「ここでのタイムは意味がない」と佐藤琢磨。練習走行4日目は12番手も冷静「しっかりと分析して予選に臨みたい」

2025年5月17日(土)15時25分 AUTOSPORT web


 2025年のNTTインディカー・シリーズ第6戦『第109回インディアナポリス500マイルレース』は、プラクティスから天候に翻弄されて始まった。


 プラクティス初日の5月13日(火)は天気予報が示した時間より早く落ちてきた雨で2時間半遅れて始まり、2日目の14日(水)も前夜の雨の影響で1時間ほど遅れての走行開始に。4月のオープンテストで大クラッシュを演じたレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングの佐藤琢磨は、プログラムの遅れを取り戻すために1周でも多く走りたかったが、天候は味方してくれなかった。



 火曜日のプラクティス初日はウエイトジャッカーのトラブルに見舞われた琢磨。2日目もこのトラブルが完治されておらず、それが直ったと思えば今度は左リヤのブレーキトラブルが出て、そのタイミングでガレージに戻ることに。ガレージでブレーキの修復と同時に予選シミュレーションに臨むためマシンは予選仕様に変更された。


 前車の風の影響を受けない“ノートゥ”のスピードでは10番手とまずまずのスピードになったものの、琢磨自身は「まだやりたいことの3割くらいしかできていない」とフラストレーションが溜まり気味。オープンテストのシェイクダウンでは周囲を驚かせるスピードもあったが、その域にはまだまだ達していなかった。



朝の記者会見に臨む佐藤琢磨(中央)。左はマイク・ラニガン、右はボビー・レイホール

 プラクティス4日目は、ターボのブーストも上がるファストフライデー。土曜、日曜の予選を想定した走行となり、ほぼ1台ずつのアテンプト(タイムアタック)となる。


 正午から6時間のプラクティスが予定された16日(金)、インディアナポリス・モーター・スピードウェイ(IMS)は晴天に恵まれた。しかし、それに比例して気温が上がったことに加え、風も強まって想像以上に難しいコンディションとなった。


 琢磨の75号車もセッション開始時刻にあわせてスタンバイし、コースが空いたタイミングを見計らって最初のアテンプトに出た。しかし2周目にアテンプトをやめてピットに戻ってくる。マシンに異常があったわけではないが、気温の高さと強風の影響もあってダウンフォースが足りず「マシンが曲がらない」という。コース上ではチーム・ペンスキーのスコット・マクラフリンや、チップ・ガナッシ・レーシングのアレックス・パロウが231マイル(mph)のスピードを叩き出している。


 コンディションに合わせてセッティングを小変更し、ニュータイヤに履き替えて2度目のアテンプトに臨んだ琢磨は、計測2周目に226マイルまでスピードを伸ばしたものの、またもや途中でピットボックスに戻ってきた。


 琢磨の前後にも他のマシンがアテンプトに出ていたが、最後まで4周のアテンプトを走り切るドライバーは少数だった。1周のタイムラップこそマークするが、2周目、3周目とタイヤのグリップが落ちるとマシンをピットに向けたのだ。チップ・ガナッシ・レーシングのキフィン・シンプソンなどはグリップを失いターン4でウォールの餌食となっていた。


 それだけ気温と路面温度、さらに強風がアテンプトを難しいものにしていたのだろう。さらに週末の天気予報では金曜日ほど気温が上がらないと予想されているため、必要以上にファストフライデーの暑いコンディションに合わせる必要があるのか、という疑問もあったと考えられる。



3度目のアテンプトを走る佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)

 琢磨は2度のアテンプトの後、一度ガレージにマシンを戻した。あえて悪いコンディションの中でリスクの高いアテンプトを避け、気温が下がるのを待ちながらダンフォースをやや増やしたセッティングに変更した。


 琢磨のクルマがピットに戻ってきたのは、セッションの残り時間も2時間を切ったころ。ヘルメットを被った琢磨は、ライバル勢のタイムを窺いながら、コースインのタイミングを待った。琢磨の直前にアテンプトしたメイヤー・シャンク・レーシングのフェリックス・ローゼンクビストは、231マイル台の走行をしており、コンディションは良くなっているのは間違いなかった。気温、路面温度ともに下がり、依然として風はやや強かったが琢磨は3度目のアテンプトに出ていく。


 1周のウォームアップの後、タイム計測へ。アタック1周目に231.364マイル、2周目に231.006マイル、3周目は230.906マイル、そして4周目に229.085マイルとうまくタイムを揃えて6番手に浮上する。まだ残り時間はあったが琢磨は走行を切り上げてマシンをガレージに戻した。


 このあとにアテンプトをしたドライバーにタイムを抜かれ、琢磨の最終的に12番手となってファストフライデー終えている。


「最初の2回のアテンプトは気温が上がり過ぎてコンディションが悪く、想定していたダウンフォースにまったく足りていなかったのでマシンを一旦ガレージに戻し、セッティングを変えてタイミングを待ちました」と状況を説明した琢磨。


 3度目のアテンプトについては「4周最後まで走りきって感触も悪くなかったと思います」と述べたうえで次のように続けた。


「タイムを追おうと思えばできたと思いますが、それをやっても意味はないし、『明日の予選前のプラクティスでコンディションに合わせて、しっかり走ろう』ということになりました。ライバルのマシンも速いですけど、しっかりとデータを分析して明日の予選に臨みたいと思います」


 オープンテストの後に大急ぎで組み上げられたマシンで、雨やトラブルでプログラムは遅れており、決して準備万端とは言い難かったが、それでも上位のスピードに近づいてきたのはインディ500を2度制した琢磨らしいところだ。


 プラクティス終了後に予選のアテンプト順を決めるドロー(くじ引き)が行われ、琢磨の長男である佐藤凛太郎がくじを引いた結果、琢磨は21番目のアテンプト順となった。インディ500の予選では過去3年トップ10に残り続けている琢磨だが、17日の予選でどんなパフォーマンスを見せてくれるだろうか。



フランスからアメリカに渡りインディアナポリスを訪れた佐藤凛太郎。右はRLLの須藤翔太メカ

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