欧州スター選手を陰で引き立たせた「縁の下の力持ち」5選

2025年5月18日(日)18時0分 FOOTBALL TRIBE

クロード・マケレレ(左)ジョン・オビ・ミケル(中)ダリオ・シミッチ(右)写真:Getty Images

サッカーの見どころの大きな1つは、お気に入りのスター選手が活躍を見せる姿を見られる点だ。しかし当たり前だが、サッカーは11人でするスポーツである。スター選手の活躍の陰には、派手さはないもののチームを陰で支え重要な役割を果たす「縁の下の力持ち」的選手が不可欠だ。


ここでは、献身的な守備でチームを救った名脇役、戦術理解が高く監督の信頼が厚かった選手、ムードメーカーとしてチームを盛り上げた選手など、欧州サッカー界の知られざる英雄を5人挙げ、スポットライトを浴びることが少なかった選手たちの功績や貢献を今一度、称賛したい。目立たないポジションや役割ながらも、チームの成功に大きく貢献した選手ばかりだ。




ディートマー・ハマン 写真:Getty Images

ディートマー・ハマン(1992-2011)


バイエルン・ミュンヘンの下部組織育ちで、1993年にトップチームデビューした元ドイツ代表MFディートマー・ハマン。当初は右ウイングの控えという扱いだったが、DFローター・マテウスを筆頭に、GKオリバー・カーン、DFクリスティアン・ツィーゲ、DFトーマス・ヘルマーといったドイツ代表選手の中でもまれながら成長した。


1995/96シーズン、オットー・レーハーゲル新監督を迎え、FWユルゲン・クリンスマンなど大型補強を敢行したスター選手勢揃いのバイエルンは「FCハリウッド」などと揶揄される。イレブン同士が協調性を欠く中、若きハマンは途中出場が多いながらも奮闘し、リーグは2位に終ったもののUEFAカップでは優勝。しかし、シーズン後にレーハーゲル監督は解任された。


翌1996/97シーズン、イタリアの知将ジョヴァンニ・トラパットーニ監督が就任すると、ハマンを守備的MFのレギュラーに抜擢しリーグ優勝。その活躍がドイツ代表ベルティ・フォクツ監督の目に留まり、代表デビューも飾った。


しかし同年、順風満帆に見えたハマンを病魔が襲う。脳梗塞の診断が下り闘病生活に入るが、これを克服し、1997/98シーズンにはリーグ優勝は逃したものの、DFBポカール優勝に貢献した。


1998年のFIFAワールドカップ(W杯)フランス大会後、海を渡るハマン。1998/99シーズン、プレミアリーグのニューカッスル・ユナイテッドを経て、翌1999/00シーズンにリバプールに移籍した。守備的MFとして君臨し、2006年途中まで在籍約7シーズンで191試合に出場。FWマイケル・オーウェンらスター選手を下支えする役割を全うした。


特にリバプール在籍中の2004/05シーズン、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)決勝のミラン戦では、負傷を押して途中出場し3-3からのPK戦でも成功。「イスタンブールの奇跡」と呼ばれる3点ビハインドからの逆転優勝を演出した。




クロード・マケレレ 写真:Getty Images

クロード・マケレレ(1991-2011)


2000年代初期のレアル・マドリードは、ジネディーヌ・ジダン、ロナウド、ラウル・ゴンサレス、ルイス・フィーゴ、ロベルト・カルロス、とキラ星の如くスター選手が集い、その後「銀河系集団」と呼ばれる。


そんな中、ボランチとして相手の攻撃を潰し、チームのバランスを保つ役割を一手に担っていたのが、2000/01シーズンにセルタから加入した元フランス代表MFクロード・マケレレだ。その働きぶりは「マケレレ・ロール」と呼ばれ、現代サッカーの戦術に影響を与えたとも言われている。


しかし、当時のフロレンティーノ・ペレス会長はスター選手をかき集めることばかりに執心し、マケレレへの評価は著しく低く、それは年俸にも表れていた。マケレレはチームメイトの後押しも受け年俸アップを求めたものの、フロントが拒否しただけではなく、ペレス会長自らマケレレのテクニックの無さを持ち出しこき下ろした。


これにマケレレは怒り、2003/04シーズンを前にチェルシーに移籍すると、マドリードの失点数は激増。マケレレは、30歳の移籍にも関わらず多額の移籍金を支払ったオーナーのロマン・アブラモヴィッチ氏と、すぐさまレギュラーとして起用したクラウディオ・ラニエリ監督に感謝の意を示すように汗をかき、そのプレースタイルはジョゼ・モウリーニョ監督に代わっても評価され続けた。


一方のマドリードでは、入れ替わるように元イングランド代表MFデビッド・ベッカムが中盤に入るが、ジダン、フィーゴ、グティら攻撃に特長がある選手の中で、ボールホルダーを追い回す役割を担う羽目となり、彼自身のストロングポイントが削がれてしまう結果となった。


ペレス会長の“攻撃偏重”路線は現在もなお続いており、マドリードはDF強化を疎かにした結果、今2025年5月11日のバルセロナとの「エル・クラシコ」では、2点先行したものの前半だけで4失点を喫し敗戦(3-4)。ラ・リーガでの逆転優勝は絶望的となった。


マイケル・キャリック 写真:Getty Images

マイケル・キャリック(1999-2018)


現在、イングランド2部EFLチャンピオンシップのミドルズブラで監督を務めているマイケル・キャリックも、現役時代は戦術眼に長けた守備的MFとして活躍し、2度のW杯(2006年ドイツ大会、2010年南アフリカ大会)も経験した元イングランド代表だ。


ウェストハム・ユナイテッドの下部組織出身で、1999/00シーズンにトップデビュー。トッテナム・ホットスパー(2004-2006)を経て、2006/07シーズンにマンチェスター・ユナイテッドに移籍した。


当時アレックス・ファーガソン監督から全幅の信頼を得て、派手さはないが正確なパスとゲームの流れを読む能力で、同じくボランチを務めていたポール・スコールズとともにチームを安定させたキャリック。在籍中は地味だが不可欠な存在として5度のプレミアリーグ制覇に貢献。2017/18シーズンには主将も務めた。


2013年にファーガソン監督が勇退した後も、デイヴィッド・モイーズ監督(2013-2014)、ルイ・ファン・ハール監督(2014-2016)、ジョゼ・モウリーニョ監督(2016-2018)、オーレ・グンナー・スールシャール監督(2018-2021)といった歴代監督から信頼され、引退する2017/18シーズンまでユナイテッドの心臓であり続けた。


ちなみに引退後の2021年、解任されたスールシャール監督の代行として、3試合のみユナイテッドの暫定監督を務めている。




ジョン・オビ・ミケル 写真:Getty Images

ジョン・オビ・ミケル(2004-2021)


ナイジェリア出身で、ノルウェーのFCリン・オスロで頭角を現した守備的MFジョン・オビ・ミケル。2006年、マンチェスター・ユナイテッドとの争奪戦を制してチェルシーに移籍すると、守備範囲が広く、身体能力を生かしたボール奪取能力やパスセンスにも優れたボランチとして活躍した。


チェルシーの中盤には前述のマケレレ、元イングランド代表MFフランク・ランパード、元ドイツ代表MFミヒャエル・バラック、元ガーナ代表MFマイケル・エッシェンなどスター選手に囲まれる中、守備のタスクを黙々とこなしたミケル。


2011/12シーズンのCL決勝ではバイエルン・ミュンヘンの攻撃を1点に封じ、PK戦の末に優勝した。ラフなタックルで警告が多かったのが玉にキズだったが、地味ながらもジョゼ・モウリーニョ監督(2013-2015)から信頼された選手だった。2016/17シーズンまで実に11年もの間チェルシーに在籍し、2017年、中国スーパーリーグの天津泰達に移籍した。


ナイジェリア代表としても、2度のW杯(2014年ブラジル大会、2018年ロシア大会)を経験。ロシアW杯期間中にには父親が誘拐されるという事件に巻き込まれたが、周囲には一切明かさずプレーするという鋼の精神力の持ち主でもある(父はその後、無事に解放)。




ダリオ・シミッチ 写真:Getty Images

ダリオ・シミッチ(1992-2010)


元クロアチア代表DFダリオ・シミッチは、母国クロアチアのクロアチア・ザグレブ(現ディナモザグレブ/1992-1998)で頭角を表し、インテル(1999-2002)で活躍した後、ライバルのミラン(2002-2008)に移籍。そもそも“助っ人外国人”だったことと、元トルコ代表DFウミト・ダヴァラとのトレードだったことで“禁断の移籍”とは見なされなかった。


センターバックとサイドバックをこなす器用さの半面、「ピットブル(闘犬)」の異名通り、獰猛な守備とプロフェッショナリズムでチームを支えたシミッチ。


特にミラン在籍時は、2度のCL制覇(2003、2007)に貢献した。モナコ(2008-2010)にも在籍したが、彼のキャリアの中心はセリエA時代で、リーグ優勝、コッパイタリア、スーペルコパ、CL、UEFAスーパー杯、FIFAクラブW杯と数々のタイトルを手にした絶頂期だった。


インテルでもミランでも世界的スター選手に囲まれながら与えられたタスクを遂行し、4バックでも3バックでも柔軟に対応した。例え控えに甘んじていても腐らずに準備を怠らない真のプロフェッショナルだった。


クロアチア代表としては、3度のW杯(1998年フランス大会、2002年日韓大会、2006年ドイツ大会)に出場。代表キャップは100を数える英雄だ。

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