった直後にアドマイヤマーズで勝った19年香港マイルではオーナーが現地で着用予定だった濃紺のスーツに身を包んだ。「いい報告ができると思います」。この時も涙が止まらなかった。

 遺志を引き継いだのが妻の旬子さんだ。「競馬への情熱がすごい。今まではノーザンファームの馬が中心だったけど、2年前からいろいろな牧場を回っていますよ」。アドマイヤズームも社台ファームを訪れた時に動きやバランスの良さにひかれ、セレクト1歳セールで落札した。今は1世代6頭ほどだが、一頭一頭を温かい視線で見守る。

 アドマイヤ軍団に新しい風が吹き込み、父となったアドマイヤマーズは初年度産駒から桜花賞馬のエンブロイダリーを出した。時は流れたが、友道師にとっては6年前がつい最近のような感覚だ。「知っている人と、まだ近藤さんの話で盛り上がったりするんですよね。あんな幸せな人はいないんじゃないかな」。昨年からG1で着る“勝負服”になった、あの濃紺のスーツを今回も着用予定。恩人への感謝を胸に、愛馬を決戦へ送り出す。(山本 武志)

 【アドマイヤズーム態勢万全】万全の態勢で頂点を取りに行く。アドマイヤズームは前哨戦のニュージーランドTは首差2着。一度抜け出したところで勝ち馬の目標になったが、友道調教師に悲観する様子はない。「内容はよかったし、本番前に長距離輸送も経験できましたから」。1週前は栗東・CWコースでラスト1ハロン10秒7の超抜伸び。前走時より明らかに負荷を強めて、仕上げている。

 厩舎に新風を吹き込む存在だ。昨年まで、管理馬でデビューから3歳5月までに重賞を勝った馬は16頭。すべての馬がのちに3歳春のクラシックG1に駒を進めた。芝中長距離が主体の厩舎にとって、クラシックと無縁の実績馬は初めてになる。

 「朝日杯(FS)の後に少し、皐月賞もという話にもなったけど、ジョッキーなどの話も聞いて、マイル路線に決めました」と説明。ディープインパクトなどクラシック路線を歩むことを宿命づけられた種牡馬が不在な今、様々な路線に枝葉を広げる。「うちも最近は短距離馬だっているし、種牡馬によって柔軟に、という感じですね」。アドマイヤズームは厩舎の“多様化”を体現する存在でもある。(山本 武志)

 ◆19年VTR 前走の桜花賞を勝ったグランアレグリアが単勝1.5倍で圧倒的1番人気だった。皐月賞4着からの転戦で2番人気だったアドマイヤマーズは外枠でもあり、道中は中団からの追走。直線では外から力強く脚を伸ばし、2着のケイデンスコールに半馬身差をつけ、G1・2勝目を挙げた。グランアレグリアは直線で伸びあぐねたうえ、ダノンチェイサーに不利を与えたとして、4位入線から5着に降着となった。

 ◆近藤旬子オーナー 昨春にアドマイヤベルが勝ったフローラSで約3年9か月ぶりの重賞制覇。利一オーナーからの引き継ぎ馬以外では初の重賞勝利だった。昨年暮れの朝日杯FSではアドマイヤズームでG1初勝利。今年に入ってもアドマイヤマツリが福島牝馬Sを勝利。また、アドマイヤデイトナはUAEダービーを制し、ケンタッキーダービーまで駒を進めた。

スポーツ報知

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